管理栄養士は、栄養学や食品学に基づいた専門知識やスキルを持ち、人々の健康維持や病気の予防・治療を目的として食事の管理や栄養指導を行う専門職です。
この記事では、管理栄養士の平均年収や、稼げる人と稼げない人の違い、さらに年収をアップさせるための具体的な方法について詳しく解説します。
「管理栄養士として収入を増やすにはどうすれば良いのか」「どのようなスキルや資格が収入アップにつながるのか」など、管理栄養士として収入を上げたい人が知りたい情報が満載です。
管理栄養士の平均年収は379万円
管理栄養士の平均年収は、約379万円です。
※「令和4年賃金構造基本統計調査」に掲載された「栄養士」をもとに、月給が約26.4万円、年間賞与が約62.0万円で算出
大学卒業後の22歳から60歳まで38年間、同一企業に勤め続けた場合、生涯年収は約1億4,402364万円になります。
管理栄養士の年収が最も高くなるのは55~59歳の間で、約484万円です。
なお、この数字は「栄養士」の収入も含まれており、管理栄養士のみの年収ではないので、参考程度にご覧ください。
- 栄養士と管理栄養士の違い
- 栄養士 :主に健康な人を対象に栄養指導や給食の献立作成・調理を行う
管理栄養士:主に病を患っている方や高齢者など食事のサポートが必要な方を対象に、食事の管理や栄養指導を行う
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これらの数字は、管理栄養士としてのキャリアプランを立てるうえで重要なポイントとなるので、ぜひ頭に入れておいてください。
参考:職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「栄養士」(参照 2024-3-1) |
管理栄養士の収入内訳
管理栄養士の収入内訳は「基本給+賞与+諸手当」で、一般企業とほぼ同じ構成です。
管理栄養士は国家資格にあたるため、多くの企業では「資格手当」が付きます。資格手当の相場は約5,000~1万円で、栄養士の資格手当の約2倍の金額が支給されるのが一般的です。
また、食品を中心に扱う企業の場合、調理現場の衛生管理を担う管理栄養士を対象に「衛生管理者手当」を支給するケースもあります。
他にも、「通勤手当」「時間外手当」「家族手当」「役職手当」といった手当も支給されます。
特に、管理職への昇進で支給される役職手当は、大幅な収入アップにつながりやすい手当です。役職付きの管理栄養士は各業務において責任が重くなるものの、その分給与に反映されやすいメリットがあります。
【年齢別】管理栄養士の平均年収
管理栄養士の平均年収は、年齢に応じて徐々に増えていく傾向にあります。
年齢 |
平均年収 |
20~24歳 |
292.38万円 |
25~29歳 |
346.54万円 |
30~34歳 |
360.67万円 |
35~39歳 |
389.73万円 |
40~44歳 |
390.71万円 |
45~49歳 |
436.92万円 |
50~54歳 |
421.22万円 |
55~59歳 |
484.17万円 |
経験が少ない20~24歳の時点では、平均年収が300万円未満とやや低めですが、25歳以降は300万円台半ば~後半を維持して、55~59歳で年収のピークに達します。
管理栄養士は、長く勤めれば勤めるほど年収アップが目指せる職業と言えます。
【性別】管理栄養士の平均年収
性別による管理栄養士の平均年収は、以下の通り女性より男性のほうが高めです。
なお、平均年収は「(きまって支給する現金給与額×12カ月)+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。
性別 |
平均年収 (千円) |
きまって支給する現金給与額 (千円) |
年間賞与その他特別給与額 (千円) |
男女計 |
3790.7 |
264.2 |
620.3 |
男 |
4243.2 |
296.8 |
681.6 |
女 |
3747.8 |
261.1 |
614.6 |
管理栄養士に限らず、男性より女性のほうが育児やその他家庭の事情で時短勤務を希望する傾向にあるため、収入に差が出てきてしまうのは仕方がないかもしれません。
とは言え、管理栄養士の男女比率は「男性1:女性9」と言われるほど、女性中心の業界です。そのため、育児への理解がある企業が多く、子育てと両立しやすいサポート体制が整っている傾向にあります。
【地域別】管理栄養士の平均年収
管理栄養士の収入水準は、他の職業と比べて地域による年収差があまり大きくありません。
東京都と政令指定都市のある道府県の平均年収は以下の通りです。
都道府県 |
平均年収 |
北海道 |
356.9万円 |
宮城県 |
374.3万円 |
東京都 |
393.3万円 |
埼玉県 |
415.3万円 |
千葉県 |
374.2万円 |
神奈川県 |
386.5万円 |
新潟県 |
397.4万円 |
静岡県 |
372.8万円 |
愛知県 |
404.9万円 |
京都府 |
351.9万円 |
大阪府 |
407.2万円 |
兵庫県 |
385万円 |
岡山県 |
359.5万円 |
広島県 |
358.7万円 |
福岡県 |
383.1万円 |
熊本県 |
380.7万円 |
最も平均年収が高い埼玉県は415.3万円、最も平均年収が低い京都府は351.9万円で、年収差は63.4万円です。職種によっては100万以上の年収差が出るのも珍しくない点を踏まえると、管理栄養士は地域による収入格差が起こりにくい職業と言えます。
なお、管理栄養士は勤続年数に応じて年収が上がる仕組みになっているため、管理栄養士の平均年齢が高い地域は平均年収も高めの水準になっています。
また、管理栄養士は食品加工に関する企業の他に、病院・介護施設・福祉施設でも必要とされていることから、医療施設が多い地域も平均年収が高くなりやすいのが特徴です。
管理栄養士の平均年収が低いと言われる理由
管理栄養士の平均年収が日本の職種全体の平均年収に比べて低いと言われる理由は以下の通りです。
- 資格なしでもできる業務が多い
- 直接的な利益を出しにくい
- 需要に対して人数が多く飽和状態である
実は、管理栄養士の仕事は資格がなくてもできる業務ばかりです。特定業務を独占的に行える業務独占資格に該当しないため、言ってしまえば医者や看護師も管理栄養士と同じ業務をしても問題ないのです。
また、管理栄養士の平均年収が低い理由として、専門的な知識やスキルが必要な専門職でありながら直接的な利益に結びつきにくいため、給与に反映されない点も挙げられます。
医療機関は、診療や介護を行うことで報酬を得る仕組みですが、管理栄養士が売上に貢献できる業務は栄養指導くらいで、他の職種と比べて利益を生み出しにくい職業です。直接的な利益が出せない職業は、たとえ専門職であっても給料を低めに見積もられてしまう可能性があります。
くわえて、管理栄養士が飽和状態である状況も、年収が低くなる原因です。
年々管理栄養士を目指す人が増加傾向にあるのに対して、求人数はそこまで増えていません。管理栄養士の配置が義務付けられている施設自体は多いものの、一つの施設につき配置される人数は、せいぜい数人程度です。
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このように、需要に対して供給が上回りつつある状況と、市場における希少価値が他の職種に比べて低く見られがちなことも相まって、管理栄養士の給与は低いと言われています。
管理栄養士で稼げる人・稼げない人
管理栄養士として稼げる人材になるためには、以下のスキルが必要です。
- ニーズに合った料理を提供するための調理スキル
- 提示された条件をクリアしたうえでおいしいメニューを提案するための献立作成スキル
- 職場のスタッフや患者さんと意思の疎通を図るためのコミュニケーションスキル
- 食品や料理の栄養価を分析するためのデータ分析スキル
上記4つのスキルを身につけるうえで、稼げる人・稼げない人の特徴を表でまとめてみました。
管理栄養士で稼げる人 |
管理栄養士で稼げない人 |
料理や健康への意識が高い人 |
コミュニケーションが苦手な人 |
食の知識を応用できる人 |
責任感が薄い人 |
数字を扱う作業が得意な人 |
体力がない人 |
管理栄養士は、ただ単においしい料理を提供するのではなく、栄養素がバランスよく含まれているかどうかを第一に考えて献立を立てていくことが求められます。また、常に食の知識をアップデートしつつ、どのように業務に活かしていくべきか探求する力も必要です。
そのため、料理や健康への意識が高い人や食の知識を応用できる人は、調理スキル・献立作成スキルが向上しやすいでしょう。
また、管理栄養士は一人で完結できない業務ばかりです。たとえば、調理が必要な施設であれば調理師をはじめとしたキッチン担当との連携が必要不可欠ですし、医療機関であれば患者さんに栄養指導を行うために医師の指示を仰がなければいけません。
このように、人と接する機会が多いので、コミュニケーションを取るのが苦手な人は苦労する可能性があります。
そして、管理栄養士は、食品や料理の栄養価分析や食品表示の数値チェックといった分析スキルが求められる場合もあるので、数字を扱う作業に抵抗がない人も活躍できるでしょう。
他にも、「第三者の健康管理を任されている」という責任感を持つことや、激務になりやすい調理現場で長時間業務を続けられる体力をつけることも、稼げる管理栄養士になるうえで大切なポイントです。
管理栄養士で年収・給与を上げるポイント
管理栄養士で年収・給与を上げるためには、以下のように段階を踏んで努力を続けるのが大切です。
- 献立作成ができる施設や企業に就職する
- 追加で食品や健康支援に関する資格を取得する
- 給料の高い施設や企業に転職する
ここからは上記3つのポイントについて、詳しく解説をしていきます。
「なぜ収入アップにつながるのか」「どのように行動すればいいのか」などを紹介しているので、管理栄養士として年収アップを狙いたい方は必見です。
献立作成ができる施設や企業に就職する
管理栄養士の収入を増やすためには、まず管理栄養士としてさまざまなスキルを身につけられる施設や企業に就職することを目指してみましょう。
特に、献立作成に関しては、そもそも献立を作らない施設も多数存在しており、「献立を作ったのは学生の時が最後」という管理栄養士も珍しくありません。
献立作成は、栄養バランスの良い食事を計画し、特定の健康状態やニーズに合わせたメニューを提案する高度なスキルが求められるため、病院や福祉施設、スポーツチーム、学校給食など、さまざまな職場で高く評価されやすいのが特徴です。
献立作成のスキルを高めるためには、実務経験の積み重ねが必要不可欠です。献立作成を行う機会が多い以下の施設に就職して、管理栄養士としてスキルを上げていきましょう。
参考
・病院(給食部門)
・学校(給食を学校で用意している小中学校、給食センター)
・社会福祉施設(高齢者施設・障害者施設)
・児童福祉施設(児童養護施設・保育施設)
追加で食品や健康支援に関する資格を取得する
管理栄養士としてキャリアを築き始めた後は、追加で食品や健康支援に関する資格を取得するのがおすすめです。管理栄養士に活かせる資格を取得すれば、携わる業務の幅が広がり、さらなるキャリアアップにつながります。
下記は管理栄養士で培ったスキルが活かせる資格例です。
参考
・調理師
・介護食アドバイザー
・スポーツ栄養スペシャリスト
調理師の資格を取得することで、栄養学的知識を活かしつつ調理現場での活躍が期待できます。調理業務の職場は、給食の調理や管理が主な仕事内容である病院、福祉施設、学校の給食センターなどが該当します。
介護食アドバイザーとは、高齢者や介護が必要な人に特化した食の専門知識を有することを証明する民間資格で、主に介護施設の管理栄養士として活躍したい方に適した資格です。介護経験がなくても取得できるので、就職先の選択肢を増やしたい人にもおすすめです。
スポーツ栄養スペシャリストは、アスリートを栄養面からサポートできることを証明できる資格で、スポーツチームや実業団、ジム、フィットネスクラブなど、主にスポーツ関係の職場で役立ちます。
就職先によっては、監督やコーチ、トレーナー、ドクターといった各分野のプロフェッショナルが集結しており、管理栄養士もその枠に入るチャンスがあるため、スポーツの仕事を通じてさまざまな学びややりがいを得たい方は、スポーツ栄養スペシャリストの資格を取得して損はないでしょう。
給料の高い施設や企業に転職する
管理栄養士で給料を上げるポイントとして、収入面で好条件がそろった職場へ転職することも挙げられます。
たとえば、大手の食品会社や大学病院、高級老人ホームといった規模が大きい施設や企業は、管理栄養士の給与が高い傾向にあります。
規模が大きい施設は、管理栄養士の専門性を活かした多様な業務があり、給与体系も充実しているケースが多いです。さらに、高齢者施設に関しては、健康維持や疾病予防の観点から管理栄養士の役割を重要視しているため、他の施設より高い給料をもらえる可能性があります。
ただし、先述した通り、一つの施設につき管理栄養士を配置する人数は数人程度が一般的なので、転職時は少ない採用枠を勝ち取るためのアピールポイントを持っておくようにしましょう。
アピールポイントを持つためには、まず規模を問わずさまざまな業務に携われる施設や企業に就職して、転職時に有利に進められるようなスキルを身につけたり実務経験を積んだりするのがおすすめです。
年収の高い管理栄養士の求人を探すなら?
ここからは、年収の高い管理栄養士の求人を探せるサイトを紹介します。
管理栄養士・栄養士に特化した求人サイトや人材紹介サービスは意外と多いです。そのようなサービスでは、管理栄養士の転職事情に特化したスタッフがサポートをしてくれるので、短時間で自分の希望に合った就職先を探して転職できる可能性が高まります。
管理栄養士以外だと、未経験でも年収1000万円を目指せるナイト系もおすすめ!
管理栄養士の職業は、専門的な知識やスキルを必要としながらも、なかなか給料に反映されないのが現状です。その一因として、業界内で管理栄養士の数が飽和状態にあることや、直接的な利益を出しにくいことなどが挙げられます。
自分の努力や成果が収入に反映されやすい仕事に就きたいのであれば、ナイト系への就職も選択肢の一つとしておすすめです。
ナイト系の仕事は高校生を除く18歳以上であれば応募が可能で、未経験からでもスタートしやすい職種です。過去の経歴より働き始めた後の成果を重視する会社が多いのが特徴で、会社への貢献度次第ではスピード昇給・昇格も珍しくなく、年収1000万円も不可能ではありません。
また、ナイト系の仕事で成果を出すためにはコミュニケーションスキルが必要不可欠で、管理栄養士に必要なスキルと通ずる部分があります。
-
「自分の頑張りが良い形で還元される職場で働きたい」という方は、ぜひナイト系の仕事も検討してみてください。
管理栄養士で稼ぐにはスキルアップと転職が重要!
管理栄養士は、他の職種と比べて年収が低めです。管理栄養士としてより多く稼ぐ方法として、以下のポイントを押さえておくことが大切です。
ポイント
・献立作成ができる施設や企業に就職する
・追加で食品や健康支援に関する資格を取得する
・給料の高い施設や企業に転職する
キャリアアップするためには、献立作成をはじめさまざまな業務に携わりつつ、管理栄養士のスキルを活かせる資格を取得するのがおすすめです。実務経験を積んだうえでさらに専門性の高い知識を習得できれば、給料の高い施設や企業への転職が有利になります。
この記事を参考にしながら、稼げる管理栄養士を目指していきましょう!