大工は、主に設計図をもとに建物を建築したり修繕を行ったりする仕事で、建物を立てるうえで欠かせない存在です。大工になるために必要な資格はなく、未経験を歓迎する求人も豊富です。
この記事ではそんな大工の年収に焦点を当て、年齢、性別、地域別の平均年収をご紹介しています。
また、稼げる大工と稼げない大工の特徴、そして収入を向上させるための実践方法まで、幅広く解説していきます。
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これから大工としてキャリアを積んだり収入アップを目指したい方にとってためになる内容なので、ぜひご覧ください。
大工の平均年収は406万円
「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、大工の平均年収は約406万円です。
※「(平均月給が30.7万円×12カ月)+年間賞与約37.5万円」で算出
この平均年収をもとに生涯収入を算出すると、大工の生涯年収は約1億5428万円です。
※大学卒業後の22歳から定年退職の平均年齢にあたる60歳まで、同一の企業に38年間勤務し続けた場合
年齢が上がるにつれて平均年収も上がる傾向にあり、40~44歳になると平均年収は約536万円とピークに達します。
とは言え、大工は勤務地、経験、スキルによって収入が左右されやすい職業なので、必ずしもここで紹介した年収が得られるとは限らない点に注意してください。
参考: e-State政府統計の総合窓口「職種(小分類)性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」(参照 2024-2-28) 職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「大工」(参照 2024-2-28) |
大工の収入内訳
大工の収入内訳は、「基本給+賞与+諸手当」で構成されています。
大工を募集する企業で支給される主な手当は以下の通りです。
- 通勤手当
- 時間外手当
- 資格手当
- 家族手当
資格手当の支給対象となる資格は、「建築大工技能士」「木造建築士」「一級建築士」などいろいろあります。各資格の詳細については、後ほど解説します。
手当の数は、企業によって異なるので、収入アップを狙うのであれば、諸手当を多く支給する企業に就職するのがおすすめです。
【年齢別】大工の平均年収
大工の平均年収を年代別で見てみると、一定の年齢までは徐々に年収が高くなる傾向にあります。
年齢 |
平均年収 |
~19歳 |
209.82万円 |
20~24歳 |
349.69万円 |
25~29歳 |
404.64万円 |
30~34歳 |
467.06万円 |
35~39歳 |
513.21万円 |
40~44歳 |
536.05万円 |
45~49歳 |
508.36万円 |
50~54歳 |
360.97万円 |
55~59歳 |
413.97万円 |
40~44歳頃の平均年収は約536万円と全体のピークに達する一方で、45歳以降になると徐々に年収が減少していきます。これは、年齢を重ねることで体力が落ちていき、若い頃に比べて請け負える仕事が減ってしまう点が原因だと考えられます。
そのため、大工の仕事に就く際は、年齢を問わずずっと同じ働き方ができるとは限らないことを念頭に置いて、自分の将来設計を立てていきましょう。
【性別】大工の平均年収
大工の平均年収を性別ごとに見てみると、女性より男性の方が平均年収が高いことが分かります。
男女別の平均年収は、「令和3年賃金構造基本統計調査」を参考に、「(きまって支給する現金給与額×12カ月)+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。
性別 |
平均年収 (千円) |
きまって支給する現金給与額 (千円) |
年間賞与その他特別給与額 (千円) |
男女計 |
4.055.4 |
313.3 |
295.8 |
男 |
4.128.5 |
318.3 |
308.9 |
女 |
2.807.3 |
227.8 |
73.7 |
男性と女性の収入差は、約130万以上とかなりの差が開いています。
国土交通省補助事業が平成30年度に公開した「大工・職人の実態に関するアンケート調査報告書」によると、大工人口の男女比は「男90.4%、女7.7%(無回答2.0%)」と男性の比率が圧倒的に高いです。男性中心の業界である点を踏まえると、性別による収入格差は致し方ない部分もあるかもしれません。
とは言え、大工をするうえで必要な専門的な知識や技術を積極的に習得すれば、性別を問わず活躍の場を広げていける職業なので、自分の頑張り次第で平均年収以上の収入を得ることも可能です。
参考:国土交通省補助事業「平成30年度大工・職人の実態に関するアンケート調査報告書」(参照 2024-03-07) |
【地域別】大工の平均年収
大工の収入水準は、地域それぞれの経済状況や市場の需要などに応じて異なる傾向にあります。
東京都と政令指定都市のある道府県の平均年収を比較した表は、以下の通りです。
都道府県 |
平均年収 |
北海道 |
360.6万円 |
宮城県 |
343.5万円 |
東京都 |
559.7万円 |
埼玉県 |
464.3万円 |
千葉県 |
425.7万円 |
神奈川県 |
509.9万円 |
新潟県 |
415.8万円 |
静岡県 |
520.3万円 |
愛知県 |
280.8万円 |
京都府 |
407.4万円 |
大阪府 |
787.4万円 |
兵庫県 |
384.5万円 |
岡山県 |
415.5万円 |
広島県 |
361.6万円 |
福岡県 |
217.5万円 |
熊本県 |
409万円 |
大工の平均年収が最も高い大阪府が787.4万円、最も低い福岡県が217.5万円です。年収の差は約570万円とかなり開いているので、年収アップを狙うのであれば、勤務先のエリアはとても重要です。
また、多くの職業は、地方都市より大都市部のほうが平均年収が高い傾向にあります。しかし、大工の場合、大都市部にあたる愛知県の平均年収が約280万円、政令指定都市を持つ道府県の中で人口数が少ない熊本県の平均年収が409万円であることを踏まえると、都市部の規模の大きさと年収の高さは決して比例しないのが分かります。
大工の平均年収が低いと言われる理由
大工の平均年収は、日本人全体の平均年収と比較するとやや低めです。この背景には、以下の理由が考えられます。
- 日給制の場合、悪天候の日は仕事が休みで給料が発生しないケースもあるから
- 企業に属していない場合、怪我をすると無収入になるから
- 年功序列によって収入が左右されるわけではないから
まず、大工は雇用形態を問わず、出勤した日数分を給与として支給される日給制を採用する企業が多いです。そのため、悪天候によって作業ができなかった日は、仕事が休みになって給料が発生しないこともあります。梅雨や真冬の大雪など悪天候が続く時期になれば、稼げない日が続いて収入が下がってしまいます。
また、大工は業界全体で独立を目指す人の割合が高く、一人親方として個人で仕事を請け負うケースも多いです。個人事業主として働く場合、万が一怪我を負って仕事ができなくなってしまうと、無収入になる恐れがあります。一人親方向けの労災保険に加入すれば、休業による補償が受けられるものの、収入の減少は避けられません。
さらに、大工の仕事は、年功序列による収入アップが期待できないデメリットもあります。高い技術力や経験の積み重ね、さらには建築現場での立場によって収入が大きく変わるため、年齢の高さや勤続年数の長さが必ずしも収入に良い影響を与えるとは限らないのです。
そのうえ一人親方の場合、いくら技術を磨いたとしても建築市場の景気が良くならない限り、受注できる案件の数は増えない傾向にあり、受け取れる報酬額の相場もほぼ変わりません。むしろ、近年は建設会社などが参入したことで価格競争が激化して、報酬額が下がりつつあります。
このように、大工は収入面で不安定になる要素が多いことから、他の職業と比べて平均年収が低くなりがちです。
大工で稼げる人・稼げない人
大工として稼げる人と稼げない人には、はっきりとした特徴があります。
前提として、大工として稼げる人になるためには、以下のような能力が求められます。
- 大工の道具を適切に扱い設計書通りに建築をするための「技術力」
- 時間をかけて技術を習得するための「忍耐力」
- 建築士や他の職人と協力して作業を進めるための「コミュニケーション能力」
- 納期内に作業を終わらせるための「スケジュール管理能力」
これらの能力を参考に、大工で稼げる人・稼げない人の特徴を以下の通りにまとめてみました。
大工で稼げる人 |
大工で稼げない人 |
体力がある人 |
会話のキャッチボールが苦手な人 |
仕事が丁寧な人 |
仕事が大雑把な人 |
粘り強く技術研鑽できる人 |
コツコツとした作業が苦手な人 |
作業にかかる時間を把握できている人 |
時間を気にせずだらだらと行動してしまう人 |
大工として稼ぐための重要な要素は、ずばり「技術力」です。技術を磨く努力を根気強く行うのはもちろん、一つひとつの作業に対して丁寧に取り組むことも技術力の向上につながります。
また、天候や気温に左右されず材木をはじめ重たいものを運んだり、高い所に登ったりする必要もあるので、体力がある人も大工に向いています。
さらに、建築現場では、建築士や他の職人さんと協力しながら円滑に作業を進めるためのコミュニケーションも欠かせません。自分の考えに固執しすぎずに協調性を重んじることも、稼げる大工になる大切なポイントです。
これらの特徴を持ち合わせたうえでスケジュール管理能力に長けた人は、大工として活躍できるチャンスが高いです。たとえば、100万円の仕事を受注した時、2カ月かけてだらだら行うより、段取りよくスケジュールを立てて1カ月で終わらせたほうがより多く稼げます。
つまり、大工として高収入を得るためには、技術力はもちろん、頭の良さも求められる職業なのです。
大工で年収・給与を上げるポイント
大工として年収・給与を上げるにはどのような工夫をしていけば良いのでしょうか?
それには下記のようなポイントがあります。
- 幅広いスキルを持つ
- 建築に関する資格を取得する
- 独立開業する
ここからは大工としてより高収入を目指すため、上記のポイントについて詳しく解説をしていきます。
年収アップをしたい方は、ぜひ参考にご覧ください。
幅広いスキルを持つ
大工として年収を上げるためには、多様なスキルを身につけることが非常に重要です。
建築の現場は多岐にわたります。たとえば、マンション、リフォーム工事、一軒家、アパートなど、それぞれに特有の建築方法や必要とされる技術が存在します。
さまざまなジャンルの建築物に対応できるスキルを身につけることで、より多くの案件を受注しやすくなり、年収アップにもつながります。
また、大工は「精密な作業を行うための技術力」「技術力を上げるための忍耐力」「建築士や他の職人と協力して建築していくためのコミュニケーション能力」「スケジュール管理能力」など、さまざまなスキルが求められる職業です。
幅広いスキルを習得して大工としての自分の価値を高められれば、たとえ建築業界が不況に陥ったとしても安定した収入を得られるようになります。
建築に関する資格を取得する
大工の年収アップに効果的なポイントは、建築関連の資格を取得することです。大工は特別な資格がなくても働ける職業ですが、他の大工より多く稼ぎたいのであれば、高額な案件を受注できるように資格を取得していきましょう。
たとえば、「建築大工技能士」は、大工としての基本的な技術と知識が一定水準に達している証明になる資格です。
また、「木造建築士」は、木造建築物の設計や施工に関する専門的な能力を持つ人材であることを示し、特に日本のように木造建築が多い国で需要が高い資格です。
さらに、「一級建築士」の資格を持っていれば、建築物の設計から監理まで幅広い業務を担当できるため、大きなプロジェクトに携わるチャンスが増えます。
このように、建築関係の資格を取得して自身の専門的なスキルが高まれば高まるほど、顧客からの信頼度も上がっていくので、より高単価の案件を獲得するチャンスが高まります。
資格取得には一定の努力と時間が必要ですが、その投資が大工としてのキャリアと収入の大きな飛躍につながります。
独立開業する
大工として収入を増やす手早い方法は、独立開業することです。独立して一人親方になれば、受注する仕事の種類や規模を自由に決められるため、自分の頑張り次第で企業に属するより高い収入が得られます。
しかし、独立開業して収入を上げるためには、高い技術力や豊富な実績はもちろんのこと、取引先も確保しておく必要があります。技術力や実績が低く取引先もいない状態で独立しても、仕事がもらえず収入も不安定のままです。
このように、独立開業は大きなリスクを伴いますが、段階を踏んで準備を整えておけば、大工として理想のキャリアが築けます。
また、独立開業の手段として、工務店を立ち上げて住宅建設やリフォーム全般を請け負う方法もあります。とび職や足場職人など各建設系の分野の職人を雇って複数の部下や弟子を抱えていくことで、より大規模な建築や工事を行えるのがメリットです。
その分、一人親方になるよりお金がかかったり、経営者としてのスキルも問われたりするものの、経営が安定すれば大幅な年収アップを狙えます。
どちらにせよ、大工が独立開業して稼ぐためには、まず経験を積みながらスキルを磨いて、適切なタイミングで独立できるように準備を進めていくのが大切です。
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大工以外だと、未経験でも年収1000万円を目指せるナイト系もおすすめ!
大工の年収は、日本人全体の平均年収と比較してやや低めです。
建設業界では、独立しない限り年収の大幅アップが難しく、独立するためには建築技術の向上や経験の積み重ねはもちろんのこと、独立に必要な知識も深める必要があります。大工で稼げるようになるにはかなりの時間と努力を要するので、いち早く収入を上げたい方には難しい職業かもしれません。
しかし、ナイト系の仕事であれば、特別なスキルがなくても未経験から高年収を目指せます。
ナイト系の職種は、原則として18歳以上であれば高校生を除き、学歴や職歴不問で誰でも応募可能です。また、結果さえ出せれば、短期間で昇給・昇格のチャンスもあるので、自分の頑張り次第で年収1000万円を目指せます。
さらに、ナイト系は、体力仕事かつ他のスタッフやお客さんとコミュニケーションを取る場面も多く、大工で培ったスキルを活かしやすい業務ばかりなので、転職を検討している現役大工の方にもおすすめです。実際に、大工をはじめガテン系職業からナイト系に転職して成功している人はたくさんいます!
「もっと早く稼げる仕事を探している」「大工としてのスキルを活かしたい」という方は、ぜひナイト系も選択肢の一つとして検討してみてください。
大工で稼ぐにはスキルアップとキャリアアップが重要!
大工の平均年収は、他職種に比べて低めです。しかし、順を追ってスキルやキャリアを築いていければ、さらなる高収入を目指せます。
大工として稼ぎたい方は、以下の3つのポイントを押さえましょう。
- 幅広いスキルを持つ
- 建築に関する資格を取得する
- 独立開業する
この場合の「幅広いスキル」は、以下の能力を指しています。
- 大工の道具を適切に扱い設計書通りに建築をするための「技術力」
- 時間をかけて技術を習得するための「忍耐力」
- 建築士や他の職人と協力して作業を進めるための「コミュニケーション能力」
- 納期内に作業を終わらせるための「スケジュール管理能力」
また、さまざまなジャンルの建築物に対応できるスキルも習得することも、大工が収入アップするうえで大切なポイントです。
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今回の記事を参考にしながら、大工として理想の年収に近づけられるように取り組んでいきましょう!