「退職は逃げではないのか?」と悩む人は少なくありません。
日本では「仕事を辞める=忍耐不足」と捉えられる傾向にあり、仕事を辞める決断が難しいと感じてしまう人は多いです。
しかし、過酷な環境で心身をすり減らし続けることが本当に正しい選択なのでしょうか。
本記事では、「退職は逃げ」と言われてしまう背景や、「逃げるが勝ち」と判断できるケース、さらに、円満退職の進め方や転職のコツなどについて、詳しく解説します。
-
ご自身にとって最適な働き方を見つけるためのヒントを得て、納得のいく決断ができることを願っています!
退職が「逃げるが勝ち」と言われる3つの理由

退職を「現状からの逃げ」と捉える人もいますが、状況によっては適切な判断となるケースも多数あります。
ここでは、退職が前向きな選択となる3つの理由を解説します。
- 職場の環境は自分だけでは変えにくいから
- 自分の心身を守れるのは自分だけだから
- 転職することで得られる利点があるから
自分の努力では職場環境の改善が見込めないときや、心身の健康が損なわれるリスクがあるとき、転職によってより良い働き方が実現できるときなどは、「逃げるが勝ち」と言えるケースが多いです。
ご自身の状況と照らし合わせながら、適切な選択をするための参考にしてみてください。
職場の環境は自分だけでは変えにくいから
職場の環境は、一社員の努力だけで変えられないケースも多いです。特に、企業文化や組織の体質が関わる問題は、個人の働きかけでは改善が難しいでしょう。
たとえば、パワハラや長時間労働が当たり前の職場では、一人が声を上げても状況は変わりにくく、給与や勤務形態の改善も個人の交渉には限界があります。
また、オフィス環境や設備に関するものの場合、会社の方針や予算、社員の意見にも左右されるため、要望がすべて通るとは限りません。
改善に至るには対応が長期に亘る可能性が高く根気を要します。
その間、ストレスを感じながら働き続けるリスクを考慮しても、自分の希望に合った職場へ転職したほうが、負担も少なく確実と言えます。
-
自分が頑張っても改善が見込めなそうな問題の場合は、無理をするよりも速やかに新しい環境へ移りましょう!
自分の心身を守れるのは自分だけだから
自分の健康は、最終的には自分自身で守るしかありません。
心身的な問題で働くのが難しくなった時、企業は復帰に向けて一定の支援をしてくれますが、私生活や離職後まで支援を行ってくれるわけではないからです。
万が一、仕事が原因で心身を病んで離職する事態になっても、会社がその後の人生を支えてくれるわけではないため、無理をするのは得策ではありません。
また、行政支援に頼る選択肢もありますが、必ずしも希望通りのサポートが受けられるとは限らず、社会復帰に苦労する可能性も否定できません。
-
長時間労働やハラスメントなど過酷な状態が続く場合、無理に耐えようとせず、自分を守る決断が必要です
転職することで得られる利点があるから
転職は自分の希望に合った環境に手っ取り早く移れるだけでなく、新たなスキルや経験を得てキャリアを広げるチャンスにもなります。
長年同じ職場に留まり続けると、仕事に対する考え方が固定化されがちです。その職場で決められたやり方でしか考えられなくなってしまったり、挑戦や環境の変化に消極的になってしまったりする恐れがあります。
一方、新しい職場に移ることで、異なる価値観や経験に触れ、視野を広げられます。例えば、営業職からマーケティング職へ転職すれば、これまでのスキルを活かしながら新たな視点を得られるでしょう。
さらに、転職によって、収入が上がったり残業時間が減ったりと、待遇や福利厚生に関する悩みが改善される可能性もあります。
-
仕事に求めるものは人それぞれです。今の職場で理想のキャリアや待遇が得られないなら、前向きに転職を検討するのも良い選択肢です。
一方で「逃げの転職は成功しない」と言われる4つの理由

退職して環境を変えることは、悩みを解決したり新たなチャンスを得たりする機会になる一方で、注意すべき点もあります。
後先を考えずに衝動的に辞めるいわゆる「逃げの転職」をしてしまうと、転職後に「前の職場のほうが良かった」と後悔するケースも少なくありません。
ここでは、逃げるように転職すると失敗しやすい理由を解説します。
- 辞めずに状況を打開すべきケースもあるから
- キャリアダウンする場合があるから
- 1社に長く勤め続けるメリットも多いから
- 転職先でスキルや経験が通用しない場合があるから
職場に退職の意向を伝える前に、自分にとって最適な選択は何かを見極めましょう。
-
もちろん、すでに心身に影響が出ている場合は、すぐに退職したほうが良いケースが大半です。決して我慢しすぎないようにしてください!
辞めずに状況を打開すべきケースもあるから
会社を辞めずにちょっとした工夫や行動で解決できる場合もあります。
例えば、人間関係に悩んでいるなら、考え方を変えて割り切ったり、部署異動することで改善する可能性があります。
また、スキル不足で仕事がうまくいかない場合も、上司や先輩に相談し助けを得たり、経験を積むことで、ちょっとずつ克服できることもあります。
問題解決に向けて行ったことは、状況の改善だけでなく、問題解決力が養われ、キャリアの成長にもつながります。
一方で何も試さずに退職した場合、次の職場でも同じ課題に直面し、辞め癖がつく恐れがあります。
まだ何も打開策を実行していない場合は、辞める前に「本当に自分では解決できなそうな問題なのか」をじっくり考えてからでも遅くはないかもしれません。
キャリアダウンする場合があるから
転職活動の結果によっては、前職より職位(役職)や収入が下がるケースもあるため、必ずしも転職がキャリアアップや収入アップにつながるとは限りません。
たとえば、未経験の職種に挑戦するキャリアチェンジの転職では、これまでの業務経験やスキルが評価されにくく、年収が下がることは珍しくありません。また、転職をすると、新しい環境に適応するために少なからず負担がかかるので、最初は思ったように成果を出せない場合も考えられるでしょう。
転職後に労働条件や待遇の悪化が懸念されるなら、今の職場でもう少しスキルを磨いて、昇進や給与アップを目指すほうが良い選択肢となる可能性もあります。
自分が仕事で重視したいことや現状の悩みの度合いを考えながら、現職を続けるメリットと転職のリスクを検討し、慎重に判断するようにしましょう。
1社に長く勤め続けるメリットも多いから
長く同じ会社に勤めることにはメリットもあります。
たとえば、一つの会社で長年経験を積めば、その業界や企業特有の業務に特化したスキルが身につき、専門性が高まります。その結果、特定分野のスキルアップを図れたり、勤続年数を評価されて昇進の機会を得たりして、給与や待遇が向上するケースがあるのです。
退職金や年金などの福利厚生の面においても、一社に腰を据えて勤務期間を途切れさせないことが有利になる場合も多いです。
短期で転職を繰り返すと、その度に新しい環境へ適応しなければならないため、精神的・体力的な負担が大きくなるというデメリットも無視できません。
今の会社で仕事を続けるメリットがあるなら、現職でのキャリア形成を優先するのも一つの選択肢です。
転職先でスキルや経験が通用しない場合があるから
自分のスキルや経験を活かせる職場を選ばないと、転職先でこれまで培ってきたものを活かしたいと思っても上手くいかない可能性が高いです。
特に、現職での職歴が短く、まだ十分な成果を出せていない場合は、同職種の職場に転職しても活躍できるとは限りません。
また、業界や職種が変われば、求められるスキルも異なります。前職での経験が評価されると思って転職しても、実際には通用せず、即戦力になれないといったケースも珍しくはないのです。
現職を退職したい理由が自身のスキルや経験不足に関係する場合、安易に転職しても状況は改善されず、同じ悩みを繰り返し抱くことになりかねません。
特に30代以上の転職は即戦力スキルを求められる企業が多いです。希望業界・職種に関する情報収集をしたり、自身の業務スキル・保有資格などを棚卸ししたりして、転職に必要なスキルを習得するようにしておきましょう。
「逃げの転職」で失敗するリスクが高い2つのタイプ

退職は決して悪い選択ではありませんが、場合によっては失敗するリスクがあることも否定できません。
特に、転職理由となる問題の本質を見極めずに転職を繰り返すと、状況が改善されないどころかキャリアの停滞を招いてしまう可能性もあります。
「逃げの転職」で失敗するリスクを抱えやすい人のタイプは以下です。
- 他責思考なタイプ
- 自責思考なタイプ
それぞれのタイプの特徴と転職で失敗しないためのポイントを詳しく解説します。
他責思考なタイプ
他責思考の人は、問題に直面した際に「上司が悪いから」「同僚が動かないから」「会社の方針が間違っているから」など、他人や環境へ意識が向く傾向にあります。
- 【他責思考とは】
- 自分が直面している事柄に問題が発生した際に、他者や環境といった外的要因に責任を押し付けてしまう考え方・心理的な傾向。
他者や環境へ期待が向きやすい分、職場や職場の人間関係に対するストレスも多かったり、転職先で同じ問題に直面し、繰り返してしまう場合があります。
また、転職先に望むことが多かったり、面接時の質問への回答もネガティブな内容になってしまいやすく、無意識のうちに転職のハードルを上げてしまっている場合もあります。
すべての問題に自責の念を持つ必要はないものの「自分にも改善できることがないか」という視点を持つことで、自己改善意識が高まり、問題への見方が変わったり解決力が向上します。
-
「適度な自責思考」を持ち、トラブルも自己成長につなげようとする意識を持つと、転職活動も上手くいきやすいです。
自責思考なタイプ
自責思考がいきすぎると、すべての問題を自分のせいだと考えてしまい、仕事のミスや人間関係のトラブルを必要以上に抱え込んで心身の負担が大きくなります。
- 【自責思考とは】
- 問題や失敗に対して、その原因や責任が自分にあると捉えてしまう考え方・心理的な傾向。
自責思考は自己成長の原動力になりますが、必要以上に自分を責めすぎてしまうと、かえって仕事に悪影響が出てしまい逆効果です。
また、自責しすぎて自己肯定感が下がってしまうと、転職活動の際、自分のキャパシティーを低く見積もりすぎたり面接で十分にアピールできず苦戦したり、新しい職場でも力を発揮できずに挫折を感じて、転職を繰り返してしまったりする可能性もあります。
自責思考になりやすい場合、何か問題が起きた時に「自分の責任」と「他者や環境の問題」を切り分けて考えられる客観的な視点を持つことが重要です。
-
そして、転職先を選ぶ際は「自信を持って自分の能力を発揮できる環境」の職場を探すようにするのも大事です!
後悔しないために!退職を決める際の判断ポイント

退職を決断するには、慎重な判断が必要です。衝動的に辞めてしまうと、転職後に「前の職場のほうが良かった」と後悔する可能性もあります。
「今の職場では本当に状況を改善できないのか」「転職することでメリットはあるのか」を見極めるようにしましょう。
ここでは、退職を判断する際の基準となる3つの判断ポイントを解説します。
- 転職以外に解決の手立てはないのか
- 辞めるメリットの方が大きいのか
- 今の会社で実現したい働き方はできるか
今の状況を整理し、自分にとって最善の選択をするようにしてください。
転職以外に解決の手立てはないのか
退職を決断する前に、「現在抱えている不満が本当に転職しないと解決できないのか」を見極めることが大切です。
「人間関係」「給与や待遇」「労働環境」などの不満がある場合は、今だけの一時的な問題なのか、今後も改善が難しい問題なのかを考えてみましょう。
たとえば、部署内での人間関係に悩んでいる際は、異動の相談をすれば改善される可能性があります。また、給与額が不満な場合は、上司に相談して昇給のチャンスを探ることも方法の一つです。
労働時間が長すぎるケースは、上司にタスクの調整をお願いしたり、人事部門と相談したりすると、改善される可能性もあるかもしれません。
-
退職・転職には少なからず労力がかかるので、しなくても良いのであればそれに越したことはありません。
辞めるメリットの方が大きいのか
退職を決める前に、今の職場で得られるメリットがあるかを確認することも重要です。
今の職場のしんどさの具体的な原因と、転職によって改善できること、それぞれのメリット・デメリットを書き出して比較してみましょう。
そのうえで、このまま転職しても満足いくものとならなそうだったり、今の職場でスキルを磨ける余地があるなら、すぐに辞めるのではなく社内でキャリアアップをしてから転職するという道もあります。
転職に向けて研修制度や資格取得支援を活用したり、社内異動・配置転換を願い出たりといった方法でスキルアップすることで、転職がしやすくなったり、転職での年収アップが期待できるなどメリットが大きくなっていきます。
-
退職や転職は人生を変える大きな行動です。メリットデメリットを天秤にかけて慎重に検討しましょう。
今の会社で実現したい働き方はできるか
希望の働き方が明確なら、転職を決意する前に「現在の会社で希望の働き方を実現できる可能性があるのか」を探ってみましょう。
たとえば、家庭のために今よりも時間を使いたい場合は、「自社でフレックスタイム制度や在宅勤務制度などを利用できないか」「残業削減や有給休暇の取得促進といった働き方改革が進められていないか」を調べてみるのがおすすめです。
福利厚生や勤務制度はたとえ自分の部署で使われていなくても、他部署で利用している人がいることもあります。ダメ元でも良いので、まずは上司や人事部に相談してみましょう。
一方で、経営陣が働き方改革に消極的な場合や、取り組みが形骸化している企業の場合は、こういった労働環境の改善は難しい可能性が高いです。
-
その際は、自分が求める働き方を実現できる企業への転職を検討するのが、合理的な選択肢となるでしょう。
「退職したい」と思っても行動に移せない原因

退職を考えていても、なかなか踏み出せない人は少なくありません。下記のような不安や環境への依存といった背景が影響していることが多いです。
- 不安要素があり踏み出せない
- 勤続年数や村社会の社風に縛られている
- 会社から引き止められる・在職を強要される
ここでは、退職に踏み出せない具体的な原因について詳しく解説します。
それぞれの要因を把握し、自分に当てはまるものがないか確認してみてください。
不安要素があり踏み出せない
退職は少なからず心身に負担がかかるため、退職したいと思っていても、さまざまな不安が頭をよぎって行動をためらわせてしまう要因になります。
特に、退職交渉や仕事を辞めた後のキャリアに対する不安、転職活動の進捗などは、多くの人が抱える悩みです。
退職交渉に不安を感じる場合、まずは上司や人事部との話し合いの進め方をシミュレートして整理することが大切です。円満退職をするために、なるべく職場に迷惑がかからないタイミングで退職の意向を伝え、業務の引き継ぎの計画も立てておくとスムーズに進みやすくなります。
退職交渉の詳細はこちら
また、退職後の進路や転職活動に不安を感じるなら、会社を辞める前に転職活動を進めておくのがおすすめです。転職エージェントを活用したり、会社の制度を利用しながら計画的に資格取得の準備を行ったりできれば、在職しながらの転職活動の負担を最小限にできます。
退職のタイミングに迷っている方はこちら
-
不安要素を一つずつ解消して、心を落ち着かせた状態で納得のいく決断をしましょう!
勤続年数や村社会の社風に縛られている
日本の職場には「同じ職場に長く勤めることが美徳」という価値観や終身雇用の考え方もまだまだ残っており、社内の人間関係や連帯感を重視する傾向も強いです。
特に老舗の企業や中小企業に多く、しきたりやルール、序列を重んじる「村社会」のような風潮を持つ場合もあります。
そういった環境下に置かれると、転職したい気持ちはあっても「辞めるのは無責任ではないか」「裏切りと思われるのでは」「忍耐力がないと怒られそう」といった不安から、行動を起こせない場合があります。
海外、特に欧米ではキャリアアップのための転職は一般的で、むしろ働く環境を変えることは成長の一環として当然と考えられています。
日本においても終身雇用の考え方自体が古くなってきているので、今の職場の文化や価値観に縛られすぎず、自分のキャリアを優先して判断するようにしましょう。
会社から引き止められる・在職を強要される
退職を申し出た際に、会社から強引に引き止められるケースは少なくありません。
特に、人手不足の職場や退職者の業務を代替できる人材がいない職場の場合、あらゆる手を使って在職を強要されることがあります。
悪質な場合、「後任が見つかるまで辞めるのは許さない」「今辞めるなら退職金を支払わない」「損害賠償請求をする」とおどしてくるような職場もあるようです。
会社が引き止める理由は以下が考えられます。
- あなたの能力を高く評価している
- 退職社員が出ることを想定できていなかった
- 上司の保身のため
退職の自由は法律で保障されており、引き止め行為は違法となる可能性が極めて高いです。
原則として、正社員であれば「退職日の2週間前まで」に退職の意思を伝えていれば問題ありません。期間に定めのある雇用契約の場合は、退職の意向を伝えて雇用契約期間が終了するまで勤務していれば、退職できます。
上記の条件を満たしていれば会社側が在職を強要することはできないので、引き止めに応じる必要はありません。
-
退職の意思を明確に伝え、場合によっては法律や専門家のアドバイスを活用しながら、自身のキャリアや健康、私生活の事情を優先するようにしましょう。
【重要】スムーズに退職する流れを解説

退職を決意したら、計画的に退職手続きを進めていきましょう。
ここでは、円満退職をする際の流れをいくつかのポイントに沿ってお伝えします。
- ポジティブな退職理由を考える
- 退職時期を慎重に選ぶ
- 上司に退職する旨を伝える
感情的に辞めるのではなく円満退職を目指すことで、スムーズに会社を辞められ、次のキャリアにも響きにくくなります。
ポジティブな退職理由を考える
退職を円滑に進めるには、できるだけ前向きな退職理由を準備することが重要です。
「仕事内容に不満があるから」「残業が多いから」「給料が低いから」といったネガティブな本音をそのまま会社に伝えてしまうと、トラブルの原因になりかねません。
また、「不満を解消するようにするから辞めないでほしい」と引き止められるきっかけになってしまうこともあります。どんな条件を出されても辞めたい場合は、会社側が納得しやすい理由を具体的に考えて伝えると、退職を受理されやすくなります。
たとえば、「この会社では実現できない新しい仕事に挑戦したい」「家庭の事情のために、勤務時間を調整しやすい仕事に移りたい」「独立して個人事業主になりたい」といった、前向きかつ今の会社では実現できない理由を伝えると、受け入れられやすいです。
どうしても退職理由を言いたくない場合は「一身上の都合」を貫き通しても法律面では問題はありません。ただし、矛盾のないように退職理由の設定を考え、その後の言動にも注意していないと、退職手続きや職場での会話などでウソだとバレてしまう可能性があります。
退職時期を慎重に選ぶ
退職のタイミングは慎重に決めるようにしましょう。
適切な時期を見極めて退職の意向を伝えられれば、職場への影響を最小限に抑えられるので、比較的簡単に円満退職となる可能性が高いです。
なるべく業務の繁忙期を避けると、会社が後任の採用活動をしやすかったり、余裕をもって業務の引き継ぎの期間を設けられたりするので、退職に難色を示されるリスクは低くなります。
また、賞与の支給日や退職金の基準日、有給日の残数などを考慮して退職日を決めると、経済的な損失も最小限に抑えられます。たとえば、賞与の直前に退職してしまうと支給対象外になる可能性が高いので、少し退職日を遅らせるだけで収入に大きな差が出ることもあるのです。
さらに、退職日の前に転職活動を完了できるスケジュールにしておけば、次の職場が決まった状態で安心して退職できるでしょう。
状況が切迫していないのであれば、適切なタイミングを狙って退職できるようにするのがおすすめです。
-
もちろん、しんどい場合は、無理に退職時期を調整しようとしなくて大丈夫です。自分の心身の状態を優先させましょう!
退職時期に関する詳細はこちら
上司に退職する旨を伝える
上司に何を伝えるのか、内容をしっかり整理しておきましょう。
最低限として「退職をしたい旨とその理由」「退職希望日」をしっかり決めた状態で上司にコンタクトをとるのが得策です。
ポイント
①口頭で直接伝える
対面で伝えることがベストです。
上司の都合の良い日時にアポイントを取り、落ち着いた状況で話せる会議室で伝えるようにしましょう。
②退職の意を示しつつも感謝を忘れず
退職理由はポジティブなものかつ今の会社では実現が難しい理由にするのがおすすめです。
「辞めた後のことは決まっているのか」と聞かれる場合も多いので、こちらもしっかり伝えられるように準備しておきましょう。
感謝とお詫びの気持ちも添えながら、退職の意思が強いことをしっかり伝えることが重要です。
③繁忙期を避ける
上司の業務に支障が出にくい日時を選ぶと、円満な退職につながりやすくなります。
退職の意思を上司に伝えるまでは、同僚に退職や転職を考えている旨は伝えないほうが無難です。自分で伝えるより先に上司の耳に届いてしまうとトラブルになり、円満退職できなくなるケースもあります。
ただし、ハラスメントを受けているといった上司に直接伝えにくい事情があるなら、退職代行の利用も選択肢の一つになります。
在職中に転職エージェントを活用して転職先を決めるのがおすすめ

退職を考えるようになったら、可能な限り在職中に転職先を決めるのがおすすめです。
退職後に転職活動を行うと、すぐに転職できなかった場合に収入が途絶えてしまいます。仕事が決まらずに焦ると、妥協で転職先を決めてしまう可能性も高まります。
とは言え、仕事をしながら転職活動を行うのもなかなか大変なので、転職エージェントを活用するのも一つの手です。
転職エージェントは、会員登録をすれば専任の担当者であるエージェントがつき、自分のキャリアや希望に合った求人の紹介、履歴書や職務経歴書などの書類や面接の対策、給与交渉などを無料でサポートしてくれます。また、転職エージェントは転職サイトと異なり、一般に公開されていない非公開求人も多く、さらに企業の内部情報を知ることができる点もメリットです。
転職サイトでの転職は、自分のペースで転職活動を進めたい人には向いていますが、応募する求人の選定や情報収集、応募手続き、企業とのやりとりなどをすべて自分一人で進める必要があります。
仕事で忙しい人は、担当エージェントが定期的に条件に合う求人を探してくれたり、企業とのスケジュールを調整してくれたりする転職エージェントを使うほうが、効率的に転職活動ができるケースが多いです。
退職や転職に関するよくある質問

退職や転職の「この決断は正しいのか」「転職後に後悔しないだろうか」といった悩みは、多くの人に共通するものです。
ここでは、退職や転職に関するよくある質問とその答えを取り上げます。
スムーズに新たなキャリアを築くためのポイントを紹介するので、参考にしてみてください。
転職を後悔する人は何割ほどいますか?
「マイナビ転職」や「転職会議」などの調査によると、転職経験者の約4人に1人、つまり25%ほどの人が「転職を後悔した」と回答しています。
転職を後悔している人の割合がもっとも多いのは「給料がきっかけで転職活動を始めた」人で、「給料などの待遇目当てでの転職」は、後悔につながりやすいという傾向が出ているようです。
これは、待遇が良い職場は必然的に「仕事に対して求められるライン」も高くなるので、仕事内容や仕事環境を変化させざるを得ないケースが多いことが、理由として挙げられます。
待遇を重視しすぎるあまり、自分には合わない仕事を選んで前職とのギャップを感じてしまっている人が少なくないのです。
「仕事の向き・不向き」が転職の後悔度合いに影響しているとも言われているため、転職で仕事内容や求められるスキルなどが変わる場合は、情報収集を行って自分に合った職場かどうかをしっかり見極めるのが大切と言えるでしょう。
参考:
MEETS CAREER「【調査】転職を後悔している人は4人に1人!「後悔しない」ために注意すべきことは?」(参照 2025-03-21)
JOBloom「転職は逃げるが勝ち?逃げてはならないといわれる理由なども解説」(参照 2025-03-21)
転職に成功する人の特徴はなんですか?
転職に成功する人は、自分の市場価値を客観的に判断し、転職先に対する希望条件を明確にしている傾向があります。
したがって、自己分析を行って自身の強みや弱みを理解する点が、適切な転職先を選ぶカギです。
過去の仕事の実績を具体的に伝えられる人は、採用担当者の評価が高くなります。
具体性を盛り込んで履歴書や職務経歴書を作成し、面接で転職先に合ったアピールができるように、現職までの経験をどのように活かせるかを整理し、自分のスキルや実績を把握しておくと良いでしょう。また、企業ごとに求める人物像は異なるため、事前の企業研究も欠かせません。
そして、転職の希望条件を明確にしていると、自分と合う企業とマッチしやすくなります。給与や勤務地だけでなく、企業文化や成長環境、仕事内容なども考慮することで、転職後の満足度を高められます。
-
長期的なビジョンを持ち、自分に合った環境で成長できるかどうかを重視すると、転職成功の大きな要因となりやすいです。
「逃げるが勝ち」と言える状況で退職しよう

退職を決断する際、「逃げるのは甘えではないか」と迷うこともあるかもしれません。
しかし、自分の心身やキャリアに悪影響を及ぼす環境に留まり続けるのは、むしろリスクとなります。
下記のような理由で、退職が「逃げるが勝ち」となるケースも多々あります。
- 職場の環境は自分だけでは変えにくいから
- 自分の心身を守れるのは自分だけだから
- 転職することで得られる利点があるから
過度なストレスで健康を害している場合や、パワハラ・長時間労働など改善の見込みがない職場環境では、無理に耐え続けるよりも早めに退職を決断するほうが望ましいです。また、自分の成長が見込めない環境であれば、新たな道を模索してキャリアアップするというのも得策と言えます。
大切なのは、「逃げの退職」をネガティブに捉えず、次のステップへの戦略的な選択と考えることです。
-
自分にとって最適な環境を見極め、より良い未来を築くために、決断を恐れずに進んでいきましょう。