「研究者」と聞くと、年収が高いイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。
しかし、実際に研究者になったものの、思ったより稼げていないと悩んでいる方もいます。
本記事では、研究者の年収を年齢別や性別、地域別などに分けて解説しているほか、稼げる人と稼げない人の特徴、稼げていない研究者に向けて年収アップのコツもご紹介しています。
研究者で年収の高い職種ランキングや年収アップにつながる求人の探し方も取り上げているので、ぜひ参考にしてみてください。
研究者は稼げない仕事なのか?
研究者の平均年収は704万円になり、給与所得者の平均年収458万円を大幅に上回っています。
(※令和4年賃金構造基本統計調査をもとに、月給44.9万円、年間賞与165万円で算出)
勤続年数が22歳から定年の60歳までの38年間と仮定して単純計算をし、大学卒業後に研究者として同一の企業に勤務し続けた場合の生涯年収は、約2億6,752万円です。
研究者の年収がピークを迎えるのは55歳~59歳で、年収は972.51万円となります。また、研究者全体の月収別の人数割合は、40.0~44.9万円が最も高い割合を占める結果が出ています。
日本全国の平均年収の458万円と比べると246万円も上回るうえ、ピーク時には年収1000万弱まで上がることから、年収のみで見るなら研究職が稼げない仕事とは言えません。
これだけ年収が平均より高い竜として、専門性が高いことや、就職は学歴重視であることが挙げられます。
研究職に就く場合、大卒もしくは院卒が基本となるうえ、国内でもトップクラスの大学や大学院を卒業している優秀な人材ばかりなため狭き門です。また、高いレベルの知識やスキルを求められるため、誰でも目指せる職業ではありません。
こういった就職に至るまでの難易度や負担に対して、平均年収704万円は低い、稼げないという見方もできます。
職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「薬学研究者」(参照 2024-04-08)
研究者の収入内訳
企業に勤める研究者の収入は、一般職種と同じように「基本給+賞与+諸手当」で構成されています。
基本給には年齢や実績、最終学歴、専攻分野などが影響するため、高学歴の人や実績のある人ほど基本給が高い傾向にあります。さらに、語学スキルや海外勤務の経験も昇給の評価につながるのが特徴です。
また、賞与は年2回程度支給される企業も多く、諸手当には通勤手当や時間外手当、引越し手当、家族手当、住宅手当などが含まれます。なお、賞与の有無や支給回数、諸手当の内訳は企業によって異なるので、就職先の給与条件を必ず確認しておきましょう。
特に、年2回程度支給される賞与は、会社の業績や自身の成果によって大きく左右されます。研究者として年収を上げていくなら、いかに賞与額が多い企業に就職できるかどうかが重要です。
そして、会社に貢献できるほどの研究実績数を増やせば、おのずと知名度も高くなっていきます。
研究者としての知名度が上がることで、教育機関や団体での講演依頼が舞い込み、講演料や講師料といった副収入も得られる可能性もあるのです。
【年齢別】研究者の平均年収
研究者の平均年収は年齢を重ねるごとに増加し、55歳~59歳でピークを迎えます。
年齢 | 平均年収 |
---|---|
20~24歳 | 約343.27万円 |
25~29歳 | 約486.42万円 |
30~34歳 | 約580.77万円 |
35~39歳 | 約678.83万円 |
40~44歳 | 約770.64万円 |
45~49歳 | 約839.36万円 |
50~54歳 | 約878.98万円 |
55~59歳 | 約978.51万円 |
20~24歳は研究者として働き始めて間もなく、経験も実績もないことから平均年収は約343.27万円と低めです。年齢とともに実務経験を積み重ね、スキルや専門性を向上できればどんどん昇給していき、年収も大幅にアップしていきます。
また、20代・30代と40代以上とでは年収の増加幅に違いがあるものの、年齢が5歳上がるごとに年収が約100万円程度上がる傾向にあります。
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研究者は長く働き続けるほど高収入が期待できる職業です。
【性別】研究者の平均年収
研究者の平均年収は、男女で大きく差が開いているのが実情です。
なお、男女別の平均年収は「(きまって支給する現金給与額×12カ月)+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。
性別 | 平均年収 (千円) | きまって支給する現金給与額 (千円) | 年間賞与その他特別給与額 (千円) |
---|---|---|---|
男女計 | 7039.4 | 449.1 | 1650.2 |
男性 | 7491.7 | 473.8 | 1806.1 |
女性 | 5746.6 | 378.5 | 1204.6 |
全職種の給与所得者の平均年収が458万円である点を踏まえると、研究者の平均年収は男女ともに高いです。しかし、男性の研究者の平均年収は約749万円、女性の研究者の平均年収は約575万円となり、男女間で150万円以上の年収差があります。
男女の年収差が大きい理由として、女性が結婚や出産などによってキャリアが一度途絶えてしまうことが考えられます。また、日本において研究者として活躍する女性の割合が低いという実情も、男女間による年収差に大きく影響しているでしょう。
【地域別】研究者の平均年収
研究者の平均年収は、地域それぞれの経済状況や市場の需要などによっても異なる傾向にあります。
東京都と政令指定都市のある道府県の平均年収を比較すると、以下の通りです。
都道府県 | 平均年収 |
---|---|
北海道 | 623.9万円 |
宮城県 | 601.9万円 |
東京都 | 766万円 |
埼玉県 | 667.7万円 |
千葉県 | 701.1万円 |
神奈川県 | 803.4万円 |
新潟県 | 628.3万円 |
静岡県 | 728.3万円 |
愛知県 | 615.2万円 |
京都府 | 655.8万円 |
大阪府 | 577.8万円 |
兵庫県 | 643.2万円 |
岡山県 | 565.8万円 |
広島県 | 681万円 |
福岡県 | 631.6万円 |
熊本県 | 722万円 |
研究者の平均年収が最も高い県が神奈川県の803.4万円、最も低い県が岡山県の565.8万円です。その収入差は237.6万円とかなりの開きがあり、地域によって稼ぎやすさに違いがあることが分かります。
研究者として年収アップを目指すのであれば、できるだけ平均年収が高い地域で働くことも視野に入れておきましょう。
とは言え、どの地域も給与所得者の平均年収458万円を大きく上回っているので、就職先の地域を問わず平均以上の高収入を得られる可能性が高いです。
研究者で年収の高い職種ランキング
研究者といっても、さまざまな職種が存在します。研究者で年収の高い職種をランキングにすると、以下の通りです。
順位 | 職種名 | 平均年収 |
---|---|---|
1位 | 薬学研究者 | 703.9万円 |
1位 | 医学研究者 | 703.9万円 |
1位 | 情報工学研究者 | 703.9万円 |
1位 | バイオテクノロジー研究者 | 703.9万円 |
1位 | 土木・建築工学研究者 | 703.9万円 |
2位 | 宇宙開発技術者 | 557.5万円 |
2位 | データサイエンティスト | 557.5万円 |
2位 | 植物工場研究開発者 | 557.5万円 |
薬学研究者や医学研究者、情報工学研究者、バイオテクノロジー研究者、土木・建築工学研究者は約704万円と最も高いです。次いで、宇宙開発技術者やデータサイエンティスト、植物工場研究開発者が約558万円という結果が出ています。
1位の職種と2位の職種の収入差は約146万円と、同じ研究者でありながら年収差が大きいです。
研究者として多く稼ぎたいのであれば、平均年収が高い傾向にある職種に就職するのも一つの手です。
研究者で稼げる人・稼げない人
研究者は専門性の高い仕事であるだけに、専門的な知識やスキルが必要です。
研究者に必要な能力は以下の通りです。
- 論理的思考力
- コミュニケーション能力
- 集中力
以上を踏まえて、研究者で稼げる人・稼げない人の特徴を挙げてみました。
研究者で稼げる人 | 研究者で稼げない人 |
---|---|
向上心がある人 | 語学勉強に興味がない人 |
失敗を恐れない人 | 挑戦意欲を持てない人 |
執筆が好きな人 | 地道な作業が苦手な人 |
人前で話すことに抵抗がない人 | ロジカルシンキングが苦手な人 |
研究者として稼ぐためには、データサイエンスやAIといった高度な知識が求められる分野で活躍したり、語学スキルを習得して海外を拠点に活躍したりして、特定の分野やスキルを絞って鍛錬し続けなければいけません。
そのため、研究者は常に学び続ける必要があり、向上心を持って勉強や研究に励むのが大切です。
また、研究に失敗はつきものです。成功するために失敗を繰り返し、原因を探って検証しながら大きな成果を上げていくことが求められます。失敗を恐れ原因と向き合えない人は、なかなか良い結果が出せず、思ったより収入が得られない可能性があります。
そして、論理的に物事を考えることも稼げる研究者にとってなくてはならないスキルです。
研究者は、1つの研究テーマに対して、問題や課題を見つけて原因を分析し、「なぜこうなったのか」を突き詰めるのが大前提の仕事なので、ロジカルシンキングに苦手意識がある人には難しい仕事です。
なお、研究者として生活するうえで、学会での論文発表は避けられません。とある研究者は約20年で70本以上の論文を作成していると言われています。
職種や研究テーマにもよるものの、特に若手の研究者は論文の中身より本数の多さが研究実績に認められる傾向にあるので、執筆したり人前で話したりするのに抵抗がない人は活躍できるでしょう。
研究者で年収・給与を上げるポイント
ここからは、研究者で年収・給与を上げるためのポイントを解説します。
- データサイエンスやAIを専門分野にする
- 年収の高い企業に転職する
- 語学力を高める
- 研究実績を立てる
研究者の場合、就職先の企業の業績や研究分野によって、年収が大きく異なります。
もちろん、すでに研究職に就いている方も収入を上げる方法もいくつかあるので、4つのポイントについて具体的に説明していきます。
ポイント1:データサイエンスやAIを専門分野にする
これから研究職を目指すのであれば、データサイエンスやAIといった今後需要が高まっていくことが想定される分野を専攻するのがおすすめです。
IT技術の急速な発展に伴い、データサイエンスやAIといった世界最先端の技術は非常に需要が高く、注目を浴びている分野となります。
しかし、データサイエンスやAIの分野は、他の分野より人手不足の傾向にあります。
特にデータサイエンスの場合、専門知識はもちろん、ビジネスや市場のトレンドを把握しておく必要があり、さらに問題点の打開策を提案できるセンスも求められるため、すべてのスキルを持つ人材が少ないのが現実です。
このように、高い専門性が求められ、なおかつニーズの高さによって今後年収アップが期待できるデータサイエンスやAIは、まさに狙い目の分野と言えます。
ポイント2:年収の高い企業に転職する
すでに研究者として働いている方は、年収の高い企業に転職する方法も有効です。
一人でも多くの優秀な研究者を確保すべく、ほとんどの企業で給与水準を高めに設定しています。
世界レベルの実績を誇る大企業に転職できれば、年収1,000万円を稼ぐのも夢ではないでしょう。
年収の高い企業を見つけるコツは、今後も需要が見込める業界・分野から求人を探していくことです。
研究者は、基本的に数年先に活用される技術を開発・構築する役割を担っています。そのため、数十年先でも一定のニーズがある分野の研究職に就かないと、大幅な年収アップが難しくなる可能性があるのです。
需要の伸びが予想される業界や分野は多数あります。
需要の伸びが予想される業界・分野
- データサイエンス
- AI
- IT
- エネルギー
- 製薬
しかし、研究職において需要の高い業界・分野や規模の大きい企業への転職はかなり難しいです。
研究職の求人数は少ないのにくわえて、大学や大学院で特定の分野を学んでいることを採用条件に設ける企業が多く、応募すらできないケースも珍しくありません。
さらに、職務経験も重視される傾向にあり、たとえ研究実績があったとしても応募先の企業の分野とかけ離れていれば、不採用のリスクも高まります。
そのため、自分で培ってきた知識やスキル、研究実績が活かせる企業に応募できるかどうかが、転職活動を成功させるコツと言えます。
ポイント3:語学力を高める
語学力を高めることも、研究者の年収を上げる重要なポイントです。
研究者は、勤務先によって海外を拠点とする企業や研究所とやりとりをするケースもあります。
また、研究者の業務は、海外の学会に参加したり、海外の論文を読んだり、外国語を習得しないと業務に支障が出る場面が多数あるのも特徴です。このように、語学力があれば日本国内に留まらずグローバルに活躍できるため、仕事の幅が広がります。
そして、高い語学力を持つ研究者は、海外赴任やその他高い語学スキルが必要な業務も担える貴重な存在で、企業にとって給与を高くしてでも欲しい人材です。多くの企業から求められる研究者になるためにも、積極的に語学力を高めていきましょう。
稼げる研究者になるうえで語学力を高めたい場合、世界共通語の英語力の向上は必須です。特に、科学技術の分野は英語が共通言語であることから、近年は「TOEIC600点以上」を条件に定める企業が増えています。
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将来海外勤務を視野に入れている方は、英語を中心に語学の習得に力を入れておくのがおすすめです。
テクノロジストマガジン「研究者に必要な英語力は?採用で有利になる勉強法も」(参照 2024-04-17)
ポイント4:研究実績を立てる
研究者の年収・給与に大きく影響を与えるのは、研究実績です。研究実績は、自身の能力やスキルを客観的に示す重要な指標になります。
また、他機関との共同研究実績があれば、他の研究者とコミュニケーションをとりながら柔軟な発想ができると評価され、収入が上がる可能性が高いです。
研究者の就職先は、民間企業以外にも、大学・大学院の研究室、地方公共団体・省庁の研究所などいろいろあります。どの機関においても、いかに多くの研究実績を立てられるかどうかが、年収を上げていくうえで重要なポイントになります。
特に大学・大学院の研究室は、ポストが空かない限り教授・准教授といった役職に就くのは難しいのが現状で、キャリアアップのチャンスが掴めるように研究実績を増やしておかなければいけません。
ちなみに、研究費は大学・大学院から支給されるのにくわえて、研究内容や成果に応じて補助金が支給される「競争的資金」を獲得する流れが一般的です。研究実績は、十分な研究費を稼ぐ手段としても必要不可欠な要素と言えます。
民間企業で働く場合、資格を取得することで支給手当が支給されたりインセンティブがついたりするケースがほとんどで、研究実績とは異なる形で収入アップが狙えます。年収アップやスキルアップのためにおすすめの資格をご紹介するので、研究者として長く活躍したい方はぜひ取得を検討してみてください。
参考
・TOEIC(600点以上)
・QC検定
・弁理士
・知的財産管理技能検定
・危険物取扱者
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研究者で稼ぐには専門分野や語学力などが重要!
研究者は、他の職種と比べて稼ぎやすい職業と言われています。
実際に、日本の給与所得者の平均年収より研究者の平均年収のほうが高い傾向にあります。
しかし、研究実績や携わる分野などによって年収は大きく異なるため、年収アップにつながる取り組みを積極的に行うことが重要です。
最後に、研究者が収入アップを目指すポイントをまとめました。
ポイント
・データサイエンスやAIを専門分野にする
・年収の高い企業に転職する
・語学力を高める
・研究実績を立てる
上記のポイントを押さえて、研究者としてどの業界・分野で働くかを検討し、スキルアップをはかりながら年収アップを目指しましょう。