鍼灸師の年収まとめ!稼げる人と稼げない人の特徴と年収アップのコツ

鍼灸師の年収まとめ!稼げる人と稼げない人の特徴と年収アップのコツ

鍼灸師とは、鍼(はり)と灸(きゅう)のそれぞれの国家資格を有し、これらの施術を通じて患者の健康をサポートする医療技術職のことです。

この記事では、鍼灸師の年収に焦点を置き、年齢別、性別、地域別の平均年収や収入内訳を解説します。

さらに収入を上げるための具体的な方法、稼げる人・稼げない人の特徴も併せてご紹介します。

  • 「鍼灸師として今よりたくさん稼ぎたい」「これから鍼灸師を目指したい」という人にとって有益な情報が満載なので、ぜひ本記事を参考にしてください!

鍼灸師の平均年収は約459万円

鍼灸師の全国平均年収は約459万円です。

この金額は、「令和5年賃金構造基本統計調査」の「その他の保健医療従事者」に記載されている「月給31.8万円」「年間賞与77万円」の数値をもとに算出しました。

大学卒業後の22歳から定年の60歳までの38年間を同一の企業で勤めた場合、単純計算すると生涯年収は約1億7,442万円になります。

とは言え、鍼灸師は個々の経験やスキル、勤務地によって収入が大きく左右される職業です。自分の働き方次第では、平均を大きく超える収入になる可能性も、平均以下の収入しか得られない可能性もあります。

そのため、スキルアップに役立つ資格を取得したり独立開業したりして、鍼灸師としてキャリアアップするうえで必要な行動を取ることが大切です。


参考:職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「はり師・きゅう師」(参照 2024-08-07)

鍼灸師の収入内訳

鍼灸師は、就職先や雇用形態によって収入内訳が異なります。

ここでは、鍼灸院、接骨院などが該当する「治療院」の正社員として働く場合の収入内訳をご紹介します。

治療院の正社員として働く鍼灸師の収入内訳は、「基本給+諸手当+賞与」で構成されているのが一般的です。

鍼灸師の主な手当は、通勤手当や住宅手当、役職手当といった他職種でも定められているものばかりです。ちなみに、鍼灸師の役職は、「主任」「部長」「院長」があります。

また、国家資格にあたる鍼灸師は、資格手当が支給されるケースが多いのも特徴です。

全国にチェーン展開する治療院の場合、資格手当の相場は2万円程度です。はり師・きゅう師の資格にくわえて、柔道整復師をはじめとした施術に関する別の資格を持つWライセンスの場合は、さらに数万円ほど支給する治療院も存在します。

鍼灸師の収入は、基本給だけでなくさまざまな手当や賞与で構成されており、管理職への昇進やWライセンスの取得などによってもらえる金額はどんどん上がっていきます。

【年齢別】鍼灸師の平均年収

鍼灸師の平均年収を年齢別で比較してみましょう。

年齢平均年収
20~24歳313.25万円
25~29歳390.72万円
30~34歳426.46万円
35~39歳466.49万円
40~44歳493.89万円
45~49歳533.3万円
50~54歳554.96万円
55~59歳554.29万円
60~64歳509.25万円

参考:職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「はり師・きゅう師」(参照 2024-08-07)

鍼灸師の場合、入社したての人が多くを占める20~24歳の平均年収は313.25万円で、ここから年齢を重ねるにつれて徐々に昇給していきます。

年収のピークに達する50~54歳の平均年収は554.96万円と約30年で250万円ほどの昇給が見込まれ、基本的に収入が右肩下がりになることなく、安定して稼げる傾向にあります。

また、60~64歳の平均年収は、40代後半以降と変わらず500万円台をキープしているのも特徴です。

これは、鍼灸師は豊富な実績と高いスキルを持つことが高収入を得るコツであり、自分次第で60代以降も十分活躍できる職業である点が理由として挙げられます。

実際に、鍼灸師の求人に「60代活躍中」と記載する治療院も多いので、定年を気にせず働き続けられる職業と言えます。

【性別】鍼灸師の平均年収

鍼灸師の平均年収を男女別で比較した表は、以下の通りです。

なお、男女別の平均年収は「令和5年賃金構造基本統計調査」「(きまって支給する現金給与額×12カ月)+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。

性別平均年収(千円)きまって支給する現金給与額
(千円)
年間賞与その他特別給与額
(千円)
男女計4,592.6318.5770.6
4,732331.8750.4
4,378.9298.1801.7

参考:e-State政府統計の総合窓口「職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」(参照 2024-08-07)

男性の方がやや平均年収が高いものの、男女間で100万円以上の賃金差が出てくることも珍しくない他職種と比べれば、鍼灸師は性別によって収入額の変動が少ない職業と言えます。

男女の賃金格差が小さい理由として、主に技術力や資格の取得数が収入アップに直結するので、性別によって稼ぎやすさに影響するケースは少ない点が考えられます。

また、鍼灸師の仕事内容は体力に左右されず、性別に関係なく一緒です。男性も女性も同じ施術や接客対応を行うため、賃金格差は生まれにくいのです。

【地域別】鍼灸師の平均年収

鍼灸師の平均年収を地域別(東京都と政令指定都市のある道府県)で比較した結果が以下の通りです。

都道府県平均年収
北海道424.3万円
宮城県386.8万円
東京都543万円
埼玉県418万円
千葉県511.6万円
神奈川県505.9万円
新潟県378万円
静岡県484.3万円
愛知県451万円
京都府391.8万円
大阪府440.7万円
兵庫県445.2万円
岡山県529.3万円
広島県437.1万円
福岡県420.2万円
熊本県458.4万円

参考:職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「はり師・きゅう師」(参照 2024-08-07)

東京都をはじめ、千葉県、神奈川県といった首都圏は、鍼灸師の平均年収が高い傾向にあります。これは、「地方より地価や物価が高く、最低賃金が高く設定されている」「人口数が多い地域は患者数も多く、鍼灸師の需要が高い」などさまざまな要因が考えられます。

とは言え、岡山県の平均年収は500万円台となっており、首都圏以外でも地域によっては、高収入が得られる可能性があります。

人口数が少ない地域や高齢者が多い地域は、訪問鍼灸をはじめとした訪問型の治療院も多数ある傾向です。店舗型と比べると、テナント代や維持費などが抑えられて利益を出しやすいことから、鍼灸師の給与が高くなりやすいと言えます。

これから鍼灸師として稼いでいきたい人は、地域の需給状況を確認しながら就労場所を検討してみるのもおすすめです。

 

鍼灸師の平均年収が低いと言われる理由

鍼灸師の平均年収が低いと言われる理由には、いくつかの要因があります。

  • 一人前になれるまで大幅な給料アップが難しいため
  • 患者数に対して鍼灸師の数が増え続けているため

まず、鍼灸師は国家資格を取得したあと、すぐ施術ができるわけではありません。たとえば、鍼灸院に就職した場合、先輩鍼灸師の指導のもと何年もかけて修業期間を積む必要があると言われています。

修行期間中は大幅な給料アップが難しいため、平均年収は自ずと低くなります。

次に、鍼灸師の需要に対して鍼灸師の数が多いことも平均年収が低いと言われる原因の一つです。

まず鍼灸療法に対する認知度や信頼度が低いせいか、2002年から2005年までの鍼灸受療率はわずか6.1〜8.1%という結果が出ています。

鍼灸治療を受ける人が少ないので、集客に苦戦している治療院が多いです。

このように、受療率が決して高くない業界でありながら、鍼灸師の数は増え続けています。

とあるデータによると、2000年から2010年にかけて、鍼灸師は2万人以上、鍼灸の施術所は6,000カ所以上増加しており、需要に対して供給が上回っているのが実情です。

限られた患者を取り合う状況が続き、競合数も増えていく一方なので、1件あたりの治療院の売上も上がらず人件費を抑えざるを得ない背景があります。

このようにさまざまな原因が重なり、鍼灸師の平均年収は他の職種と比べて低いと言われています。この状況を改善するためには、業界全体での鍼灸療法の普及促進や、各施術所や鍼灸師個人での技術向上と競合との差別化を図る努力が必要です。


参考:医道の日本「我が国における鍼灸治療の受療状況について」(参照 2024-08-23)

 

鍼灸師で稼げる人・稼げない人

鍼灸師として活躍するためには、以下のようなスキルが求められます。

  • コミュニケーション能力
  • 忍耐力
  • 自己研鑽力

上記のスキルを踏まえて、鍼灸師で稼げる人・稼げない人の特徴をそれぞれご紹介します。

鍼灸師で稼げる人鍼灸師で稼げない人
体力のある人修行期間に耐えられない人
施術の技術力を高めていく意欲のある人ストレス耐性がない人
コミュニケーションが得意な人手先が器用でない人

鍼灸師の勤務中は基本的に立ち仕事であり、患者を治療するうえでさまざまな姿勢を取る必要があるので、耐えられる体力が必要です。また、鍼灸師として長く活躍するために、常に施術の技術力を高めていく意欲を持ち続けることも求められます。

さらに、患者さんとのコミュニケーションは、施術の技術面と同じくらい重要視すべき部分です。患者さんから症状を聞き出すヒアリング力や、体の健康に関するアドバイスをする伝達スキルなど、コミュニケーション能力が求められる場面がたくさんあります。

鍼灸治療が受けられる施術所が乱立しているなか、鍼灸師の人柄を重視して選ぶ患者さんも珍しくありません。そのため、人とコミュニケーションをとるのが得意な人は、稼げる鍼灸師になれる可能性が高いです。

くわえて、先述した通り、国家資格を取得して鍼灸師として就職できたとしても、その後数年間の修行期間を過ごさなければいけません。

鍼灸師になりたての頃は雑用ばかりやらされるケースも少なくないので、せっかく鍼灸師になれたのに施術をさせてもらえない期間を過ごすことに耐えられない人は、鍼灸師の仕事は難しいです。

他にも、対人関係のストレスに耐えられない人や、手先が不器用な人も鍼灸師に向いていない可能性があります。

鍼灸師は、人の体の不調を取り除く治療を行う役割を担っています。人の役に立ちたいという強い気持ちを持たないと、ストレスが溜まっていく一方で上手く稼ぐのは難しいでしょう。

そして、1ミリ未満の鍼を使って患者さんの症状に合わせてピンポイントにアプローチしなければいけないので、手先が不器用すぎるのも鍼灸師として稼ぐには致命的な欠点と言えます。

 

鍼灸師で年収・給与を上げるポイント

鍼灸師で収入アップを目指すためには、下記のポイントを意識することが大切です。

  • 美容領域・高齢者向けなど特化したスキルを習得する
  • 関連領域の資格を取得する
  • 独立開業する

鍼灸師は、常に自己研鑽を求められる職業です。今の自分の施術スキルに満足せず、関連資格を取得して治療できる分野を広げていければ、独立開業して高収入を得るきっかけにつながります。

年収を上げるポイントをそれぞれ詳しく解説するので、鍼灸師としてたくさん稼ぎたい人はぜひご覧ください。
 

美容領域・高齢者向けなど特化したスキルを習得する

鍼灸師として年収を上げるためには、特定の分野に特化したスキルを習得することが非常に有効です。

特定の分野のスキルを習得すれば、他の鍼灸師との差別化が図れ、多くの顧客を獲得できます。

専門性の高いスキルを持つ鍼灸師は、より好条件の職場に転職できたり、独立開業が容易になったり、収入面でのメリットも大きいです。

鍼灸師として、これから専門性のあるスキルを習得したい時におすすめの分野は「美容鍼灸」と「高齢者向けの鍼灸治療」の2つです。

美容鍼灸は、美容を目的とした鍼灸治療を指し、主に顔に鍼治療を行うことで肌そのものが持つ本来の力を呼び起こし、年齢による肌トラブルを軽減する効果が期待できます。男女を問わず美容に関心の高い人が増えている昨今、美容領域のスキルを持つ鍼灸師の需要が高いです。

また、高齢者向けの鍼灸治療もニーズのある分野です。高齢化社会が進む中で、痛みの緩和や体調管理を目的とした鍼灸治療は高齢者にとって重要な役割を担います。

高齢者向けの特化したスキルを身につけられれば、治療院はもちろん、介護施設や福祉施設など就職先の選択肢が広がり、独立後も一定数の顧客を確保しやすくなるメリットがあります。
 

関連領域の資格を取得する

鍼灸の関連領域の資格を取得するのも、年収を上げる方法の一つです。

はり師、きゅう師の資格以外にも多様な技術と知識を習得しておけば、顧客に対してより価値のあるサービスを提供できるようになり、結果的に自身の収入アップにつながります。また、独立開業を目指す際にも大いに役立ちます。

鍼灸師の年収を上げやすい関連資格は、「柔道整復師」「あん摩指圧マッサージ」の2つです。

どちらも国家資格であるものの、はり・きゅうと同じく東洋医学の領域であるため、西洋医学の国家資格と比べると取得しやすい資格です。なお、治療院の多くは、Wライセンスを持つ鍼灸師に対して、別途手当を支給する傾向があります。

鍼灸師として美容領域のサービスを提供したいのであれば、「アロマセラピー」「エステティシャン」といった美容系の資格も取得するのもおすすめです。どちらも働きながらスクールに通いやすく、きちんと勉強すれば取得する難易度はそこまで高くありません。

美容鍼灸以外にも美容に特化したスキルを習得すれば、ターゲット層に対してより総合的なサービスを提供できます。

関連領域の資格を取得することは、鍼灸師としてのキャリアアップや収入増加に直結します。

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独立開業する

鍼灸師としての年収を大幅に引き上げたいなら、独立開業も視野に入れましょう。

はり師・きゅう師の資格取得者は、治療院の開業が認められています。自分のお店を開くことで利益がすべて自分の懐に入るので、一定数の顧客を確保できれば年収1,000万円も夢ではありません。

しかし、独立開業にはいくつかの要件をクリアして準備を整えたうえで、店舗を構える住所の都道府県知事へ届け出を出す必要があります。

独立開業する要件は、まず店舗に関する以下の規定が存在します。

  • 構造設備基準をクリアした施術室の待合室が配置できる物件であること
  • 施術に使用する器具、消毒機材、手洗い場、施術台など衛生管理を徹底できる環境であること

また、鍼灸保険を用いた保険施術を行う場合、施術管理者の資格が必要です。施術管理者になる条件として、「1年以上の実務経験」と「施術管理者研修の受講」があります。

さらに、独立開業はマーケティングや経営の知識も必要です。経営を安定させるためには、顧客のニーズを理解し、適切なサービスを提供できるかどうかが重要と言えます。

独立開業は、鍼灸師としてのキャリアを大きく飛躍させるチャンスです。入念に準備を進めていき、マーケティングが上手くいけば、高い収入を得られる可能性があります。

 

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医療技術職にあたる鍼灸師は、このような特化型の転職サービスを利用するのがおすすめです。

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また、自分の代わりに企業と給与や待遇といった条件面の交渉をしてくれる転職エージェントも存在するので、自身の負担を減らしながら転職活動を行えるのも魅力です。

 

鍼灸師以外だと未経験でも年収1,000万円を目指せるナイト系もおすすめ!

鍼灸師として収入を上げるためには、施術に役立つ資格を取得したり、美容鍼灸をはじめ世間のニーズに合ったスキルを取得したりしながら、独立開業を目指す方法があります。

膨大な時間と労力はかかりますが、結果として安定した高収入を得ることが可能です。

しかし、さらに手っ取り早く高収入を得たいと考えている人は、ナイト系の仕事も検討しましょう。

ナイト系は、実力主義の業界であり、成果を上げれば上げるほど収入に直結しやすいのが特徴です。そのため、頑張り次第で未経験からでも年収1,000万円を目指せます。

また、ナイト系は、店舗スタッフや送迎ドライバーなどさまざまな職種があり、自分の適正に合った仕事が見つかりやすいのも魅力です。

ナイト系の求人は、高校生を除く18歳以上であれば学歴や職歴を問わず応募可能なので、気になる人はチャレンジしてみてください。

 

鍼灸師で稼ぐには専門的なスキルや資格の取得、独立開業が重要!

鍼灸師として年収アップを目指すためには、下記のポイントを意識するのが大切です。

  • 美容領域・高齢者向けなど特化したスキルを習得する
  • 関連領域の資格を取得する
  • 独立開業する

需要の高い専門的なスキルを身につけたり資格を取得したりして、自己研鑽を怠らないことが稼ぐうえで重要なポイントです。

さらに、独立開業して自分のお店を持てば、利益がすべて自分の収入となりさらなる年収アップを狙えます。そのためには、施術スキルの向上にくわえ、経営の知識やマーケティングスキルの習得も必要です。

  • ぜひ、本記事を参考に鍼灸師として年収アップを目指してみましょう!

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著者情報

シュウジ
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兵庫県生まれ。都内の私立大学卒業後、パチンコにハマって単位を落とすも、一浪して大学を卒業。派遣社員として工場で働きながら、副業としてナイト系ドライバーやせどりを始める。
本業に嫌気がさし、転職を決意し資格取得に励む。奇跡的に大手人材会社に入社し、給料が倍になり人生が変わる。人材業界でさまざまな職業や経歴を持つ人々との交流を通じて知識を蓄え、2023年にブログ「仕事図鑑」を開設。