清掃員は、オフィスやホテルなどさまざまな施設のあらゆる場所をきれいにする役目を担っており、多くの人が快適に過ごすうえで欠かせない存在と言えます。
そんな清掃員の年収がどれくらいなのか気になる方も多いでしょう。
この記事では、清掃員の平均年収はもちろん、年齢や性別、地域による年収の違い、さらに稼げる人と稼げない人の特徴や年収アップのコツについて詳しく解説していきます。
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清掃員への転職を検討している方や長く清掃員の仕事を続けたい現役の方にとって参考になる内容なので、ぜひご覧ください!
清掃員の平均年収は280万円
清掃員の平均年収は約280万円です。
(jobtagの月給21.4万円、年間賞与21.7万円のデータをもとに換算)
この数字をもとに、大学を卒業して22歳から60歳の定年まで同一企業に38年間勤務し続けた場合の生涯年収を単純計算した場合、約1億640万円になります。
また清掃員の年収がピークに達するのは45~49歳で約324.89万円です。
日本全国の平均年収は約458万円であることから、清掃員は稼ぎにくい職業であると言えます。
職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「ビル清掃」(参照 2024-3-26)
清掃員の収入内訳
清掃員の収入内訳は、多くの企業で「基本給・賞与・諸手当」で構成されています。
清掃員の給与の変動に大きく関わるのは、諸手当です。清掃員に支給される手当は、主に「通勤手当」「時間外手当」「資格手当」などで、他の職種と大きく変わりません。
手当の支給対象になりやすい清掃員の資格例は以下の通りです。
参考
・ビルクリーニング技能士検定
・高所作業車運転資格
・清掃作業監督者
清掃員は、勤務先の施設や業務内容によって対象の資格が異なります。資格取得することで専門性の高さが認められ、給与がアップするのはもちろん、同業種への転職活動に有利になりやすいのも魅力です。
【年齢別】清掃員の平均年収
清掃員の平均年収を年齢別で見てみると、以下のように45~49歳までは年収が上がり続けているのが分かります。
年齢 |
平均年収 |
20~24歳 |
241.75万円 |
25~29歳 |
282.91万円 |
30~34歳 |
297.82万円 |
35~39歳 |
315.29万円 |
40~44歳 |
319.25万円 |
45~49歳 |
324.89万円 |
50~54歳 |
297.97万円 |
55~59歳 |
284.98万円 |
清掃員は、限られた時間内に清掃を終わらせなければならず、業務内容によっては重い機器を使う場合もあるため、スピーディーに作業に行える体力が必要です。
50〜54歳以降は年収が右肩下がりになっている点を踏まえると、年齢による体力の衰えに応じて清掃員の年収も下がりやすいと言えます。
【性別】清掃員の平均年収
清掃員の平均年収を男女別で確認した場合、以下のように収入差が発生します。
※平均年収は「(きまって支給する現金給与額×12カ月)+年間賞与その他特別給与額」で算出
性別 |
平均年収 (千円) |
きまって支給する現金給与額 (千円) |
年間賞与その他特別給与額 (千円) |
男女計 |
2,795.3 |
214.8 |
217.7 |
男 |
3,070.6 |
233.0 |
274.6 |
女 |
2,461.1 |
192.7 |
148.7 |
ご覧の通り、男性と女性の年収は、50万円以上の収入差があります。
後ほど説明しますが、清掃業の中でも年収が高い傾向にある仕事は「特殊清掃」と「ゴミ収集」です。この2つの仕事に就く人は、女性より男性の方が圧倒的に多いと言われています。
また、女性の清掃員は、子育てやその他の家庭の事情で非正規雇用で働いている場合が多いことも、男女の収入差が大きい理由の一つとして考えられます。
【地域別】清掃員の平均年収
東京都と政令指定都市のある道府県の清掃員の平均年収は以下の通りです。
都道府県 |
平均年収 |
北海道 |
236.1万円 |
宮城県 |
274.5万円 |
東京都 |
348.2万円 |
埼玉県 |
285.4万円 |
千葉県 |
271.2万円 |
神奈川県 |
259.2万円 |
新潟県 |
229.7万円 |
静岡県 |
234.8万円 |
愛知県 |
253.9万円 |
京都府 |
230.3万円 |
大阪府 |
295.4万円 |
兵庫県 |
269.8万円 |
岡山県 |
249.6万円 |
広島県 |
255.8万円 |
福岡県 |
270.4万円 |
熊本県 |
190.3万円 |
清掃員の年収が最も高い地域は東京都で348.2万円、最も低い地域は熊本県で190.3万円です。2つの地域の収入差は157.9万円で、同じ職業でも就職先の地域によって年収が異なるのが分かります。
ただし、必ずしもこの表通りの年収相場になるとは限りません。
利用者が多い施設では、整備された環境下で快適に過ごしてもらうために、平均より給与を高くして清掃員を確保している背景があります。
たとえ年収相場が低い自治体だったとしても、訪問者数が多い施設に就職すれば、清掃員の年収は上がりやすいと言えます。
清掃員の平均年収が低いと言われる理由
先述した通り、清掃員の平均年収は280万円であり、日本における給与所得者の平均年収が458万円という点を踏まえると、低い数字と言えます。
清掃員の平均年収が低いと言われる理由は以下の通りです。
- 非正規で働いている人が多いから
- 高齢者が多く働いているから
清掃員は、職種にもよるものの、全体的に非正規雇用者の割合が大きく占めています。実際に、ビル清掃員として働く人が多いと感じる就業形態の割合は以下のような結果が出ています。
ご覧の通り、全体的に「正規の職員、従業員」より、「パートタイマー」「アルバイト」といった非正規雇用者が多いことが分かります。
清掃の仕事は、高度なスキルや専門知識を習得しなくても働ける職場が多く、なおかつ短時間勤務OKの求人が多いことから、自然と非正規雇用者の雇用率も高くなっているのです。
また、清掃業界では比較的高齢で働いている人が多い点も平均年収が低くなっている理由として挙げられます。
清掃員として働く高齢者の中には、年金を受け取っている人も少なくありません。働きながら年金をもらう場合、「月々の収入+年金額」が47万円を超えると、年金が減額もしくは支給停止になる可能性が高いです。
そのため、年金の支給が止められないように収入を調整する必要があり、あまり多く稼げない点も、清掃員の平均年収を押し下げる一因となっています。
日本年金機構「在職老齢年金の支給停止の仕組み」(参照 2024-04-08)
清掃員で年収1000万円を目指すことは可能?
清掃員で年収1000万円を目指すのはかなり難しいと言えます。
前項で平均年収が低いと言われる理由として正社員は非正規雇用が多いことを挙げましたが、求人ボックスによれば、正社員の平均年収も約367万円と低いのが現実です。
とはいえ不可能というわけではありません。後ほど詳しく解説しますが、清掃員の中でも給与の高い特殊清掃員や、独立開業によって年収1000万円を目指すことは可能です。
求人ボックス「清掃スタッフの仕事の年収・時給・給料(求人統計データ)」(参照 2024-09-26)
清掃員で稼げる人・稼げない人
高度なスキルや専門知識がなくても始められる清掃員ですが、向き・不向きは存在します。
まずは、清掃員に求められる能力をご紹介します。
- 忍耐力
- 体力
- 丁寧さ
上記の3つの能力が必要であることを踏まえたうえで、清掃員で稼げる人と稼げない人の特徴をそれぞれまとめてみました。
清掃員で稼げる人 |
清掃員で稼げない人 |
整理整頓が好きな人 |
自分のペースややり方に固執してしまう人 |
独立意欲がある人 |
潔癖症な人 |
メンタルが強い人 |
体力や忍耐力がない人 |
稼げる清掃員は、整理整頓をするのが好きで、自分の仕事に誇りを持って取り組んでいます。
清掃員の業務は基本的にルーティン化されていますが、マニュアル内の作業を効率よく丁寧な清掃をすることを求められます。そのため、仕事に飽きることなく向上心を持って働ける人が適しているといえます。
清掃業への向上心が高い人は、習得したスキルや知識を活かして独立する傾向もあります。
ハウスクリーニングやガラス清掃など、清掃業のジャンルによっては数カ月程度の実務経験で独立開業できるスキルや知識が習得しやすいのが特徴です。
清掃業は時代の流れに左右されにくく常に需要が高い業界なので、経営を軌道に乗せられれば、会社員時代以上の収入が得られる可能性があります。
また、稼げる清掃員はどんな環境下でも清掃を行える体力やメンタルの強さも持っています。
清掃現場によっては、思わず目を背けたくなるようなひどい汚れをきれいにしなければいけないケースも珍しくありません。
さらに、時間制限が設けられている場合が多いことから、自分のペースで仕事をすることが譲れなかったり、体力に自信がなかったりする人には難しい仕事と言えます。
清掃員で年収・給与を上げるポイント
ここからは、清掃員の仕事で年収・給与を上げるポイントを紹介していきます。
清掃員として年収・給与を上げるためには、下記のポイントを押さえておくことが大切です。
- 会社で昇進する
- 特殊清掃の仕事を行う
- 公務員のゴミ収集員になる
- 独立開業する
このように、キャリアアップしたり年収が高めの清掃業に就職したりして、年収を上げるための行動や努力が必要です。
それぞれのポイントを詳しく解説していくので、ぜひご一読ください。
ポイント1:会社で昇進する
清掃業界において、社内での昇進は収入アップの重要なカギになります。特に、管理職になることで基本給の増加や管理職手当の追加など、大幅な収入増が期待できます。
社内で昇進するためには、以下の行動を起こすのがおすすめです。
- 清掃業務のスキルに関する資格を取得する
- 管理職に必要なスキルを身に付ける
自身の勤務態度が高く評価されるのは大前提として、清掃に関する資格を取得しておくのも大切です。
資格取得の有無は、会社が従業員を評価するうえで重要な指標になります。忙しい業務の合間を縫って清掃業の資格を取れれば、仕事に対してやる気があるとみなされ、管理職への昇進に大きく近づくでしょう。
また、チームの責任者を担う管理職は、コミュニケーション能力やマネジメント能力も求められます。
日頃から多くのスタッフとコミュニケーションを取って良好な関係を築きつつ、問題が発生した際に改善策を提案できる冷静さを意識できれば、周囲からの信頼度も高まり、管理職への道が開けてきます。
ポイント2:特殊清掃の仕事を行う
清掃業の中でも年収が高くなりやすい特殊清掃の仕事に就く方法もおすすめです。
特殊清掃の年収相場は、約400~500万円と言われており、勤続年数に応じて収入が上がっていく傾向にあります。
特殊清掃は、人が亡くなった部屋やゴミが溜まった部屋など、通常の清掃で汚れを落とすのが難しい部屋を掃除するのが主な仕事内容です。
他の清掃業とは異なり、血液や体液が染み込んだ床や壁紙を張り替えたり、悪臭が漂う中で家具やその他物品を処分したりする必要があるため、悲惨な現場に耐えられるメンタルの強さが求められます。
また、特殊清掃の現場の状況によって、作業時は防護服、防毒マスク、安全保護ゴーグル、手袋、シューズカバーなどを身に着けなければいけません。
これらの防具を着用したうえで、季節や気温に問わず業務を行うため、防具の重さや暑さに耐えられる体力も必要です。
特殊清掃は、業務内容が特殊すぎるがゆえに向き・不向きがはっきりしやすい職業なので、あらかじめ自分が続けられる仕事かどうか確認しておきましょう。
ポイント3:公務員のゴミ収集員になる
特殊清掃同様に、年収の高い公務員のゴミ収集員に就く方法もおすすめです。
公務員のゴミ収集員は「技能労務職」として都道府県や市町村で雇用されます。
総務省が公開した「令和4年地方公務員給与の実態」によると、ゴミ収集員の年収は約640万円で、給与所得者の平均年収より高い数字が出ています。(※技能労務職「清掃職員」を参照)
ゴミ収集員は、指定されたルートに沿って各地域のゴミを収集するのが主な仕事内容です。収集するゴミの種類や地域によって1日の業務量は異なるものの、業務終了後すぐに退勤させてもらえる場合がほとんどなので、残業が発生しにくいメリットがあります。
ただし公務員試験に合格する必要があり、すぐに就職できるわけではないため、注意が必要です。
ちなみに、公務員のゴミ収集員は、普通自動車免許があれば応募可能な求人が多いです。自治体によっては「準中型自動車運転免許」「大型自動車運転免許」といった資格も求められます。
公務員としての待遇の良さや雇用の安定性を考えると、清掃員として活躍できるキャリアの一つと言えます。
ただし、民間企業を含めたゴミ収集員の平均年収は約382万円であることから、民間企業のゴミ収集員の給与は低い可能性が高いです。
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高収入を得たいのであれば、始めから公務員の清掃職員を目指しましょう。
総務省「令和4年地方公務員給与の実態」(参照 2024-04-08)
職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「ごみ収集作業員」(参照 2024-04-08)
ポイント4:独立開業する
清掃員としてスキルや知識を身に付けたうえで実務経験を積んだ後は、独立開業して大幅な年収アップを目指しましょう。
独立開業で成功するコツは、なるべく元請けの仕事を受注することです。同業他社からの下請けの仕事を複数受注する方法もありますが、下請けであるがゆえに1件あたりの報酬額が下がってしまいます。
元受けの仕事が受けられるようになれば、1件あたりの報酬が増えるのはもちろん、仕事の数をこなす必要がなくなるため、より高いクオリティのサービスを提供できるメリットもあります。
しかし、清掃業に限らず独立して元受けの仕事を受注できるようになるまでには、事業計画の立案、資金繰り、仕事獲得に向けた営業活動など、やらなければいけないことが多いです。
特に、事前に十分な資金を準備していないと、営業活動や集客が上手くいかず赤字経営が続いた場合、資金繰りが悪化してしまいます。
独立開業して成功するためには、清掃のプロフェッショナルとしてのスキルだけでなく、事業運営や集客に関する知識も必要です。
年収の高い清掃員の求人を探すなら?
より年収の高い清掃員の求人を探すのに役立つサイトをご紹介します。
現状の年収に不満がある場合、より給与の高い会社に転職をするのもキャリアアップするおすすめの方法の一つです。
求人サイトを活用すれば、希望条件を細かく設定できて、その条件に合った求人を紹介してもらえるメリットがあります。清掃員の求人は、地域に問わず豊富にあるので、求人サイトを使って自分にぴったりな求人を探し出してみてください。
清掃員以外だと、未経験でも年収1000万円を目指せるナイト系もおすすめ!
清掃員の平均年収は、日本の平均年収と比較すると低いです。
これは、他の業種に比べて最初から専門的なスキルや知識がなくても始めやすい職業であり、参入障壁も低いことから、大幅な収入アップが難しい点が理由として考えられます。
あらかじめ専門的なスキルや知識を習得しなくても高収入が狙える仕事を探している方は、ぜひナイト系も検討してみてください。
ナイト系の仕事は、18歳以上(高校生不可)であれば、学歴や経歴を問わず応募できる求人ばかりで、実力次第で未経験からでもスピード昇給・昇進が狙えます。
年単位の実務経験や資格取得といった形として結果を残さなければ昇進が難しい清掃業と比べると、ナイト系の仕事のほうが早くキャリアアップのチャンスが掴めるでしょう。
また、ナイト系は幹部職に就くことで年収1000万円を目指せる企業が多いのも特徴です。
清掃業の場合、独立開業して大成功を収める一部の企業を覗いて、1000万円以上の高収入を得るのは難しいことから、ナイト系は未経験からでも高収入が狙いやすい業界と言えます。
清掃員で稼ぐにはスキルをつけて独立開業することが重要!
清掃員の平均年収は、日本の平均年収よりも低くなりやすい職業です。とは言え、以下のように清掃員として収入を上げる方法はいくつかあります。
ポイント
・会社で昇進する
・特殊清掃の仕事を行う
・公務員のゴミ収集員になる
・独立開業する
これらの共通点は、「スキルの向上」「積極的なキャリアアップ」の2つです。スキルを身に付けたうえで社内の昇進を狙ったり、特殊清掃や公務員のゴミ収集の仕事に就いたりして、年収アップに向けて積極的に行動することが大切です。
さらに高い収入を目指すなら、独立開業という道もあります。独立開業して経営が軌道に乗れば、会社員時代では難しかった高収入を得られるでしょう。
「清掃の仕事が好きだからもっと収入を上げたい!」という方は、この記事を参考にしながらより豊かな生活を実現できるように取り組んでみてください。