同族経営の会社はやばいって本当?ブラックか見極めるポイントや給与について解説

同族経営の会社はやばいって本当?ブラックか見極めるポイントや給与について解説
  • 同族経営の会社はなぜやばいと言われているの?

  • 家族経営の会社で長く働けるだろうか…

ネット上では、同族経営の会社に対して「やばい」「頭おかしい」といった悪評が多く挙げられています。とはいえ、実際に同族経営のどんなところがやばいのか気になる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、同族経営企業の給料が上がらない理由と対策、ブラックな同族経営かどうか見極めるポイント、良い同族経営の会社の特徴を中心に解説します。

同族経営の会社への応募を検討している方や、家族経営の会社に在職中の方にとって有益な情報が満載なので、ぜひご覧ください。

目次 open

同族経営・家族経営の定義とは

まずは、同族経営の定義を正しく理解しましょう。

同族経営は「家族経営」「一族経営」などとも呼ばれ、法律上は以下のように定義されています。

会社(投資法人を含む。以下この号において同じ。)の株主等(その会社が自己の株式(投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二条第十四項(定義)に規定する投資口を含む。以下同じ。)又は出資を有する場合のその会社を除く。)の三人以下並びにこれらと政令で定める特殊の関係のある個人及び法人がその会社の発行済株式又は出資(その会社が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合その他政令で定める場合におけるその会社をいう。

出典: e-Gov法令検索「法人税法」(参照 2024-11-22)

要するに、企業が発行した株式の50%以上を「3人以下の株主」または「特殊の関係のある個人及び法人」が保有している会社が同族経営です。

家族だけで経営しているという意味ではなく、家族が株式の大多数を保有して大きな影響力を持っていることを意味しています。

そして、日本に存在する中小企業の90%以上が家族経営だと言われています。そのため、なるべく同族経営ではない会社に就職したくても、該当しない会社を探すのは至難の業です。

だからこそ、同族経営の「やばい会社」と「良い会社」の特徴を理解しておくことが大切です。

なお、今回ご紹介する「同族経営」の定義を満たしているのは、中小・零細企業がほとんどです。名だたる大手企業の中には、代々家族で経営を続けているパターンもありますが、「3人以下の株主」の定義に合っていません。

そのため、本記事では同族経営の定義を満たした中小・零細企業にまつわる「やばいポイント」を紹介します。

 

同族経営の給与が上がらない理由

同族経営の会社がやばいと言われる理由の一つに「給料が上がらない」が挙げられます。

なぜ、同族経営の会社は給料が上がらないのか、その理由について詳しく解説していきます!

中小または零細企業が多いため

同族経営の会社の給料が上がらないのは、そもそも企業規模が小さく、従業員の給料を上げる余裕がないのが原因です。

平成22年に中小企業庁が公表したデータによると、中小企業として位置づけられている「資本金1億円以下」の企業のうち、約97%が同族経営という結果が出ています。

企業規模が小さい会社は、大企業と比べて取引数が少ないため、大きな利益を発生させるのは難しいです。そのため、経営が上手くいっていない会社の場合、人件費を削減せざるを得ず、出世や昇給をしてもごくわずかしか収入が増えないというケースも少なくありません。

もちろん多額の利益を出す中小企業も存在しているものの、同族経営の会社の給料が上がらない理由の一つとして考えられるでしょう。

参考:中小企業庁「我が国の中小企業の実態」(参照 2024-11-29)

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身内を優先して昇格・昇進する傾向にあるため

同族経営の会社では「父が社長、長男が部長、次男が課長」といったように、家族や一族を優先して昇進させる傾向があります。

個人の能力や成果よりも「身内であること」が重要視され、身内ではない従業員にはなかなか昇格や昇進のチャンスが巡ってこないのです。そうなると、身内以外の従業員はいつまでたってもキャリアアップできず、給料が増えません。

また、血のつながりは個人の希望や努力で変えられるものではないため、それを昇格・昇進の基準にされると、従業員は仕事を頑張るモチベーションまで失ってしまいます。

だからといって、あからさまに仕事の手を抜いてしまうと、会社側から「やる気がない」とマイナスな評価をされ、ますます昇格や昇進が遠ざかってしまうので、悪循環に陥りやすいです。

ワンマン体質であるため

同族経営の会社は企業規模が小さく、さらに役員や管理職も家族である場合が多いため、ワンマン体質な経営になりやすいです。

そしてワンマンの同族経営企業では、経営方針だけでなく従業員の評価まで、経営者の好き・嫌いといった個人的な感情が強く反映される傾向にあります。

仕事で重要なポストに起用されるためには、まず経営者に気に入られなければ、たとえ能力が高くても正当な評価が受けられず、昇進・昇格が厳しいです。

また、ワンマン経営の会社で長く働き続けると、従業員は何も考えず経営者に従うことに慣れてしまい、自主性が失われる可能性があります。

給料が上がらない以外にもさまざまなデメリットがあるため、自分の会社がワンマンの同族経営だと気づいた時点で転職も視野に入れて対策するのがおすすめです。

同族経営の会社で給料が上がらない時の対策

同族経営の会社で給料アップが難しい場合、多くの人は真っ先に「転職」を思い浮かべるでしょう。もちろん転職するのも一つの手ですが、実は同族経営の会社で働きながら給料を上げる方法はいくつかあります。

ここからは、同族経営の会社で給料が上がらない時の対策を4つ紹介します。

社長との関係値を築く

同族経営の会社の場合、社長と良好な関係を築くことができれば、正当に評価されて給料も上がりやすくなります。

社長の性格によってベストな関係の築き方は異なりますが、以下のポイントを意識して接するのがおすすめです。

  • 感謝の気持ちを伝える
  • 社長のやり方を真似する

同族経営の会社の社長は、兄貴肌の気質を持っているケースが多いので、誰かに頼られている状況に強い喜びを感じます。

そのため「ありがとうございます!社長のおかげです」「やっぱり社長はすごいです。今度コツを教えてください」というイメージで、感謝を伝えつつ頼りにしている旨をアピールすればきっと可愛がられるでしょう。

また、同族経営の会社の社長は、自分のやり方に絶対的な自信を持っている傾向にあります。仕事を行う際は、なるべく社長のやり方に沿って取り組み、結果的にどんな成果が得られたのかアピールできれば、好印象を与えられます。

言葉にするのはもちろん、日頃から社長を尊敬していることがわかる行動を意識するのが、同族経営の会社の社長と良好な関係を築く秘訣です。

会社にとって重要なスキルを身に付けてアピールする

会社にとってプラスになるスキルを身に付けて、社長に「会社に欠かせない人物だ」と思わせるのも、同族経営の会社で給料を上げる方法の一つです。

社内で貴重な人材になれれば、会社は「この人材だけは手放したくない」という思いから、他の従業員より給料を上乗せする可能性があります。

収入アップを目指すためには、専門性の高い資格の取得がおすすめです。実績や成果を積み重ねてスキルアップをアピールするのも有効ですが、資格を取ったほうが高度なスキルを習得していることを形として証明できます。

なお、せっかくスキルを保持していてもアピールしなければ価値が伝わらないので、スキルを活かせる場面では積極的に活用してください。

特別な資格・スキルを持っていることを周知できれば、大きな仕事を任されるチャンスが増え、昇給・昇進も期待できます。

根拠を明確にしたうえで給料の見直しを提案する

経営者や人事と面談する際、思い切って給料の見直しを提案するのもありです。同族経営の会社によっては、明確な評価制度が整っておらず、経営者側のさじ加減で昇給額を決めているパターンも珍しくありません。

しかし、面談で「給料を上げてください」とだけ言っても、会社側は昇給が妥当なのか判断に迷うため、承諾されない可能性が高いです。

給料の見直しを提案する時には、昇給希望を伝えるとともに具体的な根拠を提示して「自分は今より給料を上げるべき存在であること」を会社側にわかってもらう必要があります。

給料アップを求めるうえで有効な理由例は以下の通りです。

  • 自分の給料が業種・職種の給料相場より低いから
  • 自分の給与が競合他社の平均給与より低いから
  • 専門性の高い資格を取得したから
  • 自分が携わったプロジェクトが成功して大きな利益を生み出せたから
  • 部下の指導やシフト管理などマネジメント業務も行うようになったから
  • 他の従業員より仕事量が多いから

主に「会社が設定している給与額は世間と比べると低い」「自分は会社のためにこんなに貢献している」の2点を重視して、給料の見直しが正当である根拠を洗い出すのがポイントです。

根拠を明確にしたあとは、経営者や身内の従業員に感謝の気持ちを伝えつつ、給与の見直しによって得られるメリットを伝えていきましょう。

給与を見直すメリットを伝える際は、以下のように会社側のメリットを中心に言うのがおすすめです。

  • 従業員のモチベーション向上によって、業務効率が上がる
  • 大幅な昇給実績を作ることで、採用活動の時に優秀な人材を集まりやすくなる
  • 転職による人材流出を防げる

「明確な根拠を提示する」「会社にとってもメリットが大きいことを強調する」の2つを意識して、給料の見直しを提案してみてください。

手遅れにならないうちに転職を検討する

どうしても給料アップを実現できそうにない同族経営の会社で働いている場合は、年齢を重ねる前に転職を検討するのもありです。

組織構造がおかしい同族経営の会社にいると、正当に評価されず成長するチャンスも逃してしまいます。そうすると、いざ転職しようと思っても武器になるスキルがなく活動が難航しやすいため、転職を検討しているなら早めに行動したほうが得策です。

また、転職は何歳になってもできますが、年齢が若いほど有利なのが実情です。年齢を重ねてからの転職は、マネジメントスキルや経営スキルなど専門性が求められやすく、採用されるハードルが一気に高くなります。

転職・求人サイト「doda(デューダ)」の調査によると、転職に成功した人は「20代後半」が最も多く、次いで「30代前半」という結果が出ています。

20代後半から30代前半が多いのは、ちょうど転職を希望する人の割合が大きくなる点もあるものの、企業側が若手の社員を求めているのも要因の一つです。

待遇の悪い同族経営の会社で働き続けると、転職に有利な時期まで逃しやすくなります。今の会社で一定期間努力してもほとんど給料が上がらない場合は、早めに見切りをつけ、転職を検討してみてください。

参考:転職・求人doda(デューダ)「転職成功者の平均年齢調査【最新版】転職するなら何歳まで? 年代別の転職活動のポイントは?」(参照 2024-11-22)

ブラックな同族経営・家族経営会社の特徴

同族経営・家族経営をしている会社の中には、早めに転職を検討したほうがいいブラック企業も存在します。

ここからは、ブラックな同族経営の会社の特徴を説明するので、自分の会社に当てはまるかどうか確認してみてください。

労働時間の管理がずさんで残業が多い

同族経営の会社は、今まで身内同士で固まって仕事をしてきた期間が長いことから、法令遵守の意識が低い傾向にあります。

従業員の労働時間を正確に把握しておらず、給与計算が手抜きだったりサービス残業が横行していたりと、労働に関する管理がずさんなケースが少なくありません

また、家族を優先する風潮が強い会社の場合、身内の従業員とそれ以外の従業員とで業務量に大きな差が出るパターンもあります。組織全体で「時間内に終わらないなら残業」という考えが根強く、たとえ常識外れの仕事量だったとしても、身内以外の従業員はその方針に従わざるを得ません。

労働者の時間外労働については、厚生労働省で「原則月45時間・年360時間」と定められています。これを恒常的に超えている会社は、ブラックの可能性が高いと言えます。

なお、会社によっては「みなし残業代を支給しているからサービス残業ではない」と主張する場合も多いです。しかし、そもそもみなし残業とは、規定時間の残業代を含めた給与を支給する制度を指し、その規定を超えた残業については別途賃金を支払う義務があります。

みなし残業に対する理解が乏しい、もしくは間違った認識をあえて広めている同族経営の会社も存在するため、自分の残業時間と残業代を一度確認してみましょう。

参考:厚生労働省「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」(参照 2024-11-22)

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評価制度が経営陣のさじ加減になっている

評価の基準があいまいで、不公平な人事評価がまかり通っている同族経営の会社は、ブラックな可能性が高いです。

ホワイトな会社の場合、「この数値を達成したら昇給」「この能力を有したら昇進」のように、明確な評価基準が設けられています。しかし同族経営のやばい会社は、評価基準を定めておらず、昇進・昇給するかどうかは経営陣のさじ加減で決めてしまうパターンが多いです。

そのため、どれだけ会社に貢献しても、経営者にとって都合がいいイエスマンや一族のお気に入りにならない限りは良い評価はもらえず、仕事に対してモチベーションが下がったりスキルアップのチャンスを失ったりする可能性があります。

また、評価制度が不透明な同族経営の会社は、給与以外の社内ルールも一族の独断で決まりやすく、身内以外の従業員は働きにくさを感じやすいです。

パワハラ・モラハラが横行している

ブラックな同族経営の会社には、「経営者一族が絶対」という考えが根付いている場合がほとんどです。そんなワンマン気質な思考は、パワハラやモラハラが横行する原因になります。

パワハラやモラハラが横行すると、「他の従業員の前でも大声で叱責される」「あからさまに無視される」といった被害を受けて、会社に行くことすら苦痛になってしまいます。

また、パワハラやモラハラが当たり前な会社は、従業員を駒のようなものとしか認識していないケースも少なくありません。従業員一人ひとりの生活について配慮せず、理由もなく給料やボーナスを減額しようとします。

やばい同族経営の会社でハラスメントの被害者になった際は、無理に自力での解決を図ろうとせず、社外の相談窓口を頼って自分の身を守ってください。

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厳しい退職条件を出してなかなか辞めさせようとしない

退職希望者に対して、あの手この手で退職を先延ばしにさせるところも、ブラックな同族経営の会社の特徴です。

やばい同族経営の会社は、なかなか退職届を受け取ってもらえなかったり、退職の意向を撤回するよう嫌がらせをされたりするケースがあります。

考えられる退職時のトラブル・嫌がらせの例を紹介します。

  • 有休を使わせない、離職票の交付を拒むなどの「ハラスメント」
  • 給料や残業代を支払わない、不当な損害賠償を請求するなどの「金銭トラブル」
  • 退職条件に実現不可能なノルマや仕事量を課す「過剰業務」

労働者には「退職の自由」があり、会社の都合で従業員を辞めさせないのは法律違反にあたる可能性が高いです。万が一退職させてもらえない場合は、外部機関に相談し、状況の改善を図りましょう。

【3代目社長は注意】同族経営・家族経営が長く続かない理由

同族経営・家族経営の会社は長続きしにくく、特に3代目社長が率いる会社は要注意とされています。

ここでは、同族経営の会社が長く続かない原因や、社長が3代目になると経営が厳しくなる理由を解説するので、気になった方はぜひチェックしてみてください。

時代の変化についていけないから

同族経営の会社が長続きしにくい理由として、時代の変化についていけず徐々に需要がなくなっていく点が考えられます。

同族経営の会社は、創業者が立ち上げたビジネスモデルに固執するあまり、時代のニーズを正しく汲み取るのが苦手な傾向にあります。世間や顧客のニーズを満たせないため、次第に需要が減り、会社は衰退の一途をたどる可能性が高いです。

現代はニーズに合わせて柔軟にビジネスモデルを変えていくことが、企業を存続させるうえで必須です。

たとえば、かつては勢いのあった以下のような業界も、今では衰退しているという声もあります。

  • 出版業界
  • テレビ業界
  • 製造業界

「時代のトレンドを正確に掴めるか」「時代に合わせてビジネスモデルに変革を起こせるか」の2点が、同族経営の会社が長続きするか否かの分かれ道となっています。

経営陣が楽観主義な傾向にあるから

同族経営の会社の事業が順調だった場合、経営陣は利益が安定している状況が当たり前だと感じてしまい、経営に対して楽観視するようになります。

たとえ収益が激減しても、家族全員で「何とかなる」「まあ大丈夫」と根拠のない未来を信じて、何か対策を講じようとしないのです。

また、危機感が薄れると万が一に備えたリスク対策も疎かになりますし、実際に深刻な経営危機が迫っていてもなかなか察知できないという事態に陥ります。

事実、経営が危ないことに気づいた頃には時すでに遅し状態で、有効な対策も打てないまま倒産する同族経営の会社は多いです。

会社は、世界経済の変化や大災害といった予測できない出来事によって、急に経営が傾くリスクを常に持っています。どんな状況においても楽観視せず危機管理能力を養わなければ、些細なきっかけで経営難に陥る可能性があります。

経営陣が会社の経営数値を把握していないから

同族経営の会社によっては、経営陣の中に経営数値を正しく把握できていない人が多い場合も珍しくありません。

【経営数値とは】
さまざまな経営指標をもとに、経営状況を可視化させた数値を指します。
財務諸表に記載されている「預金」「純売上」「売上総利益」以外にも、「流動比率」「自己資本比率」といった比率にも着目して、経営状態のバランスが整っているかどうか判断しやすくなります。

事業数値が理解できないと、数値上で市場の動向を読み解くことができず、多くのビジネスチャンスを逃すきっかけにつながります。また、間違った投資を繰り返して会社の資金繰りが苦しくなり、最終的には倒産に追い込まれる可能性が高いです。

簿記や会計、財務の知識は自分から学ぼうとする意欲さえあれば、そこまで難しいことではありません。しかし、先述した通り、同族経営の会社の経営陣は楽観主義者が多いせいか、数字力の向上に消極的です。

経営陣が会社の経営数値を把握していないと、経営危機に陥った時に原因がわからず、どう対策すればいいのかわからなくなってしまうため、同族経営の会社は長続きしにくいと言えます。

創業者が作り上げた会社の慣習を守りすぎているから

会社を立ち上げ軌道に乗せた創業者は偉大な存在です。偉大だからといって、いつまでも創業者が作り上げたビジネスモデルや会社の風習を守り続けることは、会社が衰退するきっかけになりかねません。

創業者を過剰に尊敬している会社の経営陣は、「経営状況を良くすること」より「創業者のやり方を維持すること」を重要視します。

創業者の手腕や経営方針を神格化し過ぎるあまり、現代に合わせたビジネスモデルに変化させるのを拒み、新たな挑戦や変革にも消極的です。

昔と比べて需要と供給が大きく変わった現代だからこそ、長寿企業となるためには創業者が築いたブランドの脱却も求められます。

守るべき伝統と今行うべき変革の間でうまくバランスを取らなくては、同族経営の会社の存続は難しいでしょう。

3代目の壁を乗り越えるのが難しいからから

「同族経営の3代目社長に注意」と言われる理由として、3代目の経営者は初代~2代目に比べて経営スキルが乏しい傾向にある点が挙げられます。

創業者である初代社長は、事業のアイデア出しや資金調達、従業員の確保などを自力で行い、身をもって経営の大変さを知っています。そして2代目社長は奮闘する初代社長の姿を間近に見ているため経営に対して危機感があり、自ら努力して良き経営者になろうと努力を欠かしません。

しかし、初代~2代目の努力により経営が安定し出すと、その状態で会社を引き継いだ3代目社長は経営の大変さやお金の苦労を実感できる機会が少なくなります。経営者としての感性を磨くチャンスが得られないのは、社長業を行ううえで死活問題です。

しかし、経営者として必要な感性を得るためには、実際に経験することが必要不可欠です。社長が3代目になった途端に経営悪化や倒産に追い込まれがちなのは、経営センスを磨く機会がほとんどない点も影響しているでしょう。

 

良い同族経営・家族経営の会社の特徴

ここまでは、同族経営・家族経営の会社のネガティブな要素ばかりお伝えしてきましたが、すべての同族経営の会社がやばいわけではありません。

良い同族経営の会社の特徴を紹介するので、ぜひ会社選びの参考にしてください。

従業員からの評判が良い

身内以外の従業員からの評判は、同族経営会社の良し悪しを測る一つのバロメーターと言えます。

従業員からの評判が良い会社は、家族経営の中で生まれやすい悪い習慣や空気感がなく、多くの人が働きやすい環境が整っている傾向です。

会社の評判は、転職サイトや口コミサイトから調べられます。良い口コミと悪い口コミが混在している場合は、両方の内容をよく読んだうえで判断してください。

また、もしも口コミサイトに評判が載っていない時は、入社前に職場見学することは可能かどうか聞いてみるのもおすすめです。

同族経営の会社がブラックなのかホワイトなのかは、従業員の働く姿や表情から垣間見える場合があります。従業員が生き生きと働く職場なら、良い同族経営の会社の可能性が高いです。

家族・親戚以外の役員がいる

同族経営の会社では、一族の人間が役員や管理職に就くケースがほとんどです。しかし稀に、家族・親戚以外の人間を役員に抜擢している場合もあり、このような会社は組織体制がしっかりしている傾向にあります。

身内以外の役員がいる会社は「一族だけで重要ポストを固めると、意見が偏りやすく正常な経営が難しい」と客観的な考えを持っていることが多いです。また、会社への貢献度や個人の能力を重視した評価基準を設けている可能性があり、血縁関係があるなしに問わず、昇給・昇格が目指しやすいメリットもあります。

やばい会社を回避するためにも、同族経営会社で働く際は入社前に公式サイトなどを見て、家族・親戚以外の役員がいるかどうかをチェックしてみてください。

財務諸表をきちんと作成している

良い同族経営の会社を選ぶためには、財務諸表を確認するのもおすすめです。

【財務諸表とは】
企業が一年間の財務状況を報告する決算書類を指します。
「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュ・フロー計算書」「株主資本等変動計算書」の4つが必ず含まれており、この表一つで会社の経営状況が把握できるので、「企業の通知表」とも呼ばれています。

財務諸表は、企業の公式サイトに掲載されている「決算短信」「有価証券報告書」などの項目から確認できます。

数値が一般的な企業と遜色なくしっかりしていれば、経営もしっかりしている可能性が高いです。

ただし、やばい同族経営の会社は、そもそも財務諸表を公表していないため、探しても見つからない場合があります。

財務諸表を公表しているかどうかも、同族経営の会社の良し悪しを決めるための判断材料になるので、一度探してみてください。

 

同族会社で働くメリットは経営陣との距離が近いこと

同族経営の会社のほとんどは企業規模が小さいので、経営者と従業員の距離が近いです。その会社の職場環境によっては、距離感の近さがメリットになるケースもあります。

「経営者と従業員との距離が近い」ということは、良くも悪くも風通しが良い職場環境です。自分の意見や要望を経営者に直接伝えやすいのはもちろん、業務によっては経営のノウハウを近くで学べるチャンスも得られます。

また、経営陣に気に入られれば昇進しやすくなったり、業務上で新しいチャレンジをしたい時に上の人たちから許可が下りるまでのスピードが大企業より早かったり、風通しの良いことでさまざまなメリットが得られます。

とはいえ、同族経営の会社には、本記事で紹介したようなデメリットが隠れているのも事実です。

メリット・デメリットの両方を網羅したうえで、自分は本当に同族経営の会社に就職・転職してもいいのかどうか慎重に検討しましょう。

 

同族経営・家族経営をやばいと感じるなら将来を見据えた対策を考えよう

同族経営・家族経営の中には「一族ファースト」のやばい会社が存在します。やばい同族経営企業に就職すると、一族の絶対的な権力に従うしかありません。

やばい同族経営の会社は、不当な人事評価により給料が上がりにくいだけでなく、ブラックな働き方を強いられたり急に会社の経営が傾いたりするデメリットがあります。

現在、同族経営の会社で働いていてやばいと感じるなら、手遅れになる前に将来を見据えた対策を考えましょう。

また、対策したうえで効果が得られない場合は、早めに転職するのも一つの手です。

日本の中小企業はほとんどが同族経営ですが、全従業員を大切にする良い同族経営企業も存在します。やばい同族経営の会社を見極める力を身に付け、自分にできる対策・行動を取っていきましょう。

著者情報

シュウジ
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兵庫県生まれ。都内の私立大学卒業後、パチンコにハマって単位を落とすも、一浪して大学を卒業。派遣社員として工場で働きながら、副業としてナイト系ドライバーやせどりを始める。
本業に嫌気がさし、転職を決意し資格取得に励む。奇跡的に大手人材会社に入社し、給料が倍になり人生が変わる。人材業界でさまざまな職業や経歴を持つ人々との交流を通じて知識を蓄え、2023年にブログ「仕事図鑑」を開設。