作家は小説やエッセイなどの文章作品を執筆し、印税や原稿料で収入を得る職業です。
一部の売れっ子作家は年収数千万円を超えることもありますが、一方で「思ったより稼げない」と感じる人も少なくありません。
本記事では、作家の平均年収や収入の内訳、平均年収が低いと言われる理由について、データをもとに詳しく解説します。
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稼げる作家と稼げない作家の特徴、収入を上げるための具体的な方法や注意点も紹介するので、作家として稼いでいきたい方は必見です。
作家の平均年収は200万〜1,000万円

一般的な作家の平均年収は、200万〜1,000万円程度とされています。
ただし、作家の年収は作品の売上や契約内容、知名度、活動範囲によって大きく異なります。有名な賞を受賞したり、ベストセラーを出すなどして成功したりしている作家の場合、年収は数千万円〜億単位に達することも珍しくありません。
しかし、印税や原稿料だけで生計を立てられる人は少なく、作家の多くは他の職業と兼業して収入を得ているケースが多いのが実情です。
作家の収入内訳
作家の主な収入源は、印税と原稿料です。さらに、作品がドラマ化・映画化される際や、電子書籍化される際には、権利料も収入になります。
印税は、本の売上に応じて支払われる報酬で、商業出版では印税率が5〜10%程度とされています。たとえば、本の価格が1,500円で印税率が10%の場合、1冊につき150円が作家の収入です。
一般的に、知名度の高い作家ほど印税率は高くなるほか、売れた冊数に比例するため、ベストセラーになれば大きな収入が見込めるようになります。
なお、自費出版の場合は、印税率が20%以上と高くなりやすいものの、売れ残りによる在庫リスクなどを伴うので、注意が必要です。
一方、原稿料は企業と契約して原稿を納品した際に、400文字の原稿用紙1枚あたりの対価として支払われます。相場は1枚2,000〜5,000円程度で、新人作家は相場の下限に近いことが多いですが、実績を積めば単価アップが可能です。
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作家は出版社との契約内容や販売戦略によっても、収入内訳に大きく差が生じるのが実情です。
作家の平均年収が低いと言われる理由

作家は夢のある職業と思われがちですが、実際には平均年収が低いと言われることも少なくありません。その背景には、主に3つの理由があります。
- 本が売れる保証がない
- 競争率が高い
- 執筆以外の作業が多い
それぞれの理由を、詳しく見ていきましょう。
①本が売れる保証がない
作家として安定した収入を得るには、本が売れて継続的に印税が入ることが大前提です。しかし、本を出版すれば必ず売れるとは限りません。
特に印税が実際に売れた部数(実売部数)に応じて支払われる契約の場合、本が売れなければ収入はゼロです。また、発行部数に応じた契約だったとしても、初版が少なければまとまった収入にはつながりません。
さらに近年では、動画やSNS、サブスクなどのデジタルコンテンツをはじめとする娯楽娯楽が増えたことで、書籍全体の売上も伸び悩んでいます。
かつては10万部以上でベストセラーと呼ぶケースが多かったものの、現在では5万部でもそう呼ばれるケースもあり、出版業界が不況であることがうかがえます。
「執筆・出版をしても本が売れるとは限らない」という労働に対する対価が不確実性な点が、作家の年収を不安定にする要因です。
②競争率が高い
作家の年収が伸びにくい理由に、出版業界の激しい競争もあります。
令和5年には年間6万点以上の新刊が発行されており、文学作品だけでも1万点以上が市場に登場しています。
これだけ多くの本が出版されるなかで注目を集めるのは簡単ではなく、話題性や独自性がなければ埋もれてしまうことも珍しくありません。
昔に比べると本を出版するハードルは下がっているものの、書店やネットでの露出を増やせるかどうかが、収入に直結する大きな課題となっています。
参考:公益社団法人 全国出版協会出版科学研究所「出版指標年報2025年版」(参照 2025-07-07)
③執筆以外の作業が多い
作家の仕事は、執筆するだけではなく、多くの工程が含まれます。
以下は本ができるまでの主な流れです。
- 構想を練る
- 企画書の作成
- プロットの作成
- 執筆
- 修正
- 校正・校閲
- 入稿・出版
特に、修正や校正・校閲は時間と労力を要し、何度もやり取りを重ねることも少なくありません。
また、本が出版された後に、インタビュー・取材・サイン会などの対応や、SNSで自ら宣伝をするといった仕事を行う場合もあります。
本が出版されるまでには膨大な時間がかかり、執筆だけに専念できるわけではないものの、本が売れなければ収入はまったく伸びないので、割に合わないと感じてしまう人もいるでしょう。
【2024年】ヒット作から推定される印税額

「オリコン年間本ランキング2024」をもとに、2024年に最も多くの部数を売り上げた書籍を紹介します。
ここでは、推定発行部数と本の価格をもとに、印税率5%で仮定した印税額を計算しました。
順位 | 作品名 | 作家名 | 推定売上部数 | 価格 | 印税額(5%) |
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1位 | 変な家2 ~11の間取り図~ | 雨穴 | 約74万部 | 1,650円 | 約6,137万円 |
2位 | 大ピンチずかん2 | 鈴木のりたけ | 約62万部 | 1,650円 | 約5,143万円 |
3位 | 成瀬は天下を取りに行く | 宮島未奈 | 約55万部 | 1,705円 | 約4,656万円 |
参考:ORICON NEWS「【オリコン年間本ランキング2024】”変な家”シリーズが史上初の2冠達成、「主要3部門」の1位作品をそれぞれ発表」(参照日2025-07-07)
このように、ヒット作は印税だけでも数千万円規模の収入につながります。
作家の年収が、いかに本が売れるかどうかで左右されることがわかります。
作家で稼げる人の特徴

作家として安定した収入を得るには、ただ執筆するだけでなく、作品のクオリティや売るための工夫、読者との関係作りも大切です。
作家で稼げる人には次のような特徴があります。
- 魅力的な作品を書ける人
- 文学賞を受賞できる人
- プロモーション能力の高い人
それぞれの特徴について詳しく解説します。
①魅力的な作品を書ける人
売れる作家の最大の特徴は、やはり読者を惹きつける魅力的な作品を書けることです。面白い作品には自然とファンが付き、継続的に支持されるので、売れ行きも安定しやすくなります。
また、ターゲット読者を明確にし、読者のニーズや関心に合ったテーマを選んで執筆する分析力も重要です。
編集者との連携や市場分析を通じて、売れる本の特徴を理解し、作品に反映させる力がある作家は、収入も伸びやすい傾向にあります。
②文学賞を受賞できる人
文学賞を受賞すると、作家としての注目度が一気に高まり、本屋で平積みされるなど、販売面で優遇されます。平積みは書棚に背表紙だけが並ぶよりも目立ちやすく、売れ行きに大きく直結します。
また、受賞をきっかけに雑誌への寄稿依頼や、文学賞の選考担当(下読み)といった副収入の機会も得られやすくなるのもメリットです。
特に、大手の新人賞を受賞した場合は、出版社も宣伝に力を入れるため、販促や書店への配本面でも有利になり、収入の底上げにつながります。
③プロモーション能力の高い人
プロモーション能力が高い作家は、自身の作品を多くの人に知ってもらって作品の売上をアップさせることで、収入を伸ばせます。
たとえば、SNSやWebサイトで執筆情報を発信したり、読者と直接交流したりすると、ファンの獲得につながりやすくなります。また、販売会や読者イベントへの参加も作品の認知拡大に効果的です。
自ら積極的にアピールできる作家は、売上目標の達成やブランド力の向上につながりやすく、出版社からも信頼されやすい傾向があります。
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プロモーション能力は、収入と継続的な活躍のための大きな武器と言えるでしょう。
作家で稼げない人の特徴

作家として稼いでいくには、スキルだけでなく仕事への姿勢や習慣も重要です。どれだけ才能があっても、仕事として執筆を継続できなければ収入は安定しません。
作家で稼げない人の特徴は以下のとおりです。
- 読者や社会に対する興味・関心が薄い人
- 継続して執筆できない人
- 期限を守るのが苦手な人
それぞれの特徴について詳しく解説します。
①読者や社会に対する興味・関心が薄い人
作家としてやっていくには「人」や「社会」への関心が欠かせません。読者や社会に対するアンテナが弱いと、いずれ書くネタが尽きてしまいます。
実際、小説では人の感情や社会問題をリアルに描く力が求められます。現実にある悩みや出来事に共感できないと、説得力のある描写は難しく、読者の心に刺さる作品にはなりにくいためです。
日頃からニュースやSNS、人の言動にアンテナを張って情報を集めたり、人の感情のポジティブな面だけでなく負の感情にも目を向けたりすると、良い作品作りの基礎につながります。
②継続して執筆できない人
作家としての収入は、基本的に「作品数」に比例します。継続的に執筆できないと、当然ながら収入チャンスも限られてしまいます。
通常、書籍は初版の売れ行きによって重版されるかどうかが決まるため、一定のペースで作品を発表し、読者の関心を維持する必要があります。
長期的に活躍する作家ほど、スランプを乗り越えながら地道に執筆を続けています。
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才能だけでなく、継続力も稼ぐ作家には欠かせない要素です。
③期限を守るのが苦手な人
作家として活動する以上、原稿の納期を守ることは不可欠です。出版社を通じて商業出版を行う場合、各工程に明確な締切があり、スケジュールに沿って執筆を進める力が求められます。
期限を守れないと、出版が遅れるだけでなく、編集者や出版社からの信頼を失い、次の仕事につながりにくくなる可能性が高まります。そのため、計画的に執筆を進めることが苦手な人は、そもそも商業作家として安定した収入を得るのが難しいです。
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才能だけでなく、継続力も稼ぐ作家には欠かせない要素です。
作家で年収・給与を上げるポイント

作家として年収を上げるには、作品の質だけでなく、売れるための戦略や収入の幅を広げる工夫もしましょう。
以下のポイントを意識することで、収入アップが期待できます。
- 読者のニーズを意識した作品を制作する
- 作品を定期的に発表する
- 幅広い収入源を持つ
それぞれのポイントを詳しく解説します。
①読者のニーズを意識した作品を制作する
読者に「読みたい」と思ってもらえる作品を作るには、企画やコンセプトが重要です。
ニーズに沿った内容であれば、販売のチャンスが広がります。加えて、「なぜ今このテーマが求められているのか」を明確に示せると、企画としての説得力が増し、出版社の目にも留まりやすくなるでしょう。
例えば、世の中のニーズは以下のような方法で探ることができます。
- SNSやYouTubeの話題をリサーチ
- 出版社の売上傾向やジャンル分析を見る
- ネット書店のレビューやランキングを参考にする
②作品を定期的に発表する
作家として安定して収入を得るには、作品を定期的に発表し続けることが不可欠です。作品数が増えれば、その分だけ原稿料や印税収入のチャンスも増加します。
特に、印税収入を得るには、毎年安定した売上が必要です。執筆ペースを保ちつつ、一定以上のクオリティを維持できれば、自分の作品が人の目に留まる機会が増えるので、継続的に収入を得られるようになる可能性が上がります。
さらに、読者の期待に応え続けようとする姿勢があると、出版社や読者との長期的な信頼や知名度アップの獲得につながりやすいです。
③幅広い収入源を持つ
原稿料や印税だけで生計を立てられる作家は、ごく一部に限られます。そのため、安定した収入を得るには、執筆以外の収入源を持つことも大切です。
たとえば、以下のような方法が挙げられます。
- オンラインサロンの運営
- 講演活動
- 作家志望者へのコンサルティング
また、ビジネス書系の作家であれば、セミナー開催や企業研修などで高収入を得る例も多く、知識や経験を活かして収益を伸ばせるでしょう。
収入源を分散させることで年収を安定させられると、作家として長期的に活動しやすくなります。
作家で年収アップを目指す際の注意点

収入を増やすことに注力しすぎると、作品作りの本質を見失ってしまう恐れもあります。作家が年収アップを目指すうえで、注意しておきたいポイントは以下のとおりです。
- 作品のクオリティを下げない
- ネタ切れにならない工夫をする
- 自分が何を書きたいかを大切にする
作家として長期的に活躍するために、これらの注意点を心に留めておきましょう。
①作品のクオリティを下げない
収入を優先して執筆以外の活動に時間を取られすぎると、作品作りのうえで必要な準備や執筆の時間が疎かになり、質の低下を招く恐れがあります。
たとえば、小説の場合は、執筆している時間だけでなく、説得力のあるストーリー構成や登場人物の深掘り、臨場感のある描写のために情報収集に時間をかけることが不可欠です。
準備不足はクオリティの低下につながって読者離れを招き、結果的に売上の減少にもなりかねません。
読者の心に残る作品を届けるためにも、準備段階から丁寧に取り組み、作品の質を保つことが大切です。
②ネタ切れにならない工夫をする
作品を定期的に発表するには、ネタ切れを防ぐ工夫が欠かせません。アイデアが浮かばず、執筆が止まってしまうと、収入にも直結してしまいます。
ネタに困ったときは、人の話に耳を傾けたり、これまであまり興味関心がなかった分野を深掘りしてみたり、外出や旅行をしてみたりと、インプットの習慣を意識しましょう。また、流行や時事ネタを取り入れるのも有効です。
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ネタを探す行動とそのための時間を確保することは、定期的に新しい作品を生み出すうえで大切です。
③自分が何を書きたいかを大切にする
読者にウケる作品を意識しすぎると、創作の軸がぶれてしまい、作品がつまらなくなるケースもあります。読者ニーズに応えることは重要ですが、作家として長く活動するには、「自分が何を書きたいか」を大切にする必要があります。
自分が心から書きたいと思える題材であれば、執筆のモチベーションも維持しやすく、結果として魅力ある作品につながる可能性が高いです。
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読者にこびすぎず、誠実に書く姿勢が、信頼とファンを生み出す土台になります。
作家と出版社をつなぐおすすめのエージェント

商業出版で収入を増やすうえで、企画書の持ち込みや出版社との交渉をサポートしてくれる「出版エージェント」の存在は心強い味方です。
ここでは、実績が豊富で信頼できる3つの出版エージェントを紹介します。
NPO法人企画のたまご屋さん | 編集者と著者をマッチングし、これまでに700冊以上の出版実績があります。クオリティの高い企画書を出すためのセミナーやサポートも充実しています。 |
ボイルドエッグス | 作品を最適な各出版社に売り込んでくれるほか、著者の代理人として出版社との交渉やプロモーションも代行してくれます。 |
エリエス・ブック・コンサルティング | メディアとのリレーションシップがあり、作家を幅広く支援。出版企画や販売戦略のアドバイスを受けられるサービスもあります。 |
これらのエージェントを活用すれば、作家としての出版チャンスを広げ、自分に合った出版社や企画と出会いやすくなります。
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夢の一冊を実現するために、信頼できるサポートを上手に活用しましょう。
作家と似た稼げる仕事3選

文章力や発想力を活かせる仕事は、作家以外にも存在します。なかには高収入が期待できる職業もあり、スキルや経験を活かしてキャリアを広げることも可能です。
ここでは、作家と共通点が多く、文章表現を仕事にできる職業を3つ紹介します。
- 脚本家
- コピーライター
- Webライター
それぞれの職業の特徴や収入について解説します。
①脚本家
脚本家は、映画やテレビドラマ、アニメ、演劇などのシナリオを執筆する仕事です。ストーリーの構成や登場人物のセリフや行動などを考えて執筆するという点で、作家と共通するスキルが求められます。文章力や構成力を活かして、映像作品に携わりたい人に向いている職業です。
フリーランスとして活動する人もいれば、制作会社に所属して安定した収入を得ている人もおり、自分に合った働き方が選べます。
ちなみに、映像作品の脚本家を目指す場合は、下記のようなゲーム・映像業界に特化した転職・求人サイト「シリコンスタジオエージェント」の活用もおすすめです。
②コピーライター
コピーライターは、商品やサービスの魅力を伝える広告文(コピー)を考える仕事です。企業の意図をくみ取り、心に響くキャッチフレーズや文章を練り上げていきます。
言葉で人の心を動かすという点で作家と似たスキルが求められ、企画力や表現力も大切です。時代の流れや消費者心理を読み解く力も活かせる、創造性と実務性を兼ね備えた職業です。
企業の広告部門や制作会社に所属すれば、安定した収入を得られるチャンスもあります。
コピーライターを目指す場合、広告・マーケティング職に特化した求人・転職エージェント「マスメディアン」といったサービスを使うのが手です。
③Webライター
Webライターは、Webメディアや企業サイトの記事を執筆する仕事です。文章力を活かして情報をわかりやすく伝える点で、作家と共通するスキルが求められます。
クライアントのニーズに応じて執筆するため、情報収集能力と柔軟な対応力も必要です。スキルや実績を積めば、在宅でのフリーランス活動も可能で、時間や場所に縛られない働き方ができます。
Webライターを目指す場合、Web・広告業界などに特化した求人・転職サイト「Webist」といった転職エージェントがあります。
作家で稼ぐには幅広い収入源・読者ニーズへの意識・定期的な出版が重要!

作家という職業は、夢がある一方で収入の格差が大きく、年収が安定しにくい仕事でもあります。実際に高収入を得ている人はごく一部で、多くの作家は副業に頼っているのが現状です。
だからこそ、作家の収入だけで安定して稼ぐためには、戦略的な取り組みが欠かせません。以下のポイントを意識することで、作家としての収入アップが期待できます。
- 幅広い収入源を得る
- 読者ニーズを意識した作品を制作する
- 定期的に出版する
創造性や文章力などに加えて読者のニーズをくみ取る分析力や定期的な執筆を維持できる力が、稼げる作家には必要不可欠です。
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作家で稼いでいくなら、これらのポイントを押さえて、売れる作家を目指していきましょう。