ケアマネージャー(介護支援専門員)は、介護サービスの提案やケアプランの作成、プランが円滑に進むよう各所に連絡・調整などを行います。
介護が必要な人やその家族を全面的にサポートする役割を担う専門職ですが、ケアマネージャーの年収は一体どれくらいなのでしょうか。
この記事では、ケアマネージャーの平均年収を年齢・性別・地域ごとに詳しく解説します。
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稼げる人と稼げない人の違い、給与を上げるポイントも紹介するので、ケアマネージャーで年収アップを目指す方は必見です!
ケアマネージャーの平均年収は約421万円
ケアマネージャーの全国平均年収は約421万円です。
この数字は「令和5年賃金構造基本統計調査」の「介護支援専門員(ケアマネージャー)」に掲載されている「月給29.7万円」「年間賞与65万円」のデータを参考に計算しています。
平均年収を踏まえて「大学卒業後の22歳から定年の60歳までの38年間、同一企業に勤め続ける」と仮定すると、生涯年収は約1億5,998万円です。
ケアマネージャーの平均年収が最も高くなるのは50〜54歳で、この年代の年収は446.17万円というデータが出ています。また、月給の統計データでは、月収24~25.9万円の人が最も高い割合を占めています。
ただし、ケアマネージャーの平均年収は職場内のポジションや雇用形態、担当する要介護者のレベルによっても大きく変わるため、上記の数値はあくまで目安としてご覧ください。
参考:
e-State政府統計の総合窓口「職種(小分類)性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」(参照 2024-09-16)
職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「介護支援専門員/ケアマネジャー」(参照 2024-09-16)
ケアマネージャーの収入内訳
ケアマネージャーの収入内訳は、収入の柱となる「基本給」「諸手当」と、業績に応じて支給される「賞与」で成り立っているのが一般的です。
諸手当には、通勤手当、職務手当、残業手当、家族手当などがあるほか、役職を上げればプラスの昇給や役職手当も支給されます。
また、ケアマネージャーは支援センターから要介護認定調査や要支援認定調査などの業務を委託されることもあり、その場合は基本給や諸手当に加えて「委託料」も支給されます。
なお、ケアマネージャーの給与の多くは、介護サービスを受けた利用者が対価として施設に支払う介護報酬から出ています。介護報酬額は要介護認定のレベルによって異なるため、要介護認定度が高い利用者をたくさん担当すればするほど介護報酬額は増加し、おのずとケアマネージャーの収入も高くなる仕組みです。
しかし、1人のケアマネージャーが利用者を多く抱え込みすぎた場合、一人ひとりの状況をきちんと把握できず、ケアプランの作成も適当になってしまうリスクがあります。
利用者が適切なサービスを受けられない事態が起きないように、担当する利用者が一定数を超えると段階的に報酬が減額される「逓減制(ていげんせい)」を採用しています。
そのため、従業員に対して利用者が多い施設に就職すれば収入がどんどん上がるというわけではない点は注意が必要です。
【年齢別】ケアマネージャーの平均年収
ケアマネージャーの平均年収は、年齢によって推移します。
年齢 | 平均年収 |
---|---|
20~24歳 | 255万円 |
25~29歳 | 318.22万円 |
30~34歳 | 353.27万円 |
35~39歳 | 412.13万円 |
40~44歳 | 443.01万円 |
45~49歳 | 433.77万円 |
50~54歳 | 446.17万円 |
55~59歳 | 411.24万円 |
参考:職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「介護支援専門員/ケアマネジャー」(参照 2024-09-16)
20~24歳の平均年収は255万円と低めですが、年齢を重ねて経験を積むことでケアマネージャーに必要な知識やスキルが身につき、年収も増えていきます。
また、35歳以降は平均年収が400万円台となり、60歳頃までずっとキープしているのも特徴です。この年代になると、現場をまとめるリーダーポジションに就くケースも珍しくないので、別途手当が支給されたり昇給額が増えたりして、安定した収入を得やすくなります。
最初こそ平均年収が低いものの、経験を積んで高いスキルを習得できれば、おのずと年収は上がっていくと言えます。
【性別】ケアマネージャーの平均年収
ケアマネージャーの平均年収は、男女で開きがあります。
以下の表では「(きまって支給する現金給与額×12カ月)+年間賞与その他特別給与額」の式で、男女別の平均年収を比較しました。
性別 | 平均年収(千円) | きまって支給する現金給与額 (千円) | 年間賞与その他特別給与額 (千円) |
---|---|---|---|
男女計 | 4,216.2 | 297.1 | 651.0 |
男 | 4,626.8 | 323.7 | 742.4 |
女 | 4,080.4 | 288.3 | 620.8 |
参考:e-State政府統計の総合窓口「職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」(参照 2024-09-16)
男性の平均年収が462.6万円、女性の平均年収が408万円であり、男性のほうが54.6万円高いです。
厚生労働省の調査によると、ケアマネージャーで働く人の男女別の割合は「男性17%」「女性83%」という結果が出ています。
女性中心の業界でありながら、男性のほうが平均年収が高い理由として、女性は結婚や出産を機に退職したり非正規雇用に切り替えたりする場合が多い点が挙げられます。
参考:厚生労働省「第2章 調査結果の概要(単純集計)」(参照 2024-09-26)
【地域別】ケアマネージャーの平均年収
ケアマネージャーの平均年収は、地域の特徴や需要、経済状況などによっても変動します。
東京都と政令指定都市のある道府県の平均年収は、以下の通りです。
都道府県 | 平均年収 |
---|---|
北海道 | 383.3万円 |
宮城県 | 434万円 |
東京都 | 463.4万円 |
埼玉県 | 467.9万円 |
千葉県 | 451.1万円 |
神奈川県 | 411.3万円 |
新潟県 | 456.2万円 |
静岡県 | 481.7万円 |
愛知県 | 465.3万円 |
京都府 | 434.7万円 |
大阪府 | 418.1万円 |
兵庫県 | 424.5万円 |
岡山県 | 402.1万円 |
広島県 | 395.5万円 |
福岡県 | 401.2万円 |
熊本県 | 352.4万円 |
参考:職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「介護支援専門員/ケアマネジャー」(参照 2024-09-16)
ケアマネージャーの平均年収が最も高い地域は静岡県の481.7万円、最も低い地域は熊本県の352.4万円です。
2つの地域の年収差は129.3万円と大きく、同じ職業でも地域によって収入にばらつきがあることがわかります。
ケアマネージャーの収入はその地域の介護サービスの需要によっても変わってくるので、ケアマネージャーで高収入を目指すなら、働くエリアにも注目しましょう。
ケアマネージャーの平均年収が低いと言われる理由
ケアマネージャーの平均年収は約421万円で、日本全体の平均年収が458万円である点を考慮すると、やや低めの給与水準です。
ケアマネージャーの平均年収が低いと言われる理由は、以下の通りです。
- 赤字経営の介護施設が多く、従業員に還元できるだけの利益を出せていないから
- システム上自分たちで報酬額を決めることができない職種だから
- 業務内容がハードなため労働に見合うだけの給与と感じられないから
近年は高齢者の増加に伴い、介護の需要は高まっているものの、赤字経営の介護施設は少なくありません。
赤字の介護施設が多い理由として、介護施設の運営やケアマネージャーの給与に充てられる介護報酬は介護保険制度により額が定められており、施設側が独自でサービスの報酬を決められない点が大きく関係しています。
たとえ提供するサービスの質を上げたり業務量を増やしたりしたとしても、介護施設は大幅に利益を上げるのが難しいのが現状です。人件費を抑えていかないと運営すること自体がままならないので、ケアマネージャーを含め介護職に就く人の給与は上がりにくいです。
また、ケアマネージャーの仕事内容は、ケアプランの作成、介護サービスの利用者とその家族のサポート業務、各所との日程調整など幅広く、業務をスムーズに行ううえで高い専門知識やスキルの習得が求められます。
重労働な割に給与が見合わないと感じる人が多いのも、年収が低いと言われる一因です。
参考:国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」(参照 2024-09-16)
ケアマネージャーで稼げる人・稼げない人
ケアマネージャーで年収アップを目指すなら、以下のようなスキルが必要です。
- コミュニケーション能力
- スケジュール管理能力
- 事務処理能力
- 判断力
これらの能力を踏まえて、ケアマネージャーで稼げる人・稼げない人の特徴をまとめました。
ケアマネージャーで稼げる人 | ケアマネージャーで稼げない人 |
---|---|
コミュニケーション能力のある人 | 急な呼び出しに抵抗がある人 |
時間の管理が得意な人 | 事務処理が苦手な人 |
的確な質問ができる人 | 優先順位の判断ができない人 |
ケアマネージャーは利用者だけでなく、利用者の家族や地域住民、外部の専門職とも連携を図る必要があり、コミュニケーションスキルや的確に質問する能力が求められます。
また、書類作成やデータ入力などの事務作業と平行して利用者宅の訪問や家族との面談もこなさなければいけないので、スケジュール管理が得意な人に適した職業です。
さらに、ケアマネージャーは休日や夜間でも利用者、その家族、事業所などからの相談・要望に応えるための柔軟な対応力も必要です。
たとえ利用者から急に呼び出されたとしても嫌がらず、相手に寄り添うことができる人は、利用者や職場のスタッフから高い評価を得られ、稼げるケアマネージャーになれる傾向があります。
ケアマネージャーで年収・給与を上げるポイント
ケアマネージャーが年収・給与を上げるためには、以下のような方法があります。
- 仕事に活かせる資格を取得してキャリアアップする
- 経験を積んで施設長などの管理職に就く
- より良い待遇の職場に転職する
- 独立型ケアマネージャーになる
ケアマネージャーの平均年収は低めですが、知識・経験を積んでキャリアアップを目指せば、平均以上の収入を得られる可能性があります。
各ポイントを詳しく解説していくので、ぜひ実践してみてください。
仕事に活かせる資格を取得してキャリアアップする
ケアマネージャーとして年収を上げたいなら、まず仕事に活かせる資格を取得しましょう。
仕事に役立つ資格を取れば、できる業務の幅が広がり大幅な昇給につながったり、資格手当や昇進して役職手当を支給されたりする場合があります。
ケアマネージャーにおすすめの資格は「社会福祉士」「主任ケアマネージャー」です。
- 【社会福祉士とは】
- 自力で日常生活を送るのが難しい人の支援を行う専門職を指します。
対象者のほとんどは高齢者となるため、ケアマネージャーで得た知識やスキルが役立ちます。
- 【主任ケアマネージャーとは】
- ケアマネージャーのリーダー役を担います。
主に、部下にあたるケアマネージャーの指導・育成、介護関連の事業所と連携体制の構築、地域介護の課題を解決するためのアドバイスを行います。
特に、主任ケアマネージャーを取得すれば、「居宅介護支援事業所」や「地域包括支援センター」といった主任ケアマネージャーの配置が義務付けられている施設への転職が有利に進められるメリットもあります。
主任ケアマネージャーを取得するのに特別な資格試験はないものの、特定の要件を満たしたうえで受講できる「主任介護⽀援専⾨員研修」を修了しなければいけません。
「主任介護支援専門員研修」の受講に必要な要件は、以下の通りです。
- 専任のケアマネージャーとしての実務経験が通算5年以上である
- ケアマネジメントリーダー養成研修を修了し、専任のケアマネとして通算3年以上である
- 主任ケアマネージャーに準ずる立場として、地域包括支援センターに配置されている
- ケアマネージャーの業務において十分な知識と経験を有していて、都道府県が適当と認めている
ケアマネージャーの業務に活かせる資格があれば、仕事に関わるすべての人たちから信頼されやすくなりキャリアアップしやすくなるので、積極的に取っていきましょう。
経験を積んで施設長などの管理職に就く
経験を積んで管理職に就くのも、ケアマネージャーが年収を上げる方法の一つです。
管理職になると基本給が上がるのはもちろん、役職手当もつくので収入が増えます。
ケアマネージャーから目指せる管理職は以下の通りです。
- 主任ケアマネージャー
- 介護施設の管理者・施設長
- 【介護施設の管理者と施設長とは】
- どちらも介護施設の責任者を指します。主に介護業務のマネジメントを行うため、明確な違いはありません。
他にも、人材採用・管理、施設の収支管理など、介護施設の運営業務全般を担当します。
介護施設の管理者・施設長は、施設の運営に携わるため大きな責任を伴いますが、その分年収を大きく伸ばせるメリットがあります。
ただし、ケアマネージャーから管理者・施設長を目指せる介護施設は、以下の特定の種類に限られている点に注意が必要です。
- 特別養護老人ホーム(社会福祉主事の要件を満たす、実務経験などが必要)
- グループホームや小規模多機能型居宅介護事業所
- 居宅介護支援事業所(主任ケアマネージャーであることが必須)
- 有料老人ホームやデイサービス、訪問介護事業所などのその他資格要件がない事業所
ケアマネージャーから管理職になると、スタッフの管理や介護業務全体の進捗管理といったマネジメント業務も任され、それまで以上に仕事量が増えます。そのため、業務量のバランスに常に気を配り、仕事の優先順位を立てることを意識しましょう。
より良い待遇の職場に転職する
今よりも良い条件の職場に転職するのも、ケアマネージャーの年収を上げるのに効果的な手段です。
ケアマネージャーの労働条件や給与条件は、介護施設によって大きく異なります。このまま働き続けても満足できる収入が得られないのであれば、思い切って職場を変えたほうが給料が上がる可能性があります。
また、転職先によっては、前の職場より昇進のチャンスが得られる点も転職するメリットです。
一つの介護施設における管理職の席数には限りがあるため、今の職場の管理職ポストがすべて埋まっている場合、役職に就くのは難しいです。管理職のポストに空きがある介護施設に転職できれば、自分の頑張り次第で昇進できる可能性が高まり、年収アップも期待できます。
ただし、人事評価のシステムや昇進の条件などは職場によって異なるので、転職先を決める際は「人事評価において自分が納得できる基準を設けているかどうか」「中途採用者の昇進実績があるかどうか」などを事前に確認しておくのが大切です。
他にも、主に居宅介護支援事業所に属する人を指す「居宅ケアマネージャー」として働いている人は、老人ホームなどの介護施設で働く人を指す「施設ケアマネージャー」に転職するのもおすすめです。
施設ケアマネージャーのほとんどは介護業務も兼任しており、施設によっては早番・遅番制度を採用しています。
介護業務に直接関わる人は、「介護職員等特定処遇改善加算」の対象になったり、夜勤に入れば深夜手当がついたりするので、居宅マネージャーよりも施設マネージャーのほうがおのずと収入が高くなりやすいのです。
独立型ケアマネージャーになる
ケアマネージャーには、介護施設や事業所に雇用される働き方だけでなく、独立開業するという働き方もあります。
独立型ケアマネージャーになれば、介護施設の運営状況によって収入が左右される心配がないので、自分の工夫次第で収入を増やせます。また、勤務時間や仕事内容を自由に決めやすいのもメリットです。
とは言え、独立型ケアマネージャーとして自由に働けるようになるためには、一定の集客が見込めて経営が安定していることが大前提です。最初のうちは、継続的に仕事がもらえるように営業や集客を積極的に行わなければいけません。
他には、利用者が介護保険を利用しない場合、収入が減るリスクがある点にも注意しておく必要があります。
なお、ケアマネージャーが独立開業するためには「居宅介護支援事業所」として法人化し、人員・建物・設備の基準を満たすのが条件です。
すべての準備が整うまでにおよそ半年ほどかかると言われているので、在職中からコツコツと準備を進めていきましょう。
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ケアマネージャーとして年収を上げる方法は、「業務に活かせる資格の取得」「管理職への昇進」「転職」「独立開業」などさまざまです。
しかし、どの方法も簡単ではなく年単位の時間をかけて準備しなくてはいけません。
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先述した通り、介護報酬額が定められている介護業界は大きな利益を出しにくく、ケアマネージャーで年収1,000万円に到達するのは非常に難しいです。
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ケアマネージャーで稼ぐには資格取得や管理職への昇進、転職や独立が重要!
ケアマネージャーの平均年収は約421万円で、他の職種と比べて低めです。
しかし、本記事で紹介した以下のポイントを意識して行動すれば、平均以上の年収に上げるのも不可能ではありません。
- ケアマネージャーの仕事に活かせる資格を取得してキャリアアップする
- 経験を積んで施設長などの管理職に就く
- より良い待遇の職場に転職する
- 独立型ケアマネージャーになる
ケアマネージャーが年収を上げるためには、主に「昇進」「転職」「独立」の中からどの方向性でキャリアを築いていくのか決めておくのが大切です。どのキャリアにおいても、業務に関する高い知識やスキルを習得している証明として資格を取ることが求められます。
これからケアマネージャーとしてキャリアアップを目指したい方は、まず仕事に活かせる資格の取得から始めてみるのがおすすめです。
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資格を活かしてキャリアを築き、稼げるケアマネージャーへ成長していきましょう!