校正は、主に印刷物やWebコンテンツなどの文章に誤字・脱字や文法的な誤り、表記ゆれなどがないか、文章のつながりに矛盾がないかなどを確認し、正しく修正をする仕事です。
質の高い印刷物やWebメディアを作るのに欠かせない存在ですが、校正者の年収はどれくらいなのでしょうか。
本記事では、校正者の平均年収や収入内訳、雇用形態・地域ごとの年収差などについて解説します。
稼げる人と稼げない人の違いや校正の仕事で給与を上げるコツも紹介するので、校正者として年収アップを目指す方はぜひ参考にしてみてください!
校正者の平均年収は425万円
校正者の全国平均年収は、約425万円です。
この数値は「求人ボックス給料ナビ」を参考に「正社員」「派遣社員」「アルバイト・パート」の収入データから算出しました。
大学卒業後の22歳から定年を迎える60歳までの38年間、同一企業に勤務し続けると仮定すると、校正者の生涯年収は約1億2,350万円になります。
上記の数値は校閲者の年収ではありますが、校閲者という括りで校正の仕事を募集している企業も多いです。
なお、雇用形態別の給与相場は、正社員の月給が35万円程度、派遣社員の平均時給が1,672円、アルバイト・パートの平均時給が1,198円という結果が出ています。
しかし校正の仕事は、就職先や校正作業以外の専門知識の有無、受ける案件の数などによって、年収が大きく変わります。
実際、正社員の給料分布でボリュームが多いゾーンは320〜379万円で、年収幅が広いため、個人の実力や受けている案件などが収入に直結しやすいです。
また、三大出版社(集英社・小学館・講談社)といった大手出版社の管理職になると、年収1,000万円台を実現することも可能です。
参考:求人ボックス給料ナビ「校閲の仕事の年収・時給・給料(求人統計データ)」(参照 2024-08-19)
校正者の収入内訳
校正者の収入は、正社員の場合、「基本給+賞与+諸手当」という内訳で構成されるのが一般的です。
諸手当の内容は企業によって異なるものの、交通費手当、家族手当、時間外手当などの一般的な手当が支給されるケースが多く、役職が上がればプラスで役職手当もつきます。
役職手当は安定した給与アップにつながるので、校正者として年収を上げるなら、正社員として雇用された上で管理職への昇進を目指すのも手です。
また、新聞社のような夜勤がある職場や締め切り前の出版社などでは、深夜手当が支給される場合もあります。
ただし校正者は、フリーランスや非正規で働く人の割合が大きく、上記で紹介したような収入内訳にならないケースが多いことをご承知おきください。
特にフリーランスは、収入は出来高制で支払われます。報酬は「1文字〇円」「1案件〇円」といったルールで決められ、賞与や手当はつきません。
校正者になる際は、働き方による収入内訳の違いを理解し「自分が最も年収を上げやすい働き方」を考えてみましょう。
【雇用形態別】校正者の平均年収
校正者の平均年収は、雇用形態によって異なります。
「正社員」「派遣社員」「アルバイト・パート」の平均年収をまとめると、以下の通りです。
なお、非正規雇用者の平均年収は「求人ボックス給料ナビ」に掲載された平均時給を参考に「(時給×1日の労働時間8時間)×1年間の勤務日数240日」の式で算出しています。
雇用形態 | 平均年収 |
---|---|
正社員 | 425万円 |
派遣社員 | 321万円 |
アルバイト・パート | 230万円 |
参考:求人ボックス給料ナビ「校閲の仕事の年収・時給・給料(求人統計データ)」(参照 2024-08-19)
正社員と派遣社員の年収差は104万円、正社員とアルバイト・パートの年収差は195万円でした。
業界・職種を問わず、非正規雇用者は正社員に比べると年収が下がる傾向にありますが、校正は特に年収差が大きいです。
また、この表の非正規雇用者の年収は、あくまで8時間のフルタイム勤務をした想定で計算しています。
しかし、非正規雇用の中には短時間勤務の校正者も多いため、実際の派遣社員、アルバイト・パートの平均年収はさらに低い可能性が高いです。
【地域別】校正者の平均年収
各地域の校正者の平均年収は、以下の通りです。
平均年収額は「派遣社員」「アルバイト・パート」の年収も含めて算出しています。
都道府県 | 平均年収 |
---|---|
東京都 | 339.5万円 |
神奈川県 | 343.9万円 |
大阪府 | 295.8万円 |
福岡県 | 424万円 |
参考:求人ボックス給料ナビ「校閲の仕事の年収・時給・給料(求人統計データ)」(参照 2024-08-19)
4都府県の中で最も校正者の平均年収が高かったのは福岡県の424万円、最も低かったのは大阪府の295.8万円でした。
ただし、大阪府は派遣社員、アルバイト・パートの年収も含んでいるのに対し、福岡県は正社員のみの年収です。
非正規雇用者の年収も含めて計算すれば、福岡県の平均年収はもう少し下がると予想されます。
ちなみに、正社員のみの平均年収で比較すると、東京都が450万円と最も高く、神奈川県が371万円と最も低い結果となりました。
とは言え、校正の仕事はフルリモートでも対応できるので、近年はリモートで仕事をする人も多いです。
居住地から離れたエリアの企業の案件を受注することも可能で、社員としてオフィスに出社する働き方以外であれば、エリアに縛られないで報酬が高い仕事を選びやすい職業と言えます。
校正者の平均年収が低いと言われる理由
国税庁の統計によると、日本の給与所得者の平均年収は458万円です。
この数値と比較すると、校正者の平均年収は425万円で低めと言えるでしょう。
校正者の平均年収が低いと言われる理由は、主に以下の3つが考えられます。
- 技量・経験によって収入差が生じやすい職業のため
- アルバイトや派遣など非正規雇用に頼っている企業が多いため
- 校正業務をAIで代用する流れになりつつあるため
校正は、技量や経験、専門性を問われるので、スキルの有無が収入に反映されやすい実力主義の仕事です。
能力を活かして高年収を得ている校正者がいる一方で、あまり稼げていない校正者もいるので、全体の平均年収は低めとなっています。
また、職種を問わず、非正規雇用よりも正規雇用のほうが高年収になりやすいですが、校正者として正社員になるのは狭き門です。
校正業務はアルバイトや契約社員、派遣といった非正規雇用者に頼っている会社が多いため、正社員の校正者自体が少なく、年収が上がりにくいという実情があります。
近年はリモートワークの環境やオンライン上でクラウドソーシングサービスなども普及していることから、業務委託や副業で校正の仕事を外注する企業も増えています。
その結果、ますます正社員として活躍している校正者は減りつつあるようです。
さらに、言語処理能力に優れたAIの登場で校正作業の基礎的な部分はまかなえるようになってきたことから、スキルが低めの校正者の給与が下降傾向にあるのも、校正者全体の平均年収が低めになる一因です。
校正者で稼げる人・稼げない人
年収を伸ばしたい校正者に必要なスキルは以下の通りです。
- 高い日本語の知識や文章力
- 集中力
- コミュニケーション能力
上記の能力を踏まえ、校正者として稼げる人・稼げない人の特徴をまとめました。
校正者で稼げる人 | 校正者で稼げない人 |
---|---|
集中力のある人 | 大雑把な人 |
柔軟に対応できる人 | 自信過剰な人 |
地道に作業できる人 | 責任感のない人 |
校正者は、誤字脱字がないか、適切な文章表現が使われているかなどを気にしながら、集中して長時間にわたって文章を読まなくてはいけません。
文章を読むのが苦にならないという点は大前提として、正しい日本語知識や文章力、そして集中力がある人に適性があると言えます。
校正の仕事は原稿の読み込み、文章の修正などの地道な作業がひたすら続くため、最後まで責任をもって根気強く働ける人でなければ務まりません。
校正作業が不十分のまま文章が世に出てしまうと、最悪の場合商品や企業のブランドが傷ついてしまうことにもなるので、校正の仕事は責任が重い仕事でもあります。
また、案件によって独自のレギュレーション(ルール)があり、案件ごとに柔軟な対応ができる校正者は重宝されます。
正確性が求められるうえに納品物には締め切りがあるので、大雑把な人やスケジュール管理が苦手な人よりも、几帳面な人のほうが高年収を目指しやすいです。
また、自分の校正作業に自信があるあまりに、自らの作業の見直しをあまりしない人や、他者からの指摘に対して自分の意見を絶対に曲げない人は、校正者として稼ぎにくいです。
自分の作業に対しても十分に見直しをしてから納品する慎重さや、自分の誤りもしっかり受けて入れて訂正できる校正者がクライアントからの信頼を得られます。
校正者で年収・給与を上げるポイント
校正者が年収・給与を上げるポイントは、以下の通りです。
- 校正以外の知識・スキルを身に付ける
- 専門性の高い校正を行う
- 規模の大きい会社に転職する
- フリーランスとして独立する
校正者は年収が低めと言われていますが、知識を身につけて受ける案件の幅を増やしたり、働き方を見直したりすることで、年収が伸びる可能性があります。
各ポイントを詳しく解説していくので、これから校正者を目指す方はもちろん、すでに校正者として働いている方も必見です。
ポイント1:校正以外の知識・スキルを身に付ける
校正だけに特化した求人は、現在のところあまり多くありません。
昨今は誰でも使用できるAIツールで校正作業がある程度まかなえるようになってきており、校正者に校正を頼まないという企業も増えてきています。
そのため、校正以外の知識やスキルも身につけて自らの価値を高め、就業先や受けられる案件の選択肢を増やすのがおすすめです。
そこでおすすめしたいのが「校閲」のスキルです。
- 【校正と校閲の違い】
- どちらも「文章を確認して誤りを修正する」作業ではありますが、確認するポイントが異なります。
校正
主に文章の表記を正す作業です。
誤字や脱字、文法的な誤り、表記ゆれがないか、文章の長さが適切か、文章の形式がルールに沿っているかといった観点を確認し、誤りを修正します。
印刷物の校正の場合は、元原稿と実際にレイアウトされた文章を精査し、誤りを見つけ出す「突き合わせ」「赤字照合」といった作業も行います。
校閲
文章の内容の誤りを正す作業です。
記載されている内容が事実かどうか、固有名詞や単位などの誤りがないか、差別的な表現・不適切な表現が使われていないか、法律に基づいた記載がされているか、原稿内の内容に矛盾がないかといった観点を確認し、誤りを修正します。
引用元の資料の信憑性や文章の因果関係の確認、筆者やキャラクターの一貫性なども含めて、文章の整合性をチェックします。
校閲はあらゆる資料を確認しての事実確認や、トレンドや最新の法律などに基づいての表現チェック、筆者の特徴を考慮してのチェックなどを行うため、現時点のAIのみでは行えない作業と言えます。
また、「校正のみ」「校閲のみ」の仕事内容で募集している求人は少なく、基本的にはどちらもできる人が求められます。
中には「校閲」の表記で校正者を募集している会社もあるので、校正と校閲のスキルをどちらも持っていると仕事が探しやすいです。
そして、校正・校閲にプラスして「ライティング・編集・進行管理」なども自らこなせると、さらに業務の幅が広がり年収アップにつながります。
他にも、主にWebコンテンツでの校正やWebを通しての仕事のやりとり等に必要なExcel・WordといったPCツールだけでなく、就業を希望する業界で使えるツールのスキルや知識があると重宝されます。
たとえば、広告代理店や印刷会社では、Illustrator・Photoshopなどの画像編集・デザインソフトを使えると活躍できる場が広がりやすいです。
Webコンテンツの校正を行う場合は、検索エンジン最適化(SEO)にも配慮して文章を校正できる人が稼ぎやすくなります。
ポイント2:専門性の高い校正を行う
専門知識をつけて、より難易度の高い案件を引き受けるのも、校正者が年収を上げる方法です。
専門知識が必要となるコンテンツの校正は誰にでも任せられるものではないため、報酬が高単価になる傾向があります。
特に「医療・美容」業界の校正は、法律関連のチェックが必要となる場合が多く、高額になりやすいです。
他にも「生物科学・農学・薬学」「工学・物理学・化学・情報科学」、「経済学・金融・法律」「人文・社会科学、歴史、芸術」などの高度な専門知識を必要とするジャンルも、報酬が高い傾向にあります。
「自分が得意とするジャンル」を絞って専門性を高めることで、的確に実績を作って次の仕事につなげていきやすくなるでしょう。
また、校正や校閲の仕事は「簡易的なチェック」「文法も含むチェック」「事実確認」のようにいくつかの段階に分けられ、何をどこまで確認するのかによっても報酬が異なります。
たとえば、簡易的なチェックのみを依頼された場合の報酬は、0.5円~2円ほどが相場で、1000字あたりだと500円~2,000円程度です。
ところが、これが薬事法のチェックも含むとなると、文字単価が5円以上になることも多く、同じ文字数でも報酬の目安は約5,000円~15,000円にまで跳ね上がります。
もちろん、専門性を高めるためには特定分野の知識を身につける必要があり、簡単ではありません。
しかし、知識をつければ高額の案件を多く担当できるようになり、大幅な年収アップが見込めます。
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校正者は常に勉強する姿勢と探求心が必要な仕事です。校正者になった後も常に知識のアップデートを怠らないようにしましょう。
ポイント3:規模の大きい会社に転職する
事業規模が大きい会社は抱えている仕事が多く、さらには専門性が求められるため、従業員の給与が高めに設定されています。
年収を伸ばしたいなら、今より規模の大きい会社の校正者に転職するのも有効な手段です。
校正者が働ける規模の大きい会社と言えば、大手出版社・新聞社が代表ですが、他にも広告代理店や印刷会社、編集プロダクション、Webメディアの運営会社など、就業先は多くあります。
また、規模の大きい会社は福利厚生が充実していたり、新たなスキルが身につくよう学習制度が整っていたりと、働きやすさや稼ぎやすさにつながる取り組みが多いのも魅力です。
ただし、規模の大きい会社に転職して担当する業務の裁量が増えたからといって、必ずしも年収が増えるわけではありません。
転職は失敗すると今より年収が下がるリスクもあるため、必ず事前に「募集条件・待遇が自分の目的に合っているか」「自分の専門性を活かせる業界か」を確認することをおすすめします。
ポイント4:フリーランスとして独立する
校正者は、企業に属さずフリーランスとして働く人も多いです。
すでに十分な実力があるのなら、フリーランス校正者として独立するのもありです。
昨今は出版不況ということもあり、出版社が自社校正者を雇わずに外注をする流れが増えています。
また、出版は繁忙期・閑散期がある業界のため、繁忙期に外注の校正者を探すことも多く、フリーランスの校正者には根強い需要があります。
自分の裁量で働けるフリーランスは、異なる企業の案件を複数掛け持ちできるので、正社員以上の高年収を実現できる可能性が高いです。
受ける仕事を自分で選べるのもメリットで、高単価の案件だけを選んで受注すれば、効率よく年収アップさせることもできます。
フリーランスの校正者が仕事を獲得する方法は、「クラウドソーシングサイトを活用する」以外にも、「出版社やメディア運営会社に営業活動をする」「自分でWebサイトやブログを運営して実績をアピールする」などがあります。
一つに絞らずさまざまな方法を用いて、コンスタントに案件を獲得するのがポイントです。
ただし、フリーランスの校正者は、受注先からの依頼が減ったり、契約を打ち切られたりするなどして、突然収入が下がってしまうリスクを常に抱えています。
リスクを軽減して安定収入を得るためには、複数のクライアントと良好な関係を構築し、長期的に案件を確保しなくてはいけません。
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また、対応できるジャンルが多い校正者ほど高年収になりやすいので、幅広い案件に応じられるよう経験を積んでスキル向上に努めましょう!
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日本全体の平均年収と比較すると、校正者の平均年収はやや低めです。
しかし、以下のポイントを意識して行動すれば、年収を大幅に増やせる可能性があります。
- 校正以外の知識・スキルを身に付ける
- 専門性の高い校正を行う
- 規模の大きい会社に転職する
- フリーランスとして独立する
校正以外の業務や専門性の高い仕事を担当したり、転職・独立したりすることで、年収アップに期待できます。
「何から始めればいいか」と迷ってしまう方は、まずは高収入につながる案件を受けるための勉強から始めてみましょう。