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残業代が出ない会社をいつ辞めるべきか迷っている……
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残業代が出ない会社を、損せずに辞める方法は?
サービス残業は基本的に違法であり、残業代が出ない会社は早めの退職をおすすめします。
また、辞める際には、条件を満たしていれば未払いの残業代が請求できます。
本記事では、残業代が出ない会社をいつ辞めるかの判断基準、もし未払い残業代を請求するのならその方法、スムーズに辞める手順などを解説します。
残業代が出ない会社は思いきって辞めて、新しい一歩を踏み出しましょう。
残業代が出ない会社を辞めた方がいい理由

残業代が出ない会社を辞めた方がいい理由は、以下の3つです。
- 労働と報酬が釣り合っていないから
- 会社自体に問題があるから
- スキル習得やキャリア形成の機会を逃すから
各理由を詳しく解説します。残業代が出ない会社で働き続けると、どのようなリスクが起こりうるのか確認しましょう。
労働と報酬が釣り合っていないから
日本では、最低賃金が時間額で定められています。つまり「何時間働いたか」は、労働に対する報酬において、とても大事な指標になります。
しかし、残業してもその分の給料が出ない「サービス残業」が続くと、本来もらえるはずのお金を受け取れていないことになります。
これは、労働と報酬のバランスが崩れてしまっている状態です。
たとえば、手取り月20万円のお給料をもらっている場合で見てみましょう。
- 残業なし:手取り20万円÷労働160時間=時給1,250円
- 毎日1時間サービス残業:手取り20万円÷労働180時間=時給1,111円
- 毎日2時間サービス残業:手取り20万円÷労働200時間=時給1,000円
※労働時間は8時間勤務×5日×4週で計算
このように、働く時間が増えても給料が変わらなければ、実質的な「時給」はどんどん下がってしまいます。
こうした状況が続くと、金銭的な不安だけでなく、体調やメンタルにも悪影響を及ぼしかねません。
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ちなみに、2025年4月時点での東京都の最低賃金は時給1,163円です。
つまり、毎日1時間のサービス残業をしていると、最低賃金さえ下回ってしまうことに…。
会社自体に問題があるから
サービス残業が当たり前になっている職場は、会社自体に何かしらの問題を抱えていることも少なくありません。
たとえば、「人件費を減らすために一人にたくさんの仕事を任せる」「人を増やす余裕がないので、今いる人に無理をさせる」など、労働環境に無理があるケースが見られます。
このような企業では、残業代を払わずに働かせることでなんとか経営を成り立たせている場合もあり、経営そのものが不安定な可能性も考えられます。
さらに、残業代の未払いの職場では、他にも法令やルールに違反していたり、軽視されている可能性が高く注意が必要です。
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会社の経営状況や体制の問題は、社員ひとりの力ではどうにもできないことがほとんどです。頑張っても状況が変わらないと感じたら、無理をせず、より良い環境を探すことを視野に入れましょう。
スキル習得やキャリア形成の機会を逃すから
そもそも残業代が支払われない会社は、社員を大切に育てるというより「使い捨ての労働力」と見ている場合も少なくありません。こうした職場では、仕事を通じて新しい知識や経験を積むチャンスがなかなか得られない傾向にあります。
さらに、連日のサービス残業で心身ともに疲れてしまうと、自分で勉強したりスキルアップに取り組む余裕もなくなってしまいます。
結果的に、キャリアの幅が広がらず、いざ転職を考えたときにも選べる道が限られてしまう可能性があるため要注意です。
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「もっと成長したい」「将来に不安を感じる」と思ったら、それは大事なサインです。無理を重ねる前に、環境を見直すこともひとつの選択肢として考えてみましょう。
サービス残業は違法である

サービス残業を当然のように求める会社もありますが、残業代を払わずに働かせることは、原則として違法です。
そもそも、労働基準法では「1日8時間、週40時間」を超える労働には制限があり、超えて働かせる場合には「36(サブロク)協定」という会社と労働者との取り決めが必要です。
ですが、たとえ36協定があったとしても、残業代を支払わないことは認められていません。
つまり、サービス残業は多くの場合、法律に反している行為です。
ただし、中には「例外」となるケースもあるため、「自分の働き方は違法なのかどうか」を確認することが大切です。
みなし残業代(固定残業代)の範囲内の場合、違法ではない
会社から残業代が出ないとしても、みなし残業(固定残業代)がある場合は、必ずしも違法ではありません。
みなし残業は、会社があらかじめ一定の残業時間分の残業代を決めておき、その分を最初から給料に含めて支払う制度のことです。
ただし、「みなしだから何時間でも残業させていい」というわけではないので注意が必要です。
みなし残業制度で気をつけたいポイント
- みなし残業代は、基本給に加えて毎月固定で残業代が支給される制度
- みなし残業時間は会社と労働者間の合意に基づいて決定するが、上限は月45時間、年360時間が目安
- みなし残業時間を超えて残業した場合は、超過分の残業代が追加で支払われる
- みなし残業代を導入するためには、36協定締結が必要
- みなし残業代でかさましをして、基本給が最低賃金を下回る給与設定は違法
みなし残業がある会社で働いている方は、給与明細や就業規則を確認し、「いくらが残業代なのか」「時間数と合っているのか」をチェックしておきましょう。
役職によっては違法にならない場合がある
労働基準法の中では「管理監督者」という立場に限り、残業代が不要とされるケースがあります。
ただし、「課長」「部長」といった肩書だけで判断されるものではありません。
本当に管理監督者に該当するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない、重要な職務内容を有している
- 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない、重要な責任と権限を有している
- 現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものである
- 賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされている
役職や肩書があっても、上記の条件の労働実態が伴わなければ管理監督者ではないので、自分が当てはまるかどうかはよく確認しましょう。
残業代が出ない会社をいつ辞めるべきかの判断基準

残業代が出ない会社をいつ辞めるべきか迷ったときの判断基準は、主に以下の4つが挙げられます。
- より良い転職先を見つけられたとき
- 転職する理由を明確に言語化できたとき
- 改善される見込みがないとき
- 精神的・身体的に疲弊しているとき
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自身の状況と照らし合わせながら、タイミングを見極める参考にしてください。
より良い転職先を見つけられたとき
残業代が出ない会社を辞めるのに最も理想的なタイミングは、より良い転職先が決まったときです。
次の職場が決まっていれば退職による金銭的な不安はありませんし、今より待遇の良い職場に転職すれば残業代が出ない不満も解消される可能性があります。
ただし、転職先を見つける際の注意点は、現状を変えたい一心で焦らないことです。
転職先を選ぶ際に確認すべきポイントは以下のとおりです。
- 業務量は適切で、残業が常態化していないか
- 人間関係は良好か
- 自分の意見を言いやすい環境か
キャリアの空白期間や収入が途切れてしまうのを避けるため、転職活動は在職中に進めるのがベストです。次の職場が見つかったタイミングで、スムーズな退職を目指して行動を始めましょう。
転職する理由を明確に言語化できたとき
転職する理由を明確に言語化できたときも、今の会社を辞めるべきタイミングです。
「残業代が出ないから」は立派な理由ですが、「これからどう働きたいか」「どんな環境を求めているのか」といった部分まで掘り下げておくと、転職活動もよりうまく進めやすくなります。
- プライベートも大切にしたい
- 正当に評価される環境で働きたい
- 自分の得意なスキルを活かしたい
このように理由を明確にしておくことで、「ただ逃げたいから辞める」という不安も減り、将来を見据えた転職に踏み出しやすくなります。
改善される見込みがないとき
残業代が出ない状況に改善の見込みがないときも、会社を辞めるべきタイミングといえます。
残業をせずに済むように、業務効率を見直したりチームワークを高めたりする努力も重要ですが、個人でできる努力はそう多くありません。
「会社全体の体質」や「経営方針」に原因がある場合、個人での改善には限界があります。
早めに決断することで、心身の負担を減らし、次のチャンスを早くつかむことにもつながります。
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「会社の状況は今後も変わらない」と感じたら早めに辞めるための行動を取りましょう。
精神的・身体的に疲弊しているとき
精神的・身体的に負担が大きくなっている場合は、これ以上無理をし続けないためにも退職を検討しましょう。
精神面でのサイン
- 朝起きるのがつらい
- 気分の落ち込みが続いている
- 仕事のことを考えると不安や焦りが強まる
身体面でのサイン
- 慢性的な睡眠不足
- 倦怠感が抜けない
- 体調不良が続く
こうした状態が続くようなら、それは心や体が「限界に近い」と伝えているサインかもしれません。
精神的な疲弊はうつ病や適応障害になるリスクを高め、一度発症してしまうとその後時間をかけて治療する必要があります。
また、長時間の残業で帰宅が遅くなればそれだけ睡眠が少なくなり、肉体の休息が不十分になりがちです。
睡眠不足は疲労感が抜けないだけでなく、ホルモンバランスの乱れや免疫力の低下を招き、慢性的な不調の原因になります。
我慢し続けるよりも、いったん立ち止まって環境を見直すことで、自分を守ることにもつながります。
参考:
厚生労働省「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(参照 2025-06-20)
全国健康保険協会「【睡眠】眠りの質を高めよう」(参照 2025-06-20)
会社に未払いの残業代を請求する場合の事前準備

未払いの残業代は、条件を満たせば後からでも請求できます。
ここでは請求の前に確認しておきたいポイントや準備すべきことを、解説します。
未払い残業代の請求が時効になっていないか確認
残業代の請求には「時効」があり、給料日の翌日から3年間が期限です。
この期間を過ぎると、たとえ未払いでも残業代を取り戻せない可能性があるため、まずは対象期間を確認しましょう。
なお、時効の期間は法律の改正によって変わっています。
- 2020年4月1日以降の残業代 → 請求期限は3年
- 2020年3月31日以前の残業代 → 請求期限は2年
適用された時点のものが基準になります。
時期によっては一部が「2年時効」、一部が「3年時効」と分かれるケースもあるので、期間を正確に把握することが大切です。
会社に未払い残業代を支払う財力が残っているか確認
残業代を請求するうえで、会社が支払える状況かどうかも見ておきたいポイントです。
必ずしも確認できるとは限りませんが、経営が不安定な場合、倒産のリスクもゼロではありません。
他の社員も同様に未払いがある場合、まとめて請求が起きると負担が大きくなり、会社の資金繰りが悪化する可能性もあります。
仮に会社が立ち行かなくなると、以下のようなことが考えられます。
- 給与の支払いが遅れる
- 退職金がもらえない
- 在職中の転職活動に支障が出る
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会社の状態を把握しておくと、未払い残業代を請求するタイミングだけでなく、今の職場に残るか、転職をするかの検討材料になります。
未払い残業代を請求するための証拠収集
未払いの残業代を請求する際は事実を証明するための証拠が欠かせません。
残業代請求時に証拠となるものの一例をご紹介します。
- 就業規則
- 賃金規定
- 給与明細
- タイムカード
- 業務日報
- 勤怠管理ソフトの記録データ
- 残業中のメールのやり取り
- PCの起動ログ
- 通勤記録
いずれの資料も在職中のほうが集めやすく、できるだけ客観的に「いつ、どのくらい働いたか」が分かるものがあると、話がスムーズに進みやすくなります。
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もし退職済みであっても、法律に基づいて開示請求を行える場合があります。あきらめずに一度、確認してみましょう。
会社へ未払い残業代を請求する3つの方法

会社に未払い残業代を請求する具体的な方法は、以下の3つです。
- 会社へ直接交渉する
- 労働基準監督署や総合労働相談コーナーへ相談する
- 弁護士へ依頼する
それぞれにメリットやデメリットなど特徴があるので、自分に合った方法を選ぶことが大切です。
会社へ直接交渉する
まずは会社に直接、残業代について説明し、話し合いで解決を目指す方法です。
おさえておきたいのは「明確な証拠を用意すること」です。
また、自分以外にもサービス残業をしている社員がいるなら、その人と結託して合同で交渉するのも有効な手段です。その場合は、ほかの社員の個人情報やプライバシーを尊重し、自分の意見・主張を強要しない配慮が必要です。
ただし、会社の体質や上司の考え方によっては、話が進まないケースもあります。
話し合いに応じてもらえない場合は、無理せず別の手段に切り替えましょう。
【メリット】
・サービス残業の常態化の解消や、円満解決の道が開ける可能性がある
【デメリット】
・話を聞いてもらえず、個人では解決に至らないケースも多い
労働基準監督署や総合労働相談コーナーへ相談する
会社所在地を担当する労働基準監督署に相談することで、会社への行政指導が入ることがあります。
ただし、行政ができるのはあくまで経営や企業体質への「指導」であり、未払いの残業代を会社に支払わせる「命令」はできないため必ずしも未払いの残業代を回収できるわけではありません。
また、いきなり労働基準監督署にいくのがハードルに感じる場合は、総合労働相談コーナーが、気軽に現状の確認やアドバイスがもらえるためおすすめです。
無料で利用でき、匿名での相談も可能になります。
【メリット】
・行政からの指導で会社側の意識が変わる可能性がある
・法律や手続きに関する客観的な説明が受けられる
【デメリット】
・労基署は「命令」ではなく「指導」までしかできない
・個人の請求に対して動いてくれるとは限らない
弁護士へ依頼する
より確実に、そして精神的な負担を減らして進めたい場合は、労働問題に強い弁護士への相談も選択肢の一つです。
弁護士は、証拠の集め方のアドバイスから、会社との交渉、訴訟対応までを一貫してサポートしてくれます。
既に退職していて証拠が足りなくても、弁護士が代理人として請求することで会社が資料開示に応じるケースが多く、専門知識と経験を持つ弁護士は頼りになります。
また、代理人を立てれば手続きや交渉を任せられるので請求の手間が減り、精神的負担も軽減しやすいです。
【メリット】
・法的な根拠に基づいて請求できる
・手続きを任せられるため、心身の負担が減る
・会社との交渉がスムーズになりやすい
【デメリット】
・無料相談もあるが、本格的に依頼すると費用がかかる
残業代の出ない会社を辞めるまでの7ステップ

残業代の出ない会社を辞める手順は、以下のとおりです。
- 転職先を決める
- 退職後を見据えて準備をする
- 退職日を決める
- 退職届の作成
- 未払い残業代の請求書の作成
- 退職の意思表示、退職届提出、未払い残業代請求書の提出
- 引継ぎと退職あいさつ
会社から引き止められたときの対処法もお伝えします。ぜひ参考にしてください。
1.転職先を決める
在職中に次の転職先を決めておくと、収入が途絶えたり、ブランクが空く不安を避けられます。
サービス残業続きで転職活動をする時間が取れない場合は、転職エージェントを利用するのがおすすめです。
転職エージェントを利用すると、希望条件にマッチするおすすめの求人を紹介してもらえるので、求人選びにかかる時間を大幅に短縮できます。応募書類の添削や面接対策までサポートしてくれるサービスもあり、効率よく転職活動を進められるでしょう。
また、円満な退職に向けて有益なアドバイスがもらえるのも、転職エージェントの魅力です。
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焦らず、じっくり選ぶことが大切です。
2.退職後を見据えて準備をする
退職後の生活をスムーズに送るために、以下をチェックしましょう。
- 転職後に安定するまでの生活費と税金の準備
- 社会保険が外れて空白期間ができるなら国民健康保険への加入準備
- 厚生年金が外れて空白期間ができるなら国民年金への切り替え準備
- 退職金の有無の確認
- 未払いの残業代を請求するなら証拠集め
準備することは多岐に渡りますが、ここでしっかり準備しておけば後のステップが楽になります。
特に残業代を請求する場合、在籍中のほうが証拠集めしやすいため、可能な範囲で進めておくと安心です。
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退職後の生活をスムーズにスタートさせるためにも、今のうちから少しずつ準備を進めておくと安心です。
3.退職日を決める
退職にはさまざまな手続きが必要です。まずは手続きにかかる日数から逆算して先に退職日を決めておくのがおすすめです。
ゴールを決めておくことで、「この日まで頑張ろう」と気持ちの整理でき行動しやすくなります。なんとなく働き続けてしまう、という状態も避けやすくなるでしょう。
退職日の決定で気をつけるポイントは、以下のとおりです。
- 退職の意思を伝えるのは1~3ヶ月前であることを考慮し逆算する
- 退職届は1ヶ月前までの提出であることを考慮し逆算する
- 業務の引継ぎにかかる日数も計算に入れて逆算する
なお、これらはあくまで一般論であり、会社によって異なる場合もあります。会社の就業規則をよく確認した上で、規則に従った適切な対応を心がけてください。
もしも悩んだり困ったりしたときは、退職日について弁護士や転職エージェントに相談してみましょう。
4.退職届の作成
退職する際には、トラブルを避けるためにも退職届を用意しておくことをおすすめします。
法律上、退職届の提出は必須ではありませんが、口頭での申し出だけでは「言った・言わない」の行き違いが起きやすく、思わぬトラブルにつながることもあるためです。
退職届は、冒頭に「退職届」と記載し、「退職する意思」と「希望退職日」を簡潔にまとめるのがスタンダードです。
【例文】
退職届
私儀
このたび一身上の都合により、〇〇〇〇年〇月〇日をもって退職いたします。
(提出日)
(所属部署・名前)
(宛名)
本文に入る前の「私儀(わたくしぎ)」は「私事で恐縮ですが」という意味の謙譲語です。書かなくても退職届の効力はなくなりませんが、社会人のマナーとして記載するのがベストです。
なお、退職届の作成は、弁護士に依頼できます。自身での作成が不安な場合は弁護士への依頼も1つの手段として覚えておきましょう。
5.未払い残業代の請求書の作成(請求したい場合)
未払いの残業代を会社に請求する場合は、「残業代支払請求書」を作成しておくと安心です。
口頭やメールだけでは記録に残りにくく、請求の意図が十分に伝わらない可能性があります。書面としてしっかり残すことで、後々のトラブルを防ぎやすくなります。
▼ 残業代支払請求書に記載する主な内容
- 表題
- 会社と自分の関係性
- 残業代の未払いが発生した期間
- 未払い残業代の金額
- 残業代の支払い方法
- 残業代未払いが続くときの対応
- 請求日、請求先、請求元の情報
請求書の表題は「残業代支払請求書」とします。会社と自分の関係性には「〇年〇月〇日まで貴社に従業員として勤務しておりました」のように、雇用開始日や退職日を書きましょう。
また、残業代未払いが続くときの対応として、請求しても残業代を支払ってもらえなかった場合に予定している処置や法的措置も記しておきます。
もし、自分での作成が難しい場合や不安がある場合は、弁護士や労働組合に相談するのもひとつの手です。書式の確認や文面の調整を手伝ってもらえることもあります。
6.退職の意思表示、退職届提出、未払い残業代請求書の提出
退職を決めたら、退職日から逆算して、会社に意思を伝え、必要な書類を用意していきましょう。
退職の意思は、直属の上司や人事部に口頭で伝える形で問題ありません。そのうえで、退職届と未払い残業代の請求書は、手渡し、郵送、メールなどの方法で提出しましょう。
郵送の場合は、普通郵便だと配達状況の確認が難しいため、内容証明郵便や簡易書留など、記録が残る方法を選ぶのがおすすめです。希望すれば、弁護士に提出を委任し、内容証明で送付してもらうことも可能です。
また、提出方法にかかわらず、書類は提出前にコピーを取って手元に保管しておくことが大切です。何かあったときの備えになります。
退職の意思表示と各種書類の提出を行ったら、会社からの返答を待ちましょう。
7.引継ぎと退職あいさつ
退職の意思を伝えたあとは、会社から引継ぎや退職に関する手続きの案内があります。案内内容を確認し、必要な対応を進めていきましょう。
以下は、退職までに行う主な対応の一例です。
- 業務の引継ぎ
- 保険証や社員証、社章、名刺の返還
- 貸与物や経費で購入した物の返還
- 雇用保険被保険者証、年金手帳、源泉徴収票の受け取り
- 有給休暇の消化
- 退職のあいさつ回りなど
また、必要に応じて離職票や厚生年金基金加入員証なども受け取ることがあります。
この期間は、会社との関係を円満に終えるための大切な時間です。引継ぎやあいさつを丁寧に行うことで、スムーズな退職につながります。
【番外編】もし会社に退職を引き止められたら
退職の意思を伝えて書類を提出しても、会社から引き止めにあうことは珍しくありません。
ですが、法的には会社に退職を強制的に引き止める権利はなく、労働者には退職の自由が認められています。引き止められても、落ち着いて意思を伝え続けることが大切です。
もし「辞めさせない」「損害賠償を請求する」といった脅しのような対応があった場合は、早めに弁護士や退職代行に相談することをおすすめします。
【弁護士を活用する利点】
・代理人として間に立って対応してくれる
・未払い残業代の請求と同時にフォローもしてもらえる
【退職代行を活用する利点】
・退職に関する交渉を代行してくれる
・未払い残業代の請求に関しては会社によるのでサービス内容の確認が必須
それぞれ利点や特徴が異なります。自分の希望にマッチするサービスを選んでください。
残業代の請求は会社を辞めた後でも可能

未払い残業代は、時効を過ぎていなければ会社を辞めた後でも請求できます。ただ、退職後の未払い残業代請求は、適切な手順で請求を進める必要があります。
具体的なステップは、以下の5つです。
- 証拠をもとに残業時間・残業代を計算する
- 情報をまとめて内容証明郵便を会社へ送る
- 会社と話し合いをする
- 会社と決裂したら労働基準監督署に相談する
- 会社がどうしても認めないなら労働審判や裁判
ステップ5の労働審判や裁判をする場合、専門知識を持った弁護士のサポートが不可欠です。早い段階から無料相談を利用し、自分に合う弁護士を見つけておいてもいいかもしれません。
辞めた後に残業代を請求するとリスクがある

未払いの残業代は会社を辞めた後からでも請求できるものの、やはり退職後の請求にはリスクがあります。
在職中に比べると退職後は証拠の収集が難しくなる場合が多く、解決までに時間がかかりやすいです。会社に資料の開示請求をすることも可能ですが、なかなか対応してくれなかったり、証拠の一部しか提示してもらえなかったりと確実ではありません。
また、悪質な会社だと、退職しているのを好都合と捉えて、情報の改ざんや隠ぺいをする可能性もあります。
このように、退職後の残業代請求には多くのリスクがあるため、可能なら在職中から証拠を意識的に収集しておく方法がおすすめです。有利な状況で残業代の請求ができるよう、地道に準備を進めましょう。
残業代未払いの会社から転職するならナイト系もおすすめ

残業代が出ない会社は早めに辞めるべきですが、収入アップが狙える条件の良い会社に転職するためには、知識やスキル、資格を身につける必要があり、習得までに時間がかかります。
「早めの転職」と「収入アップ」を両立させたいなら、ナイト系への転職も視野に入れてみてください。
ナイト系は「高校生を除く18歳以上」であれば学歴・経験不問で応募でき、必要資格の条件がある場合でも運転免許程度です。法律で営業時間が決まっている業種もあり、残業が発生しにくいので、プライベートの時間も大切にできるでしょう。
また、努力次第で昇給・昇進しやすいという業界の特徴により、実績を積めば年収1,000万円も目指せます。
「早く転職したいが、収入もアップさせたい!」という方は、ナイト系の求人もチェックしましょう。
残業代が出ない会社はすぐに辞めてより良い転職先へ

もし残業代が出ない状況が続いているなら、一度立ち止まって転職を検討することをおすすめします。
残業代の未払いは、一部の例外を除けば違法性があり、「仕事を最後までやり切らないと…」と責任を感じて頑張りすぎる必要はないのです。
次のような状況が当てはまる場合は、会社を辞めるタイミングの目安と言えます。
- より良い転職先が見つかったとき
- 転職する理由を言語化できたとき
- 残業代が出ない現状から改善が見込めないとき
- 心と体が「限界のサイン」を出しているとき
本記事でご紹介した7つのステップを参考に、あなたのペースで次の一歩を考えてみてください。
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退職後に心身をゆっくり休めるのも、正当な評価を受けられる職場に転職するのも、どちらも大切な選択肢です。あなたにとってベストな道を選んでくださいね。