近年、賃金引上げが行われている一方、物価高や給与の控除額も増え続けていて、実質的には手取りは下がっていく状況が続いています。
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中小企業だと生活できないレベルで給料が低い?
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中小企業だけど給与が上がらない…転職したほうがいい?
特に中小企業は賃上げが進んでいないのが現状となり、このような悩みを持つ人も少なくありません。
本記事では中小企業の給与が低すぎたり上がらない原因と、このまま働き続けるべきか辞めるべきかの判断基準、平均給与の高い業界と低い業界をはじめとした転職に役立つ情報もご紹介していきます。
中小企業で働き続けることに不安を感じていたり、転職を検討している人はぜひ参考にしてみてください。
中小企業とは
中小企業の定義は業種によって異なりますが、「資本金額・出資総額」と「常時使用する従業員数」などを基準に定義されるのが一般的です。
例として、業種別の中小企業の定義をいくつか見てみましょう。
業種 | 資本金額または出資総額 | 常時使用する従業員数 |
---|---|---|
製造業、建設業、運送業、そのほかの業種(以下記載の卸売業、小売業、サービス業を除く) | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
参考:中小企業庁「中小企業者の定義」(参照 2024-10-01)
「常時使用する従業員数」とは、事務所または事業所において常態的に就労している従業員を指します。この場合の「従業員」には、正社員のほかに、臨時的に労働するパートやアルバイトなども含まれます。
ただし、以下に該当する人は「常時使用する従業員数」には含まれません。
- 事業主やその家族従業員
- 役員
- 日雇い者
- 2ヶ月以内の有限雇用者
- 4ヶ月以内の季節的業務の有期雇用者
- 試用期間中の者
- 派遣先における派遣社員
なお、中小企業の範囲は法律や制度によって異なる場合があります。自社が中小企業のどの分類に当てはまるかは、「e-Stat(政府統計の総合窓口)」で確認してみてください。
大手・中小企業の数を比較
中小企業は大手企業と比べてどれほどの企業数があるのか見ていきましょう。
中小企業庁によれば、2021年6月時点で中小企業の数は3,364,891社、大企業の数は10,364社です。中小企業と大企業の数の比率は99.7%:0.3%なので、圧倒的に中小企業のほうが多いことがわかります。
また、中小企業と大企業の都道府県別の企業数TOP3は、以下の通りです。
中小企業 | 大企業 | |
---|---|---|
1位 | 東京都(419,013) | 東京都(4,582) |
2位 | 大阪府(261.653) | 大阪府(966) |
3位 | 神奈川県(183,675) | 神奈川県(522) |
いずれも企業数TOP3の都道府県は同じで、大都市に企業が集中している傾向があります。
ただし、東京都だけで見ても中小企業の数は大企業の約100倍程度あり、都道府県別に見ても大企業より圧倒的に中小企業のほうが多いのが見てとれます。
参考:中小企業庁「都道府県・大都市別企業数、常用雇用者数、従業者総数」(参照 2024-10-01)
大手・中小企業の従業員数を比較
続いて、中小企業と大企業の従業員数を比較していきましょう。
中小企業庁によれば、2021年6月時点で中小企業の従業員数は33,098,442人、大企業の従業員数は14,384,830人です。
なお、大企業の定義は明確に定められていませんが、先ほどご紹介した中小企業の定義の各数値を超えている企業は大企業と判断されるケースが一般的です。
また、厚生労働省の「賃金構成資本統計調査」では、常時使用する従業員数が1,000人以上の企業を大企業と区分していることから、従業員数が1,000人を超える企業を大企業と定義するケースもあります。ちなみに、大企業に属している子会社は、中小企業事業者に分類されます。
いずれにしても、一般的に1企業あたりの従業員数は中小企業よりも大企業のほうが圧倒的に多いです。
中小企業に勤務している人数は労働者全体の約70%で、大企業に勤務している人数は約30%なので、日本では大企業に勤務している人より中小企業で勤務している人が倍以上いるというのが実情です。
参考:中小企業庁「都道府県・大都市別企業数、常用雇用者数、従業者総数」(参照 2024-10-01)
中小企業が生活できないレベルで給料が低い理由
日本では中小企業に勤めている人の方が多いにもかかわらず、なぜ中小企業は生活できないレベルで給料が低い傾向にあるのでしょうか。
その理由として、以下の4つが挙げられます。
- 大手より資本力や資本金が少ないから
- 増税・社会保険料の値上がりで手取りが安いから
- 会社の業績が赤字続きだから
- 経営者が搾取しているから
ここでは、中小企業の給料が低い理由について詳しく解説します。自社に当てはまるものがないか、チェックしてみましょう。
給料が安すぎる理由①大手より資本力や資本金が少ないから
中小企業は大手企業に比べると資本力・資金力が欠けるため、従業員に還元する給料やボーナスに回す金額が少なくなる傾向にあります。
- 【資本力とは】
- 企業が事業活動を展開するうえで必要な経営資源・基盤・財産の大きさを表す指標。企業活動の成立・保持に要する基金を持っている力を指す。
どの企業も資本金が必ずしも従業員の給与やボーナス、福利厚生に直結するとは言い切れませんが、総務省統計局の「令和3年経済センサス-活動調査」によると、資本金が多いほど従業員の平均給与も高く、一人当たりの福利厚生にかかる費用も高い傾向にあることがわかります。
資本金額 | 平均従業員数(従業者数÷企業数) | 平均給与(給与総額/給料賃金÷従業者数) | 一人当たりの福利厚生費(福利厚生費÷従業者数) |
---|---|---|---|
300万円未満 | 6人 | 211万円 | 16万円 |
300~500万円未満 | 7人 | 265万円 | 22万円 |
500~1,000万円未満 | 9人 | 265万円 | 25万円 |
1,000~3,000万円未満 | 19人 | 317万円 | 35万円 |
3,000~5,000万円未満 | 50人 | 343万円 | 43万円 |
5,000万~1億円未満 | 103人 | 352万円 | 46万円 |
1億円以上 | 542人 | 475万円 | 83万円 |
参考:e-Stat(政府統計の総合窓口)「令和3年経済センサス‐活動調査 企業等に関する集計 産業横断的集計 経理事項等 」(参照 2024-10-01)
資本金300万円以下の企業と1億円以上の企業を比較すると、平均給与は264万円、一人当たりの福利厚生費は67万円も差が出ています。
また、退職金制度が整っていない中小企業や大企業に比べて退職金の額が低い中小企業も少なくないので、結果として大手企業よりも中小企業のほうが退職金の額も低くなる傾向にあると言えます。
給料が安すぎる理由②増税・社会保険料の値上がりで手取りが安いから
中小企業の給料が安すぎる理由として、増税や社会保険料の値上がりも大きく影響しています。
いわゆる租税負担と社会保障負担、財政赤字を合計した「潜在的国民負担率」はどんどん上昇している傾向にあります。10年間隔ごとの潜在的国民負担率は以下の通りです。
年度 | 潜在的国民負担率(租税負担率+社会保障負担率+財政赤字負担率) |
---|---|
1974 | 31.6% |
1984 | 39.7% |
1994 | 43.1% |
2004 | 42.0% |
2014 | 49.9% |
2024 | 50.9% |
この表からわかるように、潜在的国民負担率は50年間で約20%も上昇しています。
実際に年収ごとの手取り額の目安についても見てみましょう。
なお、下記は東京都で働く30歳の労働者を想定した場合の、2024年の税金・社会保険料の制度に基づいた手取り額を算出しています。
月収(額面) | 月収(手取り) | 年収(総額) | 年収(手取り) |
---|---|---|---|
20万円 | 16万91円 | 240万円 | 192万1,100円 |
30万円 | 23万7,058円 | 360万円 | 284万4,700円 |
40万円 | 31万293円 | 480万円 | 372万3,520円 |
50万円 | 38万3,625円 | 600万円 | 460万3,500円 |
60万円 | 45万1,356円 | 720万円 | 541万6,280円 |
70万円 | 51万5,891円 | 840万円 | 619万700円 |
80万円 | 58万2,916円 | 960万円 | 699万5,000円 |
90万円 | 64万9,066円 | 1,080万円 | 778万8,800円 |
100万円 | 71万2,308円 | 1,200万円 | 854万7,700円 |
参考:タレントスクエア「【2024年最新】手取り計算ツール | 額面給与から手取りを計算」(参照 2024-10-01)
表の中で最も収入が低い月収20万円クラスの人の場合、税金が引かれることで年収の手取りは200万円台を下回ります。
日本では累進課税が導入されているため、収入が高いほど税金の額も大きくなるとは言え、そもそもの収入が少ない傾向にある中小企業は、手元に残る金額が安い傾向にあるため、死活問題になりがちです。
このように、本来企業から支給された給与の額面から税金が大きく引かれることで、収入がさらに低くなってしまっている点が、中小企業の給料が安すぎると感じる原因の一つになっています。
参考:財務省「国民負担率(対国民所得比)の推移」(参照 2024-10-02)
給料が安すぎる理由③会社の業績が赤字続きだから
会社の業績が悪いと、当然ながら基本的に給料は上げられない状態です。そのため、業績が赤字続きの会社で働いている場合、給料が安い傾向にあります。
国税庁が2023年に「国税庁統計法人税表」によれば、中小企業は全体の60~70%が赤字の経営状態です。中小企業が赤字となりがちな理由はさまざまですが、主に以下のような背景があります。
- 資本金・資金力がなく海外市場での競争力が低いから
- デジタル化の遅れなどで労働生産性が大企業よりも低いから
- 下請け企業の場合、価格決定権がないから
昨今はますますグローバル化が進んでいるため、国外を相手にして市場を広げなければ、企業の売り上げは頭打ちになりやすいです。中小企業は国内市場のみを相手にしている会社が多いため、どうしても売り上げを出せる市場が狭く、厳しい戦いを強いられてしまいます。
また、中小企業は大企業と比べて社内の環境整備にも十分な資金をかけられないこともあり、デジタル化や福利厚生の整備の遅れなどから、労働生産性も低いです。長時間労働を強いられる割に売り上げがあまり出せていないという場合、企業の労働生産性が著しく悪い可能性もあります。
そして、中小規模は、元請けである大企業から作業依頼を受ける下請けの立場となっている会社も珍しくありません。下請けの場合、独断で商品単価や作業報酬を勝手に上げるということができず、主体的に収入を伸ばす行動が取りにくいというデメリットが生じます。
残念ながら、こういった理由による業績悪化は、従業員の一人が奮闘したところでどうにかできるものでもありません。
そのため、業績を回復するだけの努力や施策を自社の経営陣が練っているのか、現実的に問題点を打破できそうかといった点を把握する必要があります。
給料が安すぎる理由④経営者が搾取しているから
中小企業の給料が安すぎる理由は、経済的なものだけではありません。一部の企業ではありますが、経営者や役員層がそもそも社員の給料を上げる気がないケースも残念ながらあるのです。
いわゆるブラック企業によくあるケースで、入社してからは何年も給料が上がらず、ずっと「据え置き」の状態で働き続けることになってしまいます。
求人や面談時には「出世すれば年収〇〇〇万円も目指せる」というように耳あたりの良い言葉で勧誘し、実際は昇給も昇進もなく働かされるケースも珍しくありません。
そのため、明確な昇給・昇格の基準が提示されず、自社の業績が上がり続けているのに昇給も昇進もなく給料がまったく上がらない場合は、このようなケースが当てはまる可能性が高いです。
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もし経営者の搾取によって給料が上がらないのであれば、今後も収入アップのチャンスは見込めないので、すぐに転職を検討すべきです。
中小企業ならではの生活を不安定にする要素
中小企業の給料が安すぎる理由には、さまざまな背景があることがわかりました。
給料が安いと当然生活は苦しくなりますが、中小企業に勤務していると給料面以外の部分でも生活への不安を感じる要素はあるのではないでしょうか。
ここでは、中小企業ならではの生活を不安定にする要素について解説します。
中小企業で働きながら生活への不安を感じている人は、職場が下記に当てはまっているものがないかチェックしてみてください。
- 福利厚生や教育にかけるお金が乏しい
- 大手企業に比べて倒産のリスクがある
- 業務範囲が幅広く責任が重い
- 慢性的に人手不足
福利厚生や教育にかけるお金が乏しい
中小企業は大手企業に比べて資金力が劣るため、福利厚生が充実していないケースが多いです。
大手企業は子育てや介護に関する福利厚生、住宅手当や余暇やレクリエーションに関する福利厚生、自己啓発のための福利厚生など、さまざまな福利厚生が用意されています。生活面のサポートが手厚いので、日々の生活への不安が生まれにくく、仕事に集中して取り組めるのがメリットです。
一方、中小企業は休日制度や通勤手当など、法律で義務付けられた最低限の「法定福利厚生」は用意されているものの、大手企業のように企業独自で用意する「法定外福利厚生」は少ない傾向にあります。
また、中小企業は大手企業と比べて、社員の研修や教育にかけるお金も捻出できないケースも目立ちます。教育・研修体制が整っておらず、十分な教育を受けられないまま働くことになる可能性が高いです。
必要な知識やスキルを習得できないまま働き続けると、昇給・昇進がどんどん難しくなり、いつまでも収入が上がらない要因になりかねません。
大手企業に比べて倒産のリスクがある
中小企業は、大手企業に比べて財力が乏しいため、倒産のリスクが高い傾向にあります。
実際、2015年に廃業した企業は大手企業6社に対して中小企業は8806社あり、大手企業よりも中小企業のほうが圧倒的に倒産している数が多いのです。
先述したように、中小企業の6~7割は赤字で経営を続けており、いつ倒産してもおかしくない状況にある企業も少なくありません。
もし倒産してしまえば定期的に入っていた収入が一気になくなることになるので、生活は一気に苦しくなります。
倒産のリスクがある会社で働き続けるのは、精神的にもあまり良い影響をもたらしません。そのため、現時点で給料が安くて不安を抱えている人は、自社の事業には将来性や安定性があるのかを確認することをおすすめします。
「自社が扱う製品・サービスの需要は今後どうなるのか」「企業としてどのようなビジョンを描いて経営をしているのか」などの自社の現状を把握したうえで、働き続けるべきか辞めるべきかを検討するようにしましょう。
参考:中小企業庁「平成28年度(2016年度)の小規模企業の動向」(参照 2024-10-02)
業務範囲が幅広く責任が重い
大手企業の場合は社員が多く業務範囲が縦割りになっているため、自分の仕事に集中して専門的なスキルを磨きやすいというメリットがあります。
一方、中小企業は大手企業のように業務範囲が細分化されているとは限りません。営業から請求書をはじめとする書類作成、電話・メール対応に至るまで、マルチに業務をこなさなければならないケースも多く、一人あたりの業務範囲が幅広い傾向にあります。
複数の業務を身につけられるのがメリットですが、業務量や業務時間が増えるというデメリットもかかえてしまいがちです。自分の本来の仕事に集中できないと、専門的なスキルや高度なスキルを身につけることは難しくなります。
さらに責任の範囲も広くなるため、プレッシャーが大きくなるという場合もあります。業務量や責任が増えるのに給料は上がらないと、仕事に対するモチベーションも低下しやすいです。
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残業代が出ない中小企業だと、どんなに仕事を頑張っても給料には反映されにくいので、心身が疲弊する一方というケースに陥りがちです。
人手不足になりがち
中小企業の多くは、人材不足という課題を抱えています。
中小企業庁が出している「中小企業白書」によれば、従業員規模別に見た人材の未充足率は以下の通りです。
従業員規模 | 製造業 | 非製造業 |
---|---|---|
5~29人 | 3.2% | 3.5% |
30~99人 | 1.8% | 3.3% |
100~299人 | 1.8% | 2.8% |
300~900人 | 0.8% | 2.1% |
1000人以上 | 0.4% | 1.6% |
このように、従業員数の少ない会社ほど、欠員の数が多く、業務をまわすうえで必要な人数が不足していることがわかります。
人材不足の課題を抱えていると、社員の研修や教育に十分な時間を割くことができなくなります。たとえマニュアルが用意されていたとしても、指導する側の社員が忙しくて指導ができなければ、後輩社員は自らマニュアルで学ばなくてはなりません。
入社したばかりの社員が放置されるような環境では、新入社員は不安を抱えながら働くことになり、最悪の場合は離職を招きます。
人手不足を解消できないと、その企業での労働効率性が上がらず、給与も上がりづらいという、負のサイクルが発生しやすくなるのです。
参考:中小企業庁「中小企業白書|第2部 申告かする人手不足と中小企業の生産性革命」(参照 2024-10-02)
中小企業に勤務し続けるべきか辞めるべきかの判断基準
中小企業は給料が低いだけでなく、倒産のリスクや人手不足といった社員の生活が不安定になりやすい特徴を抱えています。
生活できないレベルで給料が低い場合、「中小企業で働き続けるべきか辞めるべきか」をどのように判断すれば良いのでしょうか。
ここでは、中小企業に勤務し続けるべきか辞めるべきかの判断基準について解説します。
- 筋の通った評価基準になっているか
- 昇給なしやサービス残業など搾取が横行していないか
- 低収入をカバーできるだけの魅力が会社にあるか
すでに生活に困っている人はもちろん、自分の今後のキャリアに不安や迷いが生じている人も、ご自分の職場と照らし合わせてみてください。
筋の通った評価基準になっているか
今の職場で仕事を続けるかどうかの判断基準として、まずは社内の評価基準を確認することが大切です。
社内の評価基準が明確化されていないと、上司の好き嫌いといった感情優先や、なんとなくといった理由で人事評価が決まりやすくなります。
なお、評価基準が定まっていないと、以下のようなケースに陥る可能性があります。
- 社内ルールに沿って仕事をしているのに評価してもらえない
- 社内ルールにそぐわない形で成果を出した人が上司に気に入られて評価される
- 仕事の出来や勤怠以外の理由で同僚や部下に昇給・昇進を追い抜かれる
- 成果を出しても上司に嫌われたために昇給・昇格をさせてもらえない
- 役員や部長に気に入られず、転勤の辞令が出される
仕事への姿勢や成果が重視されず、上司や役員の感情で物事が判断されている場合、その職場に残ることはあまりおすすめできません。
自社の評価基準を確認するとともに、自分がこれまで受けてきた評価を今一度振り返ってみましょう。
また、どうすれば昇給・昇格できるかといった基準が設けられていないと、この先自分の努力で収入が上がるかどうかがまったくわからず、先行きが見通せません。
明確な評価基準が設けられておらず、不当な評価を受ける可能性があるのであれば、すぐに辞めるべきです。
昇給なしやサービス残業など搾取が横行していないか
「昇給がない」「サービス残業が当たり前」といったいわゆる「搾取」をされていないか確認することも、仕事を続けるべきかを判断するために重要です。
労働者の「仕事に対するやりがい」気持ちを利用して、企業が長時間労働・低賃金で業務を行わせて利益を搾取する行為は「やりがい搾取」と言われています。
「この仕事は社会に貢献できる」「給料以上のやりがいを得られる」といったメリット部分を必要以上に強調しながらも、下記のような状況に当てはまっている企業は、やりがい搾取をしている可能性があります。
- サービス出勤、サービス残業が常態化している
- 残業時間・休日出勤を少なくする取り組みを行っていない
- 有給申請が通らない
- 同業他社と比較して給与水準が低い
- 定期的な昇給がない
このような会社の本音としては、できるだけ人件費を削って業績を上げたいと思っています。そのため、どんなに残業して成果を出しても、昇給やボーナス・残業代の支給という形での見返りはあまり期待できないでしょう。
利益を生んでいる社員に対して、還元するどころかタダ働きを強いてくるような会社は、すぐに辞めるべきです。
とは言え、会社の中にいると、自社の評価基準がおかしいことやサービス残業が当たり前になっている異常性にはなかなか気付きにくいものです。少しでも違和感を抱いたら、家族や友達に現状を相談してみるといった対策を取ることをおすすめします。
低収入をカバーできるだけの魅力が会社にあるか
たとえ低収入であっても、それをカバーできるだけの魅力が会社にあるかどうかも判断材料の一つです。
ここまで中小企業で働くデメリットについてたくさんご紹介してきましたが、中小企業ならではの魅力もたくさんあります。
従業員が少ない中小企業の魅力としては、以下のようなものが挙げられます。
- 風通しが良く、会社全体で協力し合いながら仕事に取り組める
- 社長や役員との距離が近く、意見が通りやすい
- ポストが空いていればスピード出世できる可能性がある
- 早い段階から裁量権がある仕事を任せてもらえる
中小企業は大手企業に比べて規模が小さいため、社員同士の距離が近く、社内で経営陣と接する機会も多いのが特徴です。人間関係が良好であれば、風通しが良く、働きやすい職場環境が整備されている中小企業も多くあります。
また、経営陣との距離が近いことから自分の意見を伝えやすく、提案しながら仕事を進めたいという人には向いているのではないでしょうか。
大手企業のように縦割り業務ではないという点は、幅広い業務に取り組めたり、部署間の連携を取りやすかったりするという点も、人によってはメリットになります。
どんなに給料が高い会社に勤めていても、人間関係や社内環境に悩まされて辞めるという人は少なくありません。低収入をカバーできるほどに働きやすさを実感できるのであれば、無理に辞める必要はないでしょう。
平均給与が高い業界TOP5
平均給与が高い業界TOP5をご紹介します。
平均給与が高い業界に転職すれば、中小企業でも給与が高い企業の割合が大きくなります。
順位 | 業種名 | 年収 |
---|---|---|
1位 | 電気・ガス・熱供給・水道業 | 686.5万円 |
2位 | 金融業、保険業 | 659.2万円 |
3位 | 学術研究、専門・技術サービス業 | 649.5万円 |
4位 | 鉱業、採石業、砂利採取業 | 613.3万円 |
5位 | 情報通信業 | 605.4万円 |
平均給与がもっとも高いのは、電気・ガス・熱供給・水道業などのインフラ業界です。2位の金融業、保険業は銀行や証券会社などが該当します。
3位の学術研究、専門・技術サービス業には、自然科学研究所や人文・社会科学研究所、法律事務所、税理士事務所、獣医業などが含まれます。
4位の鉱業、採石業、砂利採取業は、天然の鉱石を採取・採掘して品質を高めるために選鉱を行う業種です。5位の情報通信業にはシステムエンジニアやネットワークエンジニア、電話会社などが含まれます。
いずれも専門性が高く高度な知識やスキルが求められる業種なので、その分給与も高い傾向にあると言えるでしょう。
参考:e-Stat(政府統計の総合窓口)「(産業計・産業別)学歴、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」(参照 2024-10-02)
平均給与が低い業界TOP5
続いて、平均給与が低い業界TOP5をご紹介します。
順位 | 業種名 | 年収 |
---|---|---|
1位 | 宿泊業、飲食サービス業 | 375.2万円 |
2位 | 生活関連サービス業、娯楽業 | 399.9万円 |
3位 | サービス業(他に分類されないもの) | 434.5万円 |
4位 | 医療、福祉業 | 455.4万円 |
5位 | 運輸業、郵便業 | 481.9万円 |
平均給与がもっとも低い業界は、ホテルや飲食店などの宿泊業、飲食サービス業です。2位の生活関連サービス業、娯楽業にはクリーニング店や美容院、銭湯、映画館、劇場などが該当します。
3位のサービス業には、廃棄物処理業や自動車整備業、職業紹介業などが含まれます。このように、一般的にサービス業は平均給与が低い傾向にあるようです。
4位の医療、福祉業は専門的な知識やスキルを必要とする職種も多い業界ですが、全体としての年収は低めです。また、5位の運輸業、郵便業には、鉄道業や航空運送業なども含まれていますが、こちらも業界全体としての平均給与は高くありません。
転職を検討する場合は、自分の経歴やスキルに合った業界で、平均年収が高い業界を探すというのも一つの手です。平均給与の高い業界と低い業界を把握しておくことで、狙うべき業界が見えてくるかもしれません。
参考:e-Stat(政府統計の総合窓口)「(産業計・産業別)学歴、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」(参照 2024-10-02)
給料が低すぎて生活できない環境から抜け出す方法
給料が安すぎる中小企業から別の会社へ転職するとしても、また同じような給料・環境の会社に入社したのでは意味がありません。
生活できないレベルの職場環境から抜け出すためには、ポイントを押さえて転職活動を行うことが大切です。
ここでは、給料が低すぎて生活できない環境から抜け出す方法について解説します。転職を検討している人は、参考にしてみてください。
転職エージェントを活用して転職する
転職活動を行うにしても、在職中に仕事をしながら転職活動を成功させることは容易ではありません。
求人探しや業界・職種・企業のリサーチ、履歴書・職務経歴書の作成、面接の日程調整、面接練習などやることが多く、働きながら転職のための時間を捻出するのは難しいでしょう。
しかも、今の会社よりも給料が高く条件の良い求人を探すとなると、自分一人の力では限界があります。よって、転職エージェントを活用しながら転職活動を進めるのがおすすめです。
転職エージェントは無料で利用でき、転職活動に関するさまざまなサポートを受けられます。具体的には以下のようなサポートを行ってくれます。
- キャリア相談
- 求人の紹介や企業の内部情報の共有
- 履歴書や職務経歴書の添削
- 面接の日程調整
- 面接対策
- 内定後の条件交渉
プロのサポートを受けながら転職活動を進められるので、自分一人で行うよりも成功率が高まります。
また、通常の求人サイトには載っていない非公開の求人情報も紹介してもらえるため、転職先の選択肢がさらに広がるというメリットもあります。
平均給与が高い業種かつ大手企業へ転職する
今の環境から脱却するには、平均給与が高い業種かつ大手企業へ転職するのも一つの手です。
本人の能力以上に業種選びは重要です。どんなに高い能力を持っている人でも、平均給与が低い業界で働いていれば給料の上がり幅には限界があります。
日本では年齢や勤続年数によって給与水準が決まることが多く、入社時の基本給を低く設定している企業も少なくありません。そもそも基本給の水準が低い業界に入社してしまうと、入社後にどれだけ頑張っても上がり幅が小さく、個人の努力だけでは大幅に給料を上げるのが難しいのです。
先ほどご紹介したような平均給与が高い業界を狙えば、収入アップの可能性を高めることができます。
また、業界が同じであっても、中小企業と大手企業では資金力が違うため、スタート段階から給料に差が生まれやすいです。企業規模が大きいほど資本力や資金力があるので、基本給も昇給額・ボーナス額も高い傾向にあります。
もちろん大手企業への転職は簡単ではありませんが、現職と同じ業種の場合は、今の経験やスキルを活かして転職できるチャンスも出てきます。そして、未経験で応募できる求人を出している大手企業も少なくないので、異業種への転職も不可能ではありません。
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今の環境から抜け出すためにも、転職エージェントを活用しつつ平均給与が高い業種の大手企業への転職を狙ってみましょう。
ナイト系の業界へ転職する
転職エージェントを活用すれば転職活動の成功率は高まりますが、大手企業への転職はやはり狭き門なので、特殊なスキルや資格を併せ持たない限り、転職するのは難しいのが実情と言えます。
経験やスキルもない状態で高収入を目指すのであれば、ナイト系の業界へ転職するのも選択肢です。
ナイト系は実力主義の業界なので、現時点でスキルがなくても、入社後の頑張り次第でスピード昇給・昇格が可能です。実力があれば、年収1,000万円も夢ではありません。
18歳以上(高校生不可)なら学歴や職歴を問わず応募できる求人も多く、異業種からの転職を歓迎している企業ばかりです。実際に、完全未経験でスタートして入社数ヶ月で店長や幹部候補を任されたスタッフもいるため、誰でもチャンスを掴めるのが魅力とも言えます。
生活できないレベルの環境から抜け出して高収入を得るなら、ナイト系の求人もぜひチェックしてみてください。
給料が低く生活できないなら転職一択!ポイントを押さえて行動に移そう!
中小企業は大手企業に比べて資本力や資金力に乏しく、給料が低い傾向にあります。
まずは下記の基準を参考に、今の会社に所属し続けるべきか検討してみましょう。
- 筋の通った評価基準になっているか
- 昇給なしやサービス残業など搾取が横行していないか
- 低収入をカバーできるだけの魅力が会社にあるか
なかには明確な評価基準が設けられていなかったり、昇給なしやサービス残業などの搾取が行われていたりする企業もあるため、その場合は早急に転職を検討するのがおすすめです。
給料が低すぎて生活できない環境から抜け出すには、本記事でお伝えした以下のポイントを押さえて転職活動を行ってみてください。
- 転職エージェントを活用して転職する
- 平均給与が高い業種かつ大手企業へ転職する
- ナイト系の業界へ転職する
今の環境で苦しむより、収入アップを目指せる環境に身を置けるようにさっそく行動に移していきましょう。