自動車整備士は、主に自動車の点検・修理といった整備業務や車検対応を担っており、世間からは自動車業界を支える重要な職業として広く知られている職種です。
人の暮らしになくてはならない自動車に深く関わる自動車整備士の年収は、一体どれくらいなのか気になる人も多いのではないでしょうか。
この記事では、自動車整備士の平均年収や年齢・性別・地域別の収入内訳を詳しく紹介し、さらに稼げる人の特徴や年収を上げるための具体的なポイントも解説します。
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自動車整備士としてのキャリアを考えている人はぜひ参考にしてください。
自動車整備士の平均年収は487万円
自動車整備士の全国平均年収は約487万円です。
※「令和5年賃金構造基本統計調査」の「自動車整備・修理従事者」に記載されている月給33.1万円、年間賞与90.7万円をもとに算出。
大学卒業後の22歳から定年の60歳までの38年間を同一の企業に勤め続けた場合、自動車整備士の生涯年収は約1億8,506万円です。
また、自動車整備士の年収額のピークは45~49歳頃で、平均年収は約577.57万円に達します。
後ほど解説しますが、自動車整備士は自分のキャリアプランに合った上位資格を取得したり、管理職に就くことで年収アップが期待できる職業です。
どれも年単位の経験を積む必要があるので、年齢が高くなればなるほど平均年収も高くなる傾向にあります。そのため、自動車整備士は、スキルを積めれば安定した収入が見込める職業であると言えます。
参考:職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「自動車整備士」(参照 2024-8-27)
自動車整備士の収入内訳
自動車整備士の収入内訳は、基本的に「基本給+諸手当+賞与」で構成されています。
諸手当には、通勤手当、家族手当、赴任手当、住宅手当、資格手当などがあり、役職者になるとプラスで役職手当も支給されます。
資格手当は取得した資格によって異なり、「3級自動車整備士」で5,000円前後、「1・2級自動車整備士」で10,000円前後、「自動車検査員」で20,000円前後、「車体整備士」で10,000円前後が相場です。
会社によるものの、役職手当は主に「主任整備士」「副工場長」「工場長」に昇進した人に支給されるのが一般的です。
また、会社によっては、工具手当や作業着の洗濯手当が支給される場合もあります。
このように、手当の内容によって月収額が変動するため、自動車整備士としてたくさん稼ぎたい人は、支給する手当の種類が豊富な会社で働くのも手です。
【年齢別】自動車整備士の平均年収
自動車整備士の年収を年齢別で比較すると、以下の通りです。
年齢 | 平均年収 |
---|---|
20~24歳 | 341.19万円 |
25~29歳 | 411.74万円 |
30~34歳 | 474.8万円 |
35~39歳 | 532.33万円 |
40~44歳 | 561.05万円 |
45~49歳 | 577.57万円 |
50~54歳 | 570.88万円 |
55~59歳 | 546.98万円 |
参考:職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「自動車整備士」(参照 2024-8-27)
自動車整備士の場合、平均年収のピークを迎える45~49歳頃までは増加傾向にあり、50代以降も平均年収額はほぼ横ばいです。そのため、定年まで安定した収入を得やすい職業です。
なお、入社したての20~24歳頃の平均年収は341.19万円、25~29歳頃の平均年収は411.74万円で、この期間で収入額が70.55万円も増えています。
これは、20代前半で働き始めた人が実務経験を積んだあとに、資格手当の対象になる上位資格に合格する時期と重なる点が理由として考えられます。
自動車整備士は、業務に役立つ資格を取得して資格手当の支給による年収アップを期待できる職種です。また、できる仕事が増えれば増えるほど社内で高く評価され、昇給額が大幅に上がりやすくなります。
平均以上の収入を得たい人は、積極的に資格を取得してみましょう。
【性別】自動車整備士の平均年収
自動車整備士の平均年収を性別で比較すると、男性の方が女性よりも100万円ほど年収が高い傾向にあります。
なお、平均年収は「(きまって支給する現金給与額×12カ月)+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。
性別 | 平均年収 (千円) | きまって支給する現金給与額 (千円) | 年間賞与その他特別給与額 (千円) |
---|---|---|---|
男女計 | 4,875.6 | 330.7 | 907.2 |
男 | 4,895 | 332.0 | 911.0 |
女 | 3,827.9 | 260.8 | 698.3 |
参考:e-State政府統計の総合窓口「職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」(参照 2024-8-27)
男女の賃金差が大きい理由として、女性より男性の方が圧倒的に多い業界である点が挙げられます。
自動車整備士の労働者数約33万人のうち、女性はわずか1万人ほど(2022年6月時点)で、男性の自動車整備士の割合がかなり高いです。
自動車整備士は、重量のあるタイヤやエンジンを持ち上げる力仕事が多いので、体力面で男性より劣る女性にとって長く活躍しにくい労働環境と言えます。
また、自動車整備士は残業や休日出勤が発生することも珍しくなく、結婚・出産などをきっかけに時短勤務を希望したり退職したりする女性が多い現状もあります。
しかし、近年では女性に配慮した労働環境の整備や省力化機器の導入など、業界全体で働き方改革が進んでいるので、今後男女の賃金格差が解消されていくかもしれません。
参考:職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「自動車整備士」(参照 2024-8-27)
【地域別】自動車整備士の平均年収
自動車整備士の平均年収を地域別で比較すると、以下の通りです。
都道府県 | 平均年収 |
北海道 | 478.1万円 |
宮城県 | 420.8万円 |
東京都 | 620万円 |
埼玉県 | 568.8万円 |
千葉県 | 535.2万円 |
神奈川県 | 559.2万円 |
新潟県 | 455.2万円 |
静岡県 | 484.6万円 |
愛知県 | 499.3万円 |
京都府 | 486.7万円 |
大阪府 | 489.3万円 |
兵庫県 | 490.1万円 |
岡山県 | 469.6万円 |
広島県 | 479万円 |
福岡県 | 488.4万円 |
熊本県 | 402万円 |
参考:職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「自動車整備士」(参照 2024-8-27)
ご覧の通り、首都圏の平均年収が高い傾向です。
自動車整備士の平均年収が最も高い東京都は620万円、平均年収が最も低い熊本県は402万円と、218万円もの収入差があります。
そのため、自動車整備士は就業地域によって稼ぎやすさが大きく異なると言えます。
自動車整備士の平均年収が低いと言われる理由
自動車整備士の平均年収が低いと言われる理由は、以下の3点です。
- 利益率が低い業務が多いから
- 設備の維持費が高く、従業員の給料を上げづらいから
- 労働環境の過酷さに対して給料が見合ってないと感じるから
自動車整備士を雇っている整備工場は、主に車検・点検・修理業務を行います。これらの事業で得た収益から重量税や自賠責保険料といった法定費用、部品代、光熱費、人件費などを賄わなければなりません。
点検・修理業務や車検対応は作業に対しての利益率があまり高くなく、従業員の給与を上げられるほどの売上を得られていない整備工場が多いのが現状です。
また、高度な機器や特殊工具など自動車の整備を行うための環境設備は必要不可欠ですが、その維持費だけでも大きな出費になります。
そのため、たとえ利益が多少増えたとしても、環境設備の維持費に充てる必要があり、結果として従業員の給与を大幅に上げる余裕がない会社がほとんどなのです。
そして、自動車整備士の仕事は、肉体的な負担が大きく、長時間の立ち仕事や重い部品の扱いなど、体力が求められる業務が多いのが特徴です。会社によって職場の労働環境は異なりますが、空調設備がない現場で過度な暑さや寒さに耐えながら働かなければいけない場合もあります。
くわえて、自動車整備士の仕事は、作業中に作業着が油まみれになったり騒音が鳴り響いたり、「3K(キツイ・汚い・危険)」と言われるほど労働環境が厳しいです。
こうした厳しい労働環境に対して、支給される給与が不十分だと感じる人も少なくありません。
自動車整備士で稼げる人・稼げない人
自動車整備士に求められる能力は、以下の通りです。
- 自己研鑽力
- コミュニケーション能力
- 体力
これらの能力を参考に、自動車整備士で稼げる人と稼げない人の特徴をそれぞれご紹介します。
自動車整備士で稼げる人 | 自動車整備士で稼げない人 |
---|---|
勉強熱心な人 | 問題を解決できる思考力のない人 |
忍耐力がある人 | 成長意欲のない人 |
手先が器用な人 | 体力のない人 |
まず、自動車整備士は、自己研鑽力が高い人ほど稼ぎやすい職業です。自動車技術は日々進化しており、常に新しい知識や技術を学ぶ姿勢が求められます。
たとえば、新型車の特性を知っておけば、スムーズに整備できる車種が増えるので、社内でも高評価を得られて昇給額も上がりやすくなります。逆に、自動車に関する新しい知識や技術を学ぶ意欲が薄い人は、技術力が上がらず、収入アップが難しいです。
また、自動車整備は、点検・修理業務を中心に行います。単調な作業を繰り返しながらも車に不具合があるかどうかチェックしてメンテナンスをする必要があるので、手先の器用さや忍耐力も必要です。自動車を修理する際は、不具合の原因を探し、どのように解消していくべきかプランを立てるための思考力も欠かせません。
そして、職場のスタッフと連携しながら仕事を効率よく進めたり、お客様に整備内容や車の状態をわかりやすく説明したりと、コミュニケーション能力が問われる場面が多いのも自動車整備士の仕事の特徴です。
くわえて、自動車整備士の仕事は肉体労働が多く、長時間の立ち仕事や重い部品を扱う作業が日常的に行われるため、体力に自信がない人にとって厳しい環境と言えます。
自動車整備士で年収・給与を上げるポイント
自動車整備士で年収・給与を上げる方法として、下記の3点のポイントが挙げられます。
- 上位資格を取得する
- 経験を積んで管理職に就く
- 大手カーディーラーに転職する
自動車整備士は業務の性質上、ただ真面目に働いているだけでは大幅な年収アップが難しいです。給与を上げるためには、資格取得や役職への昇進、大手カーディーラーへの転職といった行動力が求められます。
具体的にどのように行動すべきなのか解説していきます。
ポイント1:上位資格を取得する
自動車整備士として年収を上げるためには、整備に役立つ資格の取得が有効です。
なるべく難易度の高い資格を取得することで資格手当が支給されるだけでなく、整備に関するさまざまな業務を行える証明となり、昇給や昇進のチャンスが広がります。
たとえば、自動車1級整備士の資格を取得すれば、ほとんどの車種を整備できるようになり、整備士のアドバイザーやリーダーとして活躍する機会が増えます。そして自動車検査員は、整備後や車検時の検査業務を行う際に必要なので、できる仕事を増やしたい人にとって需要の高い資格です。
また、自身のキャリアプランに合わせて専門性の高い資格を取得するのも重要です。
ここでは、特定の分野に特化した国家資格を指す「特殊整備士」についてご紹介します。
特殊整備士の資格名 | 特徴 |
---|---|
自動車電気装置整備士 | 電気自動車の点検・修理・改造などの知識やスキルの習得が証明できる。 |
自動車車体整備士 | 自動車のフレーム・ボディの点検・修理・整備の知識やスキルの習得が証明できる。 |
特に、昨今は環境に配慮した電気自動車やハイブリッド車の需要が高まっているのも相まって、「自動車電気装置整備士」を取得しておけば自動車業界の転職時に市場価値の高い人材になれるメリットがあります。
ポイント2:経験を積んで管理職に就く
自動車整備士として経験を積み、管理職に就くことも年収を上げるポイントの一つです。
自動車整備工場で働く場合、役職は主に「主任整備士」「副工場長」「工場長」などがあり、それぞれ仕事内容が異なります。
役職名 | 仕事内容 |
---|---|
自動車整備士主任者 | 整備業務全般において、国の定めた保安基準をクリアできるように作業管理・確認・記録を行う。 |
工場長・副工場長 | 工場の運営方針の策定・収益の管理といった運営管理や人材確保・育成・シフト管理などを行う。 |
自動車整備士主任者は、国から「認定工場」「指定工場」の認定を受けるうえで必ず1名以上配置しなければいけません。自動車整備士主任者になるためには、以下の条件をクリアする必要があります。
- 1級もしくは2級自動車整備士を取得していること
- 所属会社から任命され、各都道府県の運輸局に届出の受理がされていること
- 任命時に「新規整備主任者特別研修」を受講すること
- 毎年「整備主任者定期研修(法令・技術)」を受講すること
工場長や副工場長になるためは、主に「実績を積んで任命される」「工場長候補を募集する会社に転職する」方法が挙げられます。
どの役職においても、豊富な整備経験と高い技術力、チームをまとめられるコミュニケーション力やマネジメント力が求められます。さらに、工場長や副工場長の場合、工場を適切に運営するための経営的視点や統率力も必要です。
このように、管理職に就くうえで必要なスキルを習得しながら、実績を積み重ねて多くの人から信頼を得ることが、年収を高くする重要なステップと言えます。
ポイント3:大手カーディーラーに転職する
自動車整備士として年収を上げるための有効な手段の一つが、大手カーディーラーへの転職です。
【カーディーラーとは】
メーカーから直接自動車を仕入れて販売することができる「特約店契約」を結んだ店舗を指します。
取扱いメーカーの新車や人気車の販売、アフターサービスとして購入後の自動車の整備全般を中心に行います。
自動車の販売も行うカーディーラーは、整備以外の業務で自分で利益を出すことが可能です。そのため、民間の自動車整備工場より給与が高い傾向にあります。
特に大手の場合、明確な評価基準を設けているカーディーラーが多く、実績に応じて昇給や昇格が期待できる環境が整っているのが特徴です。キャリアアップの仕組みができあがっている会社は、モチベーション高く働きやすいメリットがあります。
また、大手カーディーラーは福利厚生が充実しているので、好待遇を受けられる可能性が高いです。
そして、ディーラー独自の整備士資格を設ける会社も存在します。取得できれば資格手当が支給されたり、昇格のチャンスが広がります。
大手メーカーの系列店の場合、業界最先端の知識やノウハウを習得できる機会も多く、整備士としてステップアップしやすい環境である点も魅力です。
ただし、カーディーラーの中には労働環境が悪かったり給与が低かったりする会社も存在するので、転職する際は求人情報で給与面や労働条件を慎重に見極めることが重要です。
年収の高い自動車整備士の求人を探すなら?
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カーワク | 整備士・メカニックなど自動車業界に特化した転職サイトです。求人数は1万件を超えるため、自分に合った転職先を探しやすいメリットがあります。 |
メカニッ求 | 自動車業界専門の転職サイトです。おすすめの求人を見つけやすく、使い勝手の良さが魅力です。 |
整備士JOBS | 自動車整備士専門の転職・求人サービスです。転職に関するサポートが手厚く、大手カーディーラーへの転職も期待できます。 |
自動車整備に特化した転職サイトを利用すれば、自動車業界に精通するキャリアコンサルタントが転職希望者の希望やスキルに応じて求人を紹介してくれます。
そのため、より自分の希望に合った求人がさがしやすくなるのはもちろんのこと、納得しながら転職活動を行えるのも魅力です。
自動車整備士以外だと未経験でも年収1,000万円を目指せるナイト系もおすすめ!
自動車整備士は、利益率が低い業務が多く、厳しい環境下で働かなければいけないため、年収が低い印象を受けやすい職業です。
自動車整備士として収入を上げるためには、「業務に関する上位資格を取得して昇給や昇格を狙う」「給与水準の高い大手カーディーラーに転職する」など、時間を惜しまず年収を上げる努力をしなければいけません。
手っ取り早く高収入を得たい人は、ナイト系の求人に応募するのも検討してみましょう。
ナイト系は、成果主義を掲げる会社が多く、実績に応じて給料に反映する仕組みが整っているので、頑張り次第で未経験からでも年収1,000万円を目指せるのが特徴です。
また、ナイト系の求人は、高校生を除く18歳以上であれば学歴や職歴を問わず応募可能なので、未経験からでもチャレンジできます。
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ナイト系は、短期間で大きく稼ぎたいという人にとって魅力的な点が多い業界です!
自動車整備士で稼ぐには資格の取得、転職が重要!
自動車整備士は、他の職種と比べて年収が高い仕事と思われにくい職業です。
とは言え、下記のポイントを押さえることで、自動車整備士として給料アップを目指せます。
- 上位資格を取得する
- 経験を積んで管理職に就く
- 大手カーディーラーに転職する
資格の取得は、上位の資格になればなるほど難易度が上がるものの、その分資格手当の支給額が増えたり、携われる業務が増えたりするメリットもあるので、結果的に収入アップにつながります。
また、資格を取ってできる仕事の幅を広げられれば、管理職に登用されたり待遇の良い大手カーディーラーに転職できたり、さまざまなキャリアプランを作りやすくなるのも魅力です。
ぜひこの記事を参考に、自動車整備士としての年収アップを目指してみてください。