設備管理は、ビルや施設の保守・点検などを行う仕事です。
安定した需要がある職種ですが、その年収や今より稼ぐ方法については気になるところですよね。
本記事では、設備管理の職種の平均年収や年齢・性別・地域別の収入、さらに設備管理で稼げる人と稼げない人の特徴を解説します。
加えて、設備管理で年収アップを目指すための具体的なポイントや、年収の高い求人の探し方など、お金にまつわる情報もご紹介します。
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設備管理業界で収入を増やしていきたいと考えている方はぜひ参考にしてみてください!
設備管理の平均年収は432万円
設備管理の全国平均年収は約432万円です。
この金額は、月給30.3万円、年間賞与68.4万円をもとに計算しています。
また、大学卒業後に22歳から同じ企業で設備管理の職務を続け、60歳の定年まで38年間勤続したと仮定した場合の生涯年収は、単純計算で約1億6,416万円です。
なお、設備管理の年収は年齢によっても変動し、45~49歳のピーク時は平均年収が485.91万円となっています。
勤続年数が増えるとともに経験やスキルが身に付けば、年収が上がっていく傾向にあります。
しかし、設備管理は夜勤や宿直もある職種で体力も必要なので、この年齢層の収入が最も高くなるようです。
職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「ビル施設管理」(参照 2024-4-29)
設備管理の収入内訳
設備管理の職種における収入は、基本的に「基本給+賞与+各種手当」です。
月ごとに支払われる基本給の他、企業や業績によっては年に数回の賞与があります。
また、各企業が定めている、時間外手当、役職手当、家族手当、資格手当、通勤手当、住宅手当、宿直手当などの諸手当が加算されます。
設備管理は夜間に行われる業務が頻繁にある場合、時間外手当や宿直手当を占める割合が大きくなる点が特徴です。
また、「建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)」や「電気主任技術者」といった専門的な資格を持っていれば、月々の給与に資格手当がつく他、その資格を使って実際に業務をした際にもらえる「専任手当」がつくケースもあります。
【年齢別】設備管理の平均年収
年齢別で設備管理の平均年収を見てみると、20代から30代にかけては大きく年収が上がりやすいものの、30代以降はあまり年収の変動がありません。
多くの職業では年齢に応じて年収が上がりやすいことを考慮すると、設備管理の仕事は長く働いてさえいれば確実に一定の割合で昇給するというわけではないようです。
年齢 |
平均年収 |
20~24歳 |
336.97万円 |
25~29歳 |
396.58万円 |
30~34歳 |
447.64万円 |
35~39歳 |
448.2万円 |
40~44歳 |
478.23万円 |
45~49歳 |
485.91万円 |
50~54歳 |
470.77万円 |
55~59歳 |
478.14万円 |
【性別】設備管理の平均年収
設備管理の平均年収を性別で比較してみると、女性よりも男性の方が高収入の傾向があるようです。
しかし、日本全体の平均年収では男性が563万円、女性が314万円であるため、設備管理の年収の男女差は他の一般的な職種よりも差が小さく、女性でも比較的稼ぎやすい職種であると言うこともできます。
平均年収は「きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。
性別 |
平均年収(千円) |
きまって支給する現金給与額(千円) |
年間賞与その他特別給与額(千円) |
男女計 |
4329.1 |
303.7 |
684.7 |
男 |
4344.3 |
304.8 |
686.7 |
女 |
3865.3 |
270.1 |
624.1 |
【地域別】設備管理の平均年収
地域別で設備管理の平均年収を見てみると、都市部が高く、地方は抑えめといった傾向にあります。
東京都と政令指定都市のある道府県の平均年収を比べてみると、以下の通りです。
都道府県 |
平均年収 |
北海道 |
427.5万円 |
宮城県 |
366.7万円 |
東京都 |
469.6万円 |
埼玉県 |
468.4万円 |
千葉県 |
484.8万円 |
神奈川県 |
440.4万円 |
新潟県 |
380.6万円 |
静岡県 |
417.6万円 |
愛知県 |
481.3万円 |
京都府 |
510.3万円 |
大阪府 |
420.7万円 |
兵庫県 |
401.6万円 |
岡山県 |
458万円 |
広島県 |
377.9万円 |
福岡県 |
481.9万円 |
熊本県 |
334.3万円 |
もっとも平均年収が高いのは京都府の510.3万円で、もっとも平均年収が低いのは熊本県の334.3万円です。
都市部の方が管理を必要とする大規模な建物が多く、また給与水準が高い大企業が集まりやすいため、平均年収も高めになるというのが大きな理由と推測されます。
設備管理の平均年収が低いと言われる理由
設備管理の平均年収が低いと言われる主な理由は、下記が挙げられることが多いです。
- 競争が激しい業界のため、低価格での受注のしわ寄せを受けやすいから
- 付加価値をつけにくいサービスのため、劇的な売上アップがしづらいから
- 長時間労働や危険な業務が対価に見合っていないと感じやすいから
設備管理業界は、低価格競争が激化している業界のため、ギリギリの利益しか出ない価格でサービスを提供せざるを得なくなっている業者が多いです。
そもそも低価格競争になってしまっている一因として、設備管理サービスは、会社の利益を上げるうえで欠かせない「独自のサービス」や「付加価値」をつけづらいという点が挙げられます。
企業間でのサービスの違いを出しづらいため、サービスの利用者は料金で業者を決める傾向にあります。その結果、低価格競争が激化してしまい、企業の利益率が低くなってしまい、その影響が従業員の給与にも反映されてしまいがちなのです。
さらに、設備管理の仕事は拘束時間が長いという特徴もあります。
急な設備の故障といったトラブルが起きた場合、時間外であっても出動したり、トラブル解決までの時間が長引いたりして、長時間労働が常態化している企業も珍しくはありません。
また、トラブルの内容によっては、高所での作業や漏電・漏水・熱源の点検、トイレのつまりの対応などもあり、危険を伴う業務や不衛生な現場での業務も発生します。
このような環境から、従業員が「給与が割に合わない」と感じやすいのです。
設備管理の年収が高い企業ランキング
設備管理の年収が高い企業ランキングTOP10を見ていきましょう。
ただし、下記は各企業の社員の平均年収を記載しているため、設備管理以外の職種の年収も含まれた数値です。これらの企業に入社したとしても、記載通りの年収になるとは限らないことにご留意ください。
順位 |
企業名 |
平均年収 |
1位 |
東急不動産HD |
1,030万円 |
2位 |
ダイビル |
956万円 |
3位 |
日本ハウズイング |
556万円 |
4位 |
ETSホールディングス |
519万円 |
5位 |
ルーデン・HD |
508万円 |
6位 |
イオンディライト |
493万円 |
7位 |
東洋テック |
488万円 |
8位 |
アール・エス・シー |
420万円 |
9位 |
ハリマビステム |
403万円 |
10位 |
クロップス |
390万円 |
ビル管理業界は、業界TOP10の企業でも、設備管理の平均年収以下の年収となってしまっている企業もあります。
業界全体で高収入を実現できる人は一部の人に限られていると言えます。
設備管理で稼げる人・稼げない人
設備管理で稼げる人の特徴として以下のようなスキルや能力が挙げられます。
- 業務に役立つ専門知識・スキル
- チームを引っ張ることができるリーダーシップ
- 慎重かつ丁寧に管理・点検をする責任感
- ルーティンワークをコツコツ行う粘り強さ
さらに、設備管理で稼げる人・稼げない人の特徴を細かく分けてみると以下のようになります。
設備管理で稼げる人 |
設備管理で稼げない人 |
専門知識を習得する意欲が高い人 |
自己管理ができない人 |
責任感がある人 |
協調性がない人 |
ルーティンワークが得意な人 |
潔癖な人 |
設備管理の業務はさまざまな設備の管理スキルや知識が求められるため、専門分野の勉強が必要になります。施設によっては有資格者でないと対応できない業務も多々あり、設備管理の職で稼ぐためには関連資格を取得することが必須です。
また、設備管理の業務は何かトラブルが起きない限りは、基本的に日常巡回や月次点検、法定点検の立ち会いといった、ルーティン業務が多いです。とは言え、管理に見落としがあれば、人命などにもかかわる重大な事故に繋がる可能性があるので、責任重大な仕事でもあります。
たとえルーティン業務であっても丁寧に点検・管理をすることが求められるので、小さな変化に気づける細やかさがある人や、責任感が強い人、ルーティンワークが得意な人が評価されやすいです。
一方、設備管理は自己管理が苦手な人や協調性がない人は稼ぎにくいです。
設備管理の仕事は夜勤がある現場やシフト制勤務の現場が多く、現場の巡回や点検は立ち仕事がメインとなるため、体調管理はしっかりとする必要があります。
そして、設備管理の業務は基本的に複数人で一つの施設を維持・管理します。さらに、施設のオーナーへの報告や交渉、業者依頼といった人と接する業務が意外と多いため、協調性やコミュニケーションスキルがないとスムーズに仕事を進めることができません。
また、設備管理の仕事は普段は使われていない施設や、トイレをはじめとした衛生的ではない現場での作業も多く、極端に潔癖症な人はそもそも稼ぎづらい仕事でもあります。
設備管理で年収・給与を上げるポイント
設備管理で年収・給与を上げるにはいくつかのポイントを押さえる必要があります。
ここからは、設備管理で年収・給与を上げるために必要なポイントについてそれぞれを詳しく解説していきます。
- 夜勤や宿直がある企業で働く
- 専門的な業務に役立つ資格を取得する
- 管理職へ昇進する
- 待遇の良い企業に転職する
これから設備管理の仕事に就く方はもちろん、すでに設備管理の仕事をしていて「もっと稼ぎたい」と思っている方も必見です。
ポイント1:夜勤や宿直がある企業で働く
夜勤や宿直を伴う勤務形態を採用している企業では、積極的に夜勤や宿直を担当することで手当の収入を増やすという選択肢があります。
深夜に勤務すると、通常の日勤よりも高い割増賃金が支払われるため、手っ取り早く収入を増やす有効な手段です。深夜勤務や宿直勤務は週に1~2回程度であれば、生活リズムを大きく崩さずに追加収入を得られます。
たとえば、一回の宿直で5,000円の手当が支給される場合、週に2回の宿直担当になれば、月に約4万円の収入になり、年間では48万円の増収が見込めます。
ただし、夜間の勤務は体調管理が重要となるため、健康を維持しながら勤務することが求められる点には注意が必要です。
また、家族との時間やプライベートな時間が削られがちになるため、ライフスタイルに合わせてのシフト調整や職場選びをすることが重要です。
ポイント2:専門的な業務に役立つ資格を取得する
設備管理の仕事でキャリアアップを目指すなら、資格の取得も非常に有効です。
特にビル管理の分野においては、専門的な知識と技能が求められるため、関連資格を持っていることが大きなアドバンテージになります。
資格を取得すると以下のような恩恵を受けられる可能性があります。
- 資格手当が入る
- 特定建築物の監督者や管理職になれるチャンスがある
- 同業界での転職が有利になる
業務の仕事の幅が広がるだけでなく、資格手当が支給されたり、昇格につながったりする場合も多いです。
そして、設備管理の仕事で年収を上げるために有効な代表的な資格としては、下記が挙げられます。
参考
・第二種電気工事士
・二級ボイラー技士
・危険物取扱者乙種4類
・第三種冷凍機械責任者
・建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)
・エネルギー管理士
・第三種電気主任技術者
「第二種電気工事士」「二級ボイラー技士」「危険物取扱者乙種4類」「第三種冷凍機械責任者」はビルメン(ビルメンテナンス)をするなら必ずとっておきたい資格です。そのため「ビルメン4点セット」と呼ばれています。
現場によって求められる業務や資格は異なりますが、これらの資格は幅広い施設の維持・管理業務で使われるため、資格手当の対象になっていることが多いです。
他の企業に転職する場合にも役立つので、まずはこの資格を取得するところから始めましょう。
また、「建築物環境衛生管理技術者」「エネルギー管理士」「第三種電気主任技術者」は非常に価値が高い資格です。規模が大きい施設での管理業務に直結する資格で「ビルメンの三種の神器」とも言われています。
特に「建築物環境衛生管理技術者」は特定建築物の監督者業務・維持管理業務ができるようになったり、保健所の立ち入り検査の対応ができるようになったりと、業務の幅がかなり広がります。監督業務ができるようになれば給与が上がりやすくなりますし、管理職への昇進のきっかけになったりもします。
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設備管理に関する専門資格はこの他にも多数あるので、自分の職場で求められている資格をリサーチし、少しずつ資格取得を目指していきましょう。
ポイント3:管理職へ昇進する
社内での昇進も年収アップに直結します。
設備管理業界では、主に勤続年数と共にスキルや実績、経験を積み重ねることで、昇進の道が開かれます。まずは現場作業で確実に評価されるように立ち回りましょう。
初級の設備管理をするスタッフとしてキャリアをスタートさせた後は、設備の点検や保守といった基本業務を経て、上級設備管理スタッフに進むことが一般的です。
そして、徐々に複雑な設備の管理やトラブルシューティングに携わり、チームのリーダーとして活躍できるようにステップアップしていきましょう。
チームをまとめるマネジメントスキルや実績が認められれば、管理職(マネージャー)へと昇進する機会が与えられます。管理職は複数のチームや部門の管理責任だけでなく、予算管理や戦略策定など、企業全体の運営を牽引(けんいん)する重要な役割を担うポジションです。
設備管理の仕事はトラブルやアクシデントへの対応も多く、それらを適切に乗り越えるための対応力なども求められます。
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責任がある分、基本給のアップや役職手当の支給といった収入増につながります!
ポイント4:待遇の良い企業に転職する
現職でなかなか収入が上がらないということであれば、思い切って待遇の良い企業へ転職するのも手です。
手当や福利厚生が充実している企業では、給与だけでなく、退職金制度や住宅支援、育児支援など、長期的なキャリアを支える多くのメリットが提供されます。
これらの福利厚生は、従業員のモチベーション維持や生活の安定に直接寄与するので、生活の質を上げて仕事に集中することができる点も重要です。
ちなみに、ビルメンを行う企業は大きく分けて下記の2種類があります。
- 系列系ビルメン企業:グループの親会社が自社の施設を管理するために設立した子会社
- 独立系ビルメン企業:親会社は存在せず、自ら他社に営業をかけてビルメン業務を請け負う会社
比較的年収が高く、福利厚生が良い企業が多いのは、系列系ビルメン企業です。
特に、大手企業の系列会社は、安定した経営基盤があることから、従業員に対して労働環境、福利厚生、収入の面で優れた条件を提供している場合が多いです。
とは言え、大手企業の系列会社はネームバリューがあり、求人に応募者が殺到するので、競争相手が多いという点も事実です。
転職を考える際には、現在の職場と比較してどの程度年収が上がる見込みか、またどのような福利厚生が改善されるのか、そしてその企業に転職するためにはどんな経験や資格が必要かを詳しく調査することをおすすめします。
年収の高い設備管理の求人を探すなら?
年収の高い設備管理の求人を探すなら、下記のような設備管理業界などに特化した求人サイトを利用することをおすすめします。
施工管理・設備管理・設計の正社員求人に特化した転職サイトです。職種での検索はもちろんのこと、資格での検索もできるため、資格を取ってキャリアアップを目指す転職の際に有効です。 |
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建設業界に特化した求人サイトです。設備管理も対象で、経験を登録すると企業からスカウトメールが届く仕組みになっています。 |
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特に資格取得者向けの非公開求人に特化したサイトです。資格を取得してキャリアアップの転職を求める際には特に便利でしょう。 |
業界知識を持ったアドバイザーがつくサービスもあるので、一人での転職活動は不安という方や、アドバイスをもらいながら転職先を決めたいという方は、一度転職のプロに相談してみるのも手です。
設備管理以外だと未経験でも年収1000万円を目指せるナイト系もおすすめ!
設備管理業界は、業界の特性上、劇的に年収を上げるのが難しいケースが多いです。
大幅な年収アップには専門的な資格や長年の経験が求められるため、すぐに収入を増やそうとしてもなかなか上手くいかないかもしれません。
業界未経験者でもスピード昇給・昇格が実現可能で高収入を目指せる職種として、ナイト系という選択肢があります。ナイト系の仕事は、業界経験や特定の資格は必要なく、基本的には高校生を除く18歳以上であれば誰でも応募可能です。
また、店舗ごとにサービスや特徴が異なるため、スタッフの工夫によって大きく売上を上げることができ、貢献次第ではすぐに昇給・昇格を目指せる業界でもあります。中には未経験から始めて1000万円以上を稼いでいるスタッフもおり、自分の頑張りが短期間で収入として反映されるので、やりがいを感じる方も多いです。
設備管理の給与に不満を持っている方や「そもそも設備管理の仕事が自分には合っていないかも」と感じている方は、ナイト系でのキャリアを検討することもおすすめします。
設備管理で稼ぐには資格取得や働き方が重要!
設備管理の仕事で高収入を得るためには、専門的な資格を取得したり、昇進や転職を考えるといった工夫が必要です。
ポイント
・夜勤や宿直がある企業で働く
・専門的な業務に役立つ資格を取得する
・管理職へ昇進する
・待遇の良い企業に転職する
これらのポイントを押さえて計画的にキャリアを形成していくことによって、設備管理の平均的な年収以上の収入を得られる可能性が上がります。
設備管理の仕事は、関連する専門資格を取得すれば、管理できる建物の種類や規模、管理項目が広がり、年収アップへのチャンスに直結します。まずは設備管理の基本的な資格を押さえながら、年収アップにつながる勉強を怠らないようにしましょう。
また、深夜勤務や宿直勤務を積極的に行ったり、現場でのスキルだけでなくマネジメントスキルを高めて管理職として活躍したりといった働き方も年収アップのカギです。
自己のスキルやキャリアプランに合わせて先を見据えて行動するのがポイントと言えます。