税理士は国家資格が必要な専門性の高い職業です。
しかし、努力して税理士になったものの、意外と稼げていないと悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、税理士の年収を年齢や性別、地域別含めてデータをもとに解説しているほか、現状上手く稼げていない税理士に向けて、年収を上げるための具体的な戦略もご紹介しています。
今よりももっと稼ぎたい税理士の方に有益な年収をアップさせるための情報も取り上げているので、ぜひ参考にしてみてください。
税理士の平均年収は746.6万円
税理士の平均年収は約746.6万円と言われています。
これをもとに生涯年収を計算すると、約2億8,370万円です。
(※大学卒業後に22歳から定年の60歳まで同一企業で働き続けた場合の38年間で単純計算をした場合)
税理士の年収のピークは55歳から59歳の約1,072万円で、この年代では年収が1,000万円を超えます。また、月収で考えると、40~44.9万円の人がもっとも人数割合として大きいというデータも出ています。
ただし、税理士は働き方によって収入が大きく変わるため、これらの数値は一つの目安として参考にしてみてください。
参考:職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「税理士」(参照 2023-12-18)
税理士の年間賞与の平均は174.4万円
「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、税理士の年間賞与平均は174.4万円です。これは、全職種の平均年間賞与である81万円と比較してもかなり高い金額です。
ただし、下記のデータは公認会計士と税理士が一括りにされているので、その点はご留意ください。
年齢 |
所定内給与額(千円) |
年間賞与その他特別給与額(千円) |
全年齢 | 439.0 | 1744.8 |
20~24歳 | 278.2 | 948.4 |
25~29歳 | 310.3 | 1235.3 |
30~34歳 | 352.3 | 1588.7 |
35~39歳 | 400.3 | 1915.1 |
40~44歳 | 420.1 | 2172.5 |
45~49歳 | 494.2 | 1769.9 |
参考:
e-State政府統計の総合窓口「厚生労働省|賃金構造基本統計調査|職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」(参照 2023-12-18)
e-State政府統計の総合窓口「厚生労働省|賃金構造基本統計調査|年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」(参照 2023-12-18)
また、税理士の賞与は年齢によって変動し、20歳から24歳で94.8万円、25歳から29歳で123.5万円と増加傾向にあります。年齢が上がるにつれて賞与額も上昇していく様子が見て取れます。
【年齢別】税理士の平均年収
税理士の平均年収は年齢によって大きく変わります。
年齢が上がるにつれて平均年収も上がっていくことから、実務経験の積み重ねや専門性の向上による昇給、役職手当などの年収アップなどが影響していると考えられます。
年齢 | 平均年収 |
20~24歳 | 約475万円 |
25~29歳 | 約568万円 |
30~34歳 | 約619万円 |
35~39歳 | 約722万円 |
40~44歳 | 約794万円 |
45~49歳 | 約820万円 |
たとえば、20歳から24歳の税理士の平均年収は約475万円です。この時期は税理士としてのキャリアの初期段階のため、平均年収がもっとも低いです。25歳から29歳では平均年収が約568万円になり、キャリアアップしたことによる昇給が見て取れます。
さらに、45歳から49歳になると、平均年収が800万円に達します。この年代は、高い専門性と豊富な経験を活かし、高い報酬を得る人が多いです。
【性別】税理士の平均年収
税理士の平均年収は性別によっても異なります。
男女の賃金格差は税理士に限らず別職種でも存在しますが、税理士でも下記の表のように平均年収に差がある傾向です。
なお、平均年収は「きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。
また、下記のデータはデータだと公認会計士と税理士が一括りにされているので、その点はご留意ください。
性別 |
平均年収(千円) |
きまって支給する現金給与額(千円) |
年間賞与その他特別給与額(千円) |
男女計 | 7,466.4 | 476.8 | 1744.8 |
男 | 7,936 | 504.1 | 1886.8 |
女 | 5,950.3 | 388.6 | 1287.1 |
具体的には、男性税理士の平均年収は約793.6万円、一方で女性税理士の平均年収は約595万円です。
税理士としてのキャリアを目指す際には、このような性別による収入差も考慮に入れ、ライフプランも含めて慎重に計画を練ることが重要です。
【地域別】税理士の平均年収
税理士の収入水準は、各地域それぞれの経済状況や市場の需要などに応じて異なる傾向にあります。
東京都と政令指定都市のある道府県の平均年収を比べてみると、以下の通りです。
都道府県 | 平均年収 |
北海道 | 678.3万円 |
宮城県 | 399.4万円 |
東京都 | 867.1万円 |
埼玉県 | 527.9万円 |
千葉県 | 671.3万円 |
神奈川県 | 582.7万円 |
新潟県 | 405.2万円 |
静岡県 | 659.5万円 |
愛知県 | 653.7万円 |
京都府 | 974万円 |
大阪府 | 701.8万円 |
兵庫県 | 904.9万円 |
岡山県 | 1,183万円 |
広島県 | 556.1万円 |
福岡県 | 727.3万円 |
熊本県 | 446.9万円 |
もっとも年収が高い傾向にある東京の税理士の平均年収は867.1万円ですが、もっとも低い数値が出ている宮城県では399.4万円とかなり差が出ていることが分かります。
このように、地域によっての年収の差が大きいので、働く地域を見直すだけでも税理士としての年収をアップさせられる可能性があります。
税理士の平均年収が低いと言われる理由
これまで見てきた通り、税理士の平均年収は全職種の平均と比べれば高いです。
しかし、「税理士の年収」は低いと言われることも多々あります。
税理士の年収が低いと言われる主な理由は、資格取得の難易度とコストを考慮すると、得られる収入が割に合わないと感じられるケースが多いからです。
特に、下記の三つの理由が「税理士の平均年収が低い」と言われる主な理由です。
- 税理士になるには税理士試験に合格する必要がある
- 税理士試験は超難関の国家資格にあたり合格率は19.5%と狭き門
- 試験の難易度や資格取得にかかる時間・コストを踏まえると、年収が高いとは言い切れない
税理士試験に合格するのはとても難しく、令和4年度の合格率はわずか19.5%でした。
税理士試験は5科目全てに合格する必要があり、1科目のボリュームも大きいため、1年で全科目に合格することは難しいとされています。最終合格までには3~5年、あるいはそれ以上の時間が必要とする人も珍しくはありません。
そのため、資格を取るための長期間の学習は、体力や精神面での負担も大きく、収入とのバランスを考慮すると必ずしも高年収とは言えないという見方もあるのです。
参考:国税庁「令和4年度(第72回)税理士試験結果」(参照 2023-12-18)
税理士で稼げる人・稼げない人の特徴
年収をアップさせるためには、税理士に求められる能力を磨きながら実務経験を重ねることが重要です。
税理士に求められる能力は、以下が挙げられます。
税理士に求められる能力
- クライアントに信頼されるための「共感力」
- 複雑な税法や財務データを解析し、最適な税務戦略を立案するための「分析力」
- 新規クライアント獲得のための「営業力」
- クライアントに対して適切な税務戦略やソリューションを提案するための「提案力」
これらの税理士として必要不可欠の能力をもとに、税理士で稼げる人、稼げない人の特徴をまとめました。
税理士で稼げる人 | 税理士で稼げない人 |
特徴1:几帳面で丁寧な仕事ができる人 | 特徴1:数字が苦手な人 |
特徴2:コミュニケーション力がある人 | 特徴2:コミュニケーションが苦手な人 |
特徴3:企業経営に興味があり情報分析ができる人 | 特徴3:人の話を鵜呑みにしやすい人 |
特徴4:倫理観と正義感を持っている人 | 特徴4:向上心がない人 |
特徴5:学び続けられる人 | 特徴5:ストレスを溜め込みやすい人 |
税理士は些細な数字の間違いも許されない仕事ですので、専門知識や几帳面さは欠かせません。
また、機械的に正確な仕事ができれば良いというわけではなく、クライアントと円滑なコミュニケーションを取ることも求められます。
税理士で年収・給与を上げるポイント
ここからは、税理士で年収・給与を上げるポイントを具体的に3つ紹介していきます。
税理士の平均年収は全職種の平均年収よりも高いですが、働き方によっては思ったように年収が上がらない場合もあります。
これら3つについて詳しく解説をしていきますので、「現在の年収・給与に不安がある」「もっと年収を上げたい」という方は以下の3点をぜひ参考にしてみてください。
- 税理士法人に入社して昇進する
- 大手・中堅税理士法人で働く
- 税理士で独立開業する・開業税理士になる
大手・中堅税理士法人に入社する
税理士で年収・給与を上げる方法の2つ目は、大手・中堅税理士法人で働くことです。
事業所の規模が大きくなるにつれ、年収が上がりやすい傾向にあります。
実際に、事業所の規模別に、給与や賞与の金額を比較した結果は以下です。
なお、平均年収は「きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。
また、下記のデータはデータだと公認会計士と税理士が一括りにされているので、その点はご留意ください。
事業所の規模 |
平均年収(千円) |
きまって支給する現金給与額(千円) |
年間賞与その他特別給与額(千円) |
10人~99人 | 6,930.6 | 412.7 | 1978.2 |
100人~999人 | 7,784.3 | 533.9 | 1377.5 |
1000人以上 | 8,614 | 540.0 | 2134.0 |
より規模の大きい企業に所属すると高収入になる傾向にあるので、大企業へ転職するという道は有効と言えます。
税理士法人に入社して昇進する
税理士で年収・給与を上げる方法の1つ目は、税理士法人で昇進することです。
税理士法人とは、税理士法に基づいて税理士業務を組織的に行うことを目的として、2名以上の税理士が社員として在籍している法人を指します。一般の雇用形態の企業とは異なり、社員全員が代表権限を持っており、無限責任社員として働いているという点が特徴です。
年収1,000万円以上の税理士は、税理士法人の社員に多い傾向にあります。そして、同じ税理士法人内であっても、役職・職位や部署・担当によって年収は変わるので、昇進することでより年収を上げることにもつながるのです。
また、世界的にも実績を誇る業界TOP4の税理士法人があり、これらの法人は「BIG4税理士法人」と呼ばれています。
BIG4税理士法人
- PwC税理士法人
- KPMG税理士法人
- EY税理士法人( Ernst & Young Tax Co.)
- デロイト トーマツ税理士法人
有名税理士法人は入社自体が難関ではありますが、給与水準が非常に高く、高収入を目指しやすい傾向にあります。
税理士で独立開業する・開業税理士になる
税理士で年収・給与を上げる方法の3つ目は、税理士として独立開業する・開業税理士になることです。
税理士として独立開業することのメリットは、働いたら働いた分だけ収入が増える点です。独立すれば、企業内税理士のように時給・月給・年棒制で収入を決められていないので、自分の成果に直結した報酬が得られるようになります。
人脈がすでにできていて、独立後に仕事に困る心配がない高いスキルを持っている場合は、開業するのも一つの手段です。
しかし、開業税理士になれば、仕事を自分で取ってこなければならないという点には注意が必要です。開業は自力で営業をしてクライアントを見つけることができなければ、収入が不安定になるということでもあります。
日本税理士会連合会のアンケートによると、開業税理士の年収は「300万以下が33.1%」「300万~500万が17.6%」、次いで多かったのが「700万~1,000万で14.2%」となり、中央値は300万円以下でした。
営業が苦手な方や、まだ業界内での実績がとぼしい方は、開業税理士の道は厳しいとも言えます。
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参考
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「マイナビ税理士」
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「ミツカル」
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「最速転職HUPRO(ヒュープロ)」
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今すぐ稼ぎたい方や、これまでとは違ったキャリアを形成していきたい人は、ナイト系の仕事も一つの手段になります。
税理士で稼ぐには勤務先の法人規模や勤務年数が重要
平均年収746.6万円の税理士は、全職種の平均年収と比べると高い部類に入る仕事です。
実際のデータを見てみると、国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均年収は男性が563万円、女性が314万円、男女計で458万円となっています。
しかし、税理士は働き方によっては平均年収を下回ってしまうケースもあるので、年収をアップさせたい方は注意が必要です。
税理士として稼ぎたい方は、本記事でご紹介した下記のポイントを参考にして、稼げる税理士を目指しましょう。
【税理士として稼ぐポイントのおさらい】
- 税理士の平均年収が高い地域で働く
- 税理士としての経験・スキルを高めて昇給を目指す
- 税理士法人に入社して昇進する
- 大手・中堅税理士法人に入社する
- 営業力や実務経験を高めて独立開業する
参考:国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」(参照 2023-12-18)